2017 Fiscal Year Research-status Report
サイトカインを介した精子-卵丘細胞間相互作用の解析
Project/Area Number |
16K08438
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
谷井 一郎 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (40207171)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒舘 忠 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (30303233)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 卵丘細胞 / 精子 / 受精 / 精子誘因性 / サイトカイン / ニューロキニンA / CCL2 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の卵丘細胞は受精を促進していると考えられるがその機構は未解明である。卵胞液および精子先体には下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)が存在し,卵丘細胞にはPACAPの受容体が発現している。卵丘細胞にPACAPを作用させると,受精を促進する因子を分泌される。本研究では,受精促進因子を同定し,PACAPによる受精促進機構を解析することが目的である。これまでに得られた知見は以下の通りである。 1.サイトカイン受容体の精子における発現と局在:マイクロアレイ解析によって卵丘細胞にPACAPを作用させたときに,6種のサイトカイン(Neurokinin A,CCL2,CCL3,CXCL1,Heparin-binding EGF-growth factor,CSF3)の遺伝子発現上昇が起こった。間接蛍光抗体法により,これらのサイトカインに対する受容体はすべて精子鞭毛または頭部に局在することを確認した。精子細胞膜分画中にNeurokinin Aの特異的受容体NK2RおよびCCL2の特異的受容体CCR2を同定した。 2.サイトカインの精子機能及び受精率に対する影響:Neurokinin Aは精子の先体反応を促進し,精子の透明帯通過を上昇させた。NK2RのアンタゴニストはNeurokinin Aによる効果を抑制し,PACAPによる受精促進効果も抑制した。Neurokinin Aによる受精促進効果は,卵丘細胞を除去した卵を用いた場合に顕著であった。以上の結果は,PACAPを介した受精促進には卵丘細胞から分泌されるNeurokinin Aが関与することを示す。 3.サイトカインの精子誘因性の解析:排卵後の卵管膨大部液中にCCL2を120 -150 pg/mLの濃度で検出した。ボイデンチャンバーアッセイにより,CCL2が精子を誘引することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニューロキニンAに対する感度の高いELISAキットがないために卵管膨大部液中のニューロキニンAの定量が難しく,多くの時間を費やしたが,定量を断念することになった。マウス精子の走化性実験は成功した例が少なく,ケモカインの精子誘因性を調べるために,キャピラリーアッセイ,ビデオカメラ撮影による解析を試みたが,データにばらつきがあるために採用しなかった。ボイデンチャンバーアッセイが最も信頼性のある方法であることがわかった。現在はさらに測定の精度を高めるために,海外から専用のチャンバーを取り寄せたところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
ボイデンチャンバーアッセイの測定精度を高めるために専用の特別なチャンバーを海外から取り寄せた。卵丘細胞をチャンバー内に入れて、ケモカイン受容体のアンタゴニストとアゴニストの精子走化性に対する影響を調べる。 このボイデンチャンバーアッセイを指標にして,卵丘細胞が分泌するケモカインの発現をsiRNAによってノックダウンするための条件決めを行う。今年度の計画はここまでとし,さらに時間的余裕があれば,当初の目的であるsiRNAによる精子誘因性および受精率に対する影響を調べる。
|
Causes of Carryover |
次年度に合わせて物品費として使用する。
|
Research Products
(1 results)