2017 Fiscal Year Research-status Report
天然有機化合物の供給と創薬を指向した生物活性分子の合成研究
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16K08180
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
杉田 和幸 星薬科大学, 薬学部, 教授 (60542090)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 天然物 / 全合成 / cochlearol B / ganocin A / alstoscholarisine A |
Outline of Annual Research Achievements |
Cochlearol Bの骨格合成は、A環ベンゼン環とC環シクロヘキサン環をカップリング後、酸化的にB環ジヒドロピラン環を閉環した後、2+2反応により4員環であるE環とD環シクロペンタン環を構築するものである。これまで、A環とC環のカップリングは良好に反応が進行した。次いで、小スケールでのB環閉環反応前駆体への変換には成功したものの低収率であったが、今回、反応条件の検討により収率を改善することができた。現在、スケールアップ反応を実施している。 Ganocin Aの合成については、A環ベンゼン環に対しD環シクロペンタン環をエーテル結合で連結し、B、C環の一部となるユニットを導入後、分子内Diels-Alder反応によりB、C環を一挙に構築する計画を提案した。昨年は、D環ユニットとA環間のエーテル結合形成反応がうまく進行せず、より立体障害の小さい鎖状構造での連結に成功したことを報告した。今回、導入したD環鎖状ユニットの環化反応によるD環の構築を検討したが、反応成績体が非常に不安定で、その後の化学変換に耐えないことが判明したため、本合成経路での合成研究は中断することとした。 Alstoscholarisine Aの合成は、インドール環2位へD環の構成ユニットを導入後、テトラヒドロピラン環を形成した後、C、E環を構築する計画であった。これまでのところ、インドール環2位へのD環構成ユニットの導入に成功している。しかしながら、2016年の13工程でのラセミ体の全合成に引き続き、2017年には10工程での不斉全合成が報告されたことから、本天然物の合成経路の開発は、これ以上実施しないこととした。これに代えて、14員環構造をもつBoscartin Fの全合成を実施することとした。研究の結果、保護基を用いることなく、最長直線工程11工程で全合成を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Cochlearol Bの合成の第1の問題点は、C環に対するB、D、E環を構成するユニットの、短行程での導入が低収率であることであった。ビニル基上のヨウ素の、ハロゲン-リチウム交換反応では、ベンジル位のリチオ化が優先したため、パラジウムを用いてアセチル基を導入した。次のアセチル基のプレニル化が現在までのところ低収率であり、反応条件の検討を行っている。次のメチル基の導入、ベンジル基の脱保護は、予備検討レベルながら中程度の収率で反応が進行することを確認した。 Ganocin Aの合成研究は、A環ベンゼン環とD環シクロペンタン環の、エーテル結合による連結反応が進行しないため、鎖状のD環ユニットを導入後、D環を閉環する経路へ変更し、A環-D環カップリング体を合成することができた。しかしながら、A環-D環カップリング体は、その後の各種変換反応条件に対する安定性が低いことが判明し、当初のバックアッププランに従い、cochlearol Bの合成中間体を利用する合成経路を採用することとした。 Alstoscholarisine Aについては、インドール環2位へのD環構築ユニットの導入に成功したものの、2016年に13工程でのラセミ全合成および2017年に11工程での不斉全合成が報告されたことから、本化合物に代えて、14員環炭素骨格をもつ大環状天然物であるBoscartin Fの全合成を実施することした。x-box結合タンパク質に対する作用が報告されている。検討した結果、短行程での不斉全合成を達成することができた。シャープレス不斉エポキシ化、立体選択的なヨードエーテル化反応によるテトラヒドロフラン環の構築、立体選択的なアルドール反応による水酸基立体制御とカップリング、閉環メタセシスによる14員環骨格の構築、立体選択的なエポキシ化反応等により不斉全合成を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
Cochlearol Bの合成については、低収率である工程があるものの、B環閉環反応前駆体までの合成経路を開発することができた。今後は、収率の低いプレニル基の導入反応の条件を検討しつつ、スケールアップを行い、鍵反応であるB環ジヒドロピラン環の酸化的環化を行う。本反応では、各種酸化剤、反応条件、ケトンの化学変換および保護基等の検討を実施する予定である。その後2+2反応によるD、E環の形成を行い、ケトンα位へのホルミル基の導入、脱離反応等により、cochlearol Bの全合成を完了する。 Ganocin Aの合成は、申請時に提出したバックアッププランに従い、cochlearol Bの合成経路が有望であることから、cochlearol Bの合成中間体を用いて合成を行う経路へ変更することとした。合成中間体として、cochlearol BのD、E環を形成する2+2反応の前駆体を用いて、酸化、ラジカル環化、酸化的エーテル環形成反応等により5環性骨格を合成する経路を計画している。今後は、まずcochlearol Bとの共通合成中間体の合成経路開発に注力した後、全合成研究に取り組む予定である。 Alstoscholarisine Aの合成研究に代えて、boscartin F関連化合物についての全合成研究を実施する。昨年度開発に成功した、保護基を用いない短行程かつ収束的合成経路を利用し、boscartin Fの100mgスケールでの合成と、boscartin Fと同時に単離構造決定された類縁体であるboscartin AおよびHの全合成研究を行う。さらに、開発した合成経路を利用して、生物活性評価を目的とし、類縁体についても最終体として100mg程度得られるスケールでの合成を実施する。
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[Journal Article] Usefulness for the combination of G-protein- and β-arrestin-biased ligands of μ-opioid receptors: Prevention of antinociceptive tolerance2017
Author(s)
Tomohisa Mori, Naoko Kuzumaki, Takamichi Arima, Michiko Narita, Ryunosuke Tateishi, Takashige Kondo, Yusuke Hamada, Hirotsugu Kuwata, Miho Kawata, Mitsuaki Yamazaki, Kazuyuki Sugita, Akinobu Matsuzawa, Kanae Baba, Takayasu Yamauchi, Kimio Higashiyama, Miki Nonaka, Kanako Miyano, Yasuhito Uezono, Minoru Narita
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Journal Title
Molecular Pain
Volume: 13
Pages: Novemver 6
DOI
Peer Reviewed
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