2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K08083
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水島 秀成 北海道大学, 理学研究院, 助教 (20515382)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲノム編集家禽 / CRISPR/Casシステム / ウズラ / 顕微授精法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム編集家禽の作出には、始原生殖細胞(primordial germ cell:PGC)の培養を介したCRISPR/Casシステムの適用とその後の生殖系列キメラ個体の作出が一般的に用いられている。しかしながら、本方法は性染色体が雄型(ZZ)のPGCのみの培養が可能であることから、雌型(ZW)PGCのW性染色体に変異を加えられないことや、ホモノックアウト個体の作出には次世代を繰り返し取る必要があるため、時間的なロスが課題視されていた。一方、本研究代表者が確立してきた顕微授精・体外培養法は、理論上1細胞期受精卵のゲノムに編集を施すことが可能であり、すなわち1世代でのゲノム編集家禽の作出が見込まれる。本年度では、鳥類顕微授精法を基盤にCRISPR/Cas9システムを用いて、ゲノム編集ウズラの作出が可能であるか検討した。 Cas9ヌクレーゼ発現カセットとgRNAクローニングカセットからなるオールインワン発現ベクターpX330とインキュベートした凍結融解精子の顕微授精法を行ったが、得られた初期胚のゲノムでは、ターゲット配列に変異が見られないか、あるいは卵割の後期での切断のため、モザイク編集になっていることが分かった。そこでT7プロモーター下でCas9 mRNAとgRNAが発現するベクターを作成し、それらのRNAを顕微授精後2時間に投与した。24時間の卵培養を行った結果、得られた胚の9割以上において、1細胞期でのゲノム編集効果が確認され、さらにはそのほとんどがホモでゲノム編集がかかっていた。また重要にも、本技術は、常染色体、Z性染色体およびW性染色体ゲノムの編集に対応可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、1細胞期ウズラ受精卵のゲノムに効率良く編集を加えることができる技術が確立されたため。また本技術によって、従来のPGCの培養では不可能であったW性染色体のゲノム編集も可能になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
顕微授精法とCRISPR/Cas9システムを利用して作出したゲノム編集ウズラ胚の孵化育成実験を中心に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
データベースによるニホンウズラと北海道大学で飼育しているニホンウズラのゲノム情報を比較した結果、遺伝子配列に相違点が多く見られた。従ってゲノム情報の整理に時間を要し、ゲノム配列に依存するCRISPR/Cas9システムに関連した一連の実験の着手に幾分か遅れが生じたため。 ウズラで確立した顕微授精法とCRISPR/Cas9システムを基盤としたゲノム編集技術の汎用性を他鳥種で調べる実験系に使用する計画である。
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