2016 Fiscal Year Research-status Report
ノトバイオート技術を用いた腸内菌による胆汁酸代謝と宿主病態に及ぼす影響の研究
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16K08091
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
成島 聖子 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 副チームリーダー (80578336)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / 胆汁酸代謝 / ノトバイオート |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質の吸収に必須である胆汁酸が腸内細菌によって変換されることは既によく知られているが、実際の生体内で胆汁酸がどのような菌によってどのような変換を受けるのか、また、腸内における胆汁酸組成の変化が宿主にどのような影響を与えるのか、については未だ不明な点が多い。本研究では、偏性嫌気性菌の培養技術とノトバイオート技術を駆使して、特定の胆汁酸変換能を有する菌あるいは菌群を特定し、菌による胆汁酸変換と宿主への影響について詳細な解析をおこなう。更にdysbiosisによって引き起こされるClostridium difficile偽膜性腸炎など、腸内細菌叢が関与した様々な疾患モデルを用い、胆汁酸の観点から病態を制御する菌の特定を試みる。 平成25年度はまず、健常人ヒト便の胆汁酸組成について解析した結果、胆汁酸の組成、特に腸内細菌によって生成される二次胆汁酸の組成がヒトによって大きく異なることが明らかとなった。次に特徴的な胆汁組成を示すヒト糞便サンプルを無菌マウスに投与し、投与されたex-Germfreeマウスの腸内胆汁酸組成ならびに腸内菌叢を解析した。元のヒト便胆汁酸組成の特徴はある程度投与したex-GFマウスの腸内容物中胆汁酸組成に反映されていた。そこでこれらのマウスより、高度に嫌気的な条件下でしか生育できない菌(Extremely Oxygen Sensitive; EOS細菌)を含む菌を分離した。分離された菌株についてin vitroにおいて様々な胆汁酸を基質として、胆汁酸の変換能の評価を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで10名の健常人ヒト便中胆汁酸について解析した結果、胆汁酸の組成は個人差が非常に大きいことが明らかとなった。そこで特徴的な腸内胆汁酸組成を持つヒトの糞便を無菌マウスに定着させ、マウスの腸内菌叢および胆汁酸組成を解析した。胆汁酸組成の特徴はある程度投与したマウスの腸内容物中の胆汁酸組成に反映された。これらのマウスよりEOS細菌を含む菌を分離し、菌あるいは菌の組み合わせにおける胆汁酸変換能をin vitroで評価したところ、特徴的な二次胆汁酸を生成する菌を一部選出することが出来たため、課題は概ね順調に進展していると考えている。しかしながら菌の分離と変換能の評価にはさらなる時間を必要とする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度より開始した、胆汁酸変換菌の分離培養作業を更に進め、これをもとに選出した胆汁酸変換能を有する腸内細菌(群)を無菌マウスに投与することで、異なる腸内胆汁酸組成を示すノトバイオートマウスの作出を試みる。更に大腸炎や大腸癌のモデルマウスを無菌化し、これらに上記菌群を定着させることで病態に与える影響を解析し、胆汁酸代謝を介した腸内細菌の関与を検討する。また、Dysbiosisを誘発したマウスにClostridium difficileを感染させて偽膜性腸炎を誘発させ、胆汁酸変換能の異なる菌群の投与で腸炎にどのような差がみられるか比較検討を行う。可能であれば、これまでの胆汁酸解析では検出されてこなかった新規の化合物についても、ex-GFマウスの便メタボローム解析等を行うことによりその検出を試みる。 これまでの研究から、菌の種類が豊富なEx-GFマウスでは腸内に特定の二次胆汁酸が認められていても、特定の菌を選抜し、菌の種類を極端に減少させることで、生体内での胆汁酸変換がみられなくなる可能性が考えられる。そのような場合には段階的に元のex-GFマウスの腸内容物を希釈したり、或いは抗生剤やクロロホルム処理などの処理を加えた後に新しい無菌マウスに投与することを繰り返し、胆汁酸変換能を維持したまま菌の集団の絞り込みを行うことが必要になる。
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Causes of Carryover |
in vitroでの菌株の胆汁酸変換能の試験および菌の選出にやや時間がかかるため、次のステップであるノトバイオートマウス作成に使用する予定であった無菌マウスの数が、当初より少ない数となり、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
in vitroで胆汁酸を変換出来る菌の分離を精力的に進め、それらの組み合わせを順次無菌マウスにとうよしてノトバイオートマウスを作出することで、生体内での菌の胆汁酸変換能力を検証する。その後に様々な病態モデルを無菌化し、胆汁酸変換菌群を投与して病態に与える影響を検討する。
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