2017 Fiscal Year Research-status Report
苗と害虫の低酸素濃度耐性の差を利用した無農薬害虫防除手法の確立
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16K08108
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
大山 克己 大阪府立大学, 研究推進機構, 特認准教授 (20456081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 丈詞 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任准教授 (60708311)
矢守 航 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90638363)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸素濃度 / ナミハダニ / 防除 / 生存率 / インゲン / キュウリ / トマト |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度では、ナミハダニの生存限界である処理酸素濃度(処理時間:1日)とその処理濃度が3種類の植物(インゲン、キュウリ、トマト)におよぼす影響とを調査した。ナミハダニでは、処理酸素濃度が0および0.5%のときの生存率は、無処理である酸素濃度が21%(大気レベル)のときのそれと比べて有意に低下した。一方、処理酸素濃度が1および2%の場合には、無処理の場合と比べて差はみられなかった。続いて、インゲン、キュウリおよびトマトの処理酸素濃度0.5%のときの生体重および乾物重を調査した。インゲンでは、処理の有無で生体重および乾物重に差はみられなかったものの、キュウリおよびトマトでは、処理区の生体重および乾物重は、無処理のそれと比べて低下した。これらの結果より、酸素濃度を低下させる処理によるナミハダニの防除は、処理への耐性がある植物(たとえば、インゲン)では実現可能性があることが示唆された。 他方、植物の生理反応にもとづいたナミハダニ検出法を開発することを目的として、光合成,蒸散および光合成能力の指標となるクロロフィル蛍光にナミハダニの食害がおよぼす影響を調査した。その結果、ナミハダニの食害によって,光合成速度、蒸散速度、光化学系II の電子伝達速度、気孔コンダクタンス、量子収率、測定チャンバ内外の二酸化炭素濃度差、ルビスコ量およびクロロフィル量が有意に低下した。一方、葉温、非光化学的消光および光飽和中の最大クロロフィル蛍光強度は有意に上昇した。これらのパラメータを解析することにより、ナミハダニの食害程度を定量的に表せる可能性があることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度では、昨年度に引き続いて、害虫(ナミハダニ)の生存限界である処理酸素濃度を調査した。さらに、3種類の植物(インゲン、キュウリ、トマト)を用いて、処理酸素濃度への耐性を調査した。これらの結果は、現在、原著論文として取りまとめ中であり、また、今年度夏ごろに国際誌への投稿が予定されている。 他方、本研究より派生して、ナミハダニが食害した被害葉のクロロフィル蛍光を測定し、被害の程度と種々のパラメータ(光合成速度、蒸散速度、電子伝達速度など)との関係を得ている。この研究を推進することで、ナミハダニの食害の早期検出が可能となる可能性があり、ひいては、低酸素処理による防除効果も高められる可能性が見出されている。なお、本研究に関しても早期に取りまとめ、今年度秋ごろに国際誌への投稿にこぎつけたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに主要な部分の研究は実施した。それゆえ、最終年度である今年度は、その取りまとめと公表(学会発表や国際誌への投稿)に力を注ぎたい。細かな部分に関しては、追加の試験を実施し、学術的にも、また、実用的にも、より明確な結論を導き出せるように努めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
生じた理由:研究費の有効利用のために、本年度も経費の圧縮に努めた。また、クロロフィル蛍光測定装置のメンテナンスを昨年度より、今年度に変更することにした。それにともない、研究費の一部を繰り越しし、適切な時期のメンテナンスを実施することとした。
使用計画:クロロフィル蛍光測定装置のメンテナンス
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