2017 Fiscal Year Research-status Report
サテライトグリアの亜種をマルチモダル組織化学観察によって斬る!
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16K08480
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
山田 久夫 関西医科大学, 医学部, 教授 (00142373)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サテライト細胞 / 相関観察(マルチモダル観察) / 3次元解析 / 走査型電子顕微鏡 / 共焦点顕微鏡 / 組織化学 / 質量顕微鏡 / 反射電子 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)電顕レベルの3次元観察は、走査電顕の反射電子を用い、電顕にしては大きな画像から3次元再構築をおこなっている。前年度にはarray tomography用のリボン状連続切片採取装置を作製し、これを用いて光顕レベルの組織化学法と連関する観察、即ち「光‐電子顕微鏡相関観察(CLEM)法」をいくつか試している。厚切り切片で光顕レベルの組織化学をおこなったのち再包埋し3次元電顕観察をおこなう方法、水溶性樹脂に包埋した電顕切片に金粒子を組織化学的標識し電顕観察する方法、同じく水溶性樹脂包埋しシリコンウエハーに張り付けた切片に蛍光標識の組織化学をおこなって落射型蛍光顕微鏡と走査電顕で観察するという、3種のCLEM法を試した。 2)脊髄後根神経節のサテライトグリアについて、ニューロン細胞体を覆うとされているサテライト細胞の中に、軸索を覆うもの、有髄シュワン細胞に分化可能なもの、神経突起と離れて存在するもの、といった3つの亜種を区別することができた。 3)当初の計画では、クプリゾン投与モデルや過剰興奮モデルを用いることを考えていたが、異なる発想から中大脳動脈を電気焼灼しラットの終脳皮質に安定して永久梗塞を生じさせるモデルを開発し質量顕微鏡観察したところ、梗塞部位に胆汁酸が見出された。脳内に胆汁酸が存在するらしいことや脳内でコレステロール代謝がおこなわれる事は既知であるが、にわかには信じられない所見である。そこで隣接ミラー切片に合成酵素の組織化学をおこなってマルチモダルに観察した結果、ニューロンでの合成が証明され、サテライト細胞の関与が示唆された。ただし、3次元電顕観察を試みたが、質量顕微鏡・光顕組織化学・走査電顕で互いに相いれない標本作製条件であり、これをクリアーできなかった。この改良が平成30年度の課題と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属大学の共同利用施設に設置の共焦点顕微鏡が故障しその修理期間が長引いたことからこれを用いる実験はやや遅れている。 走査電顕反射電子を用いた3次元観察と、光顕電顕相関観察については、その手技や機器開発もおこない、論文発表と学会発表をおこなうことができた。さらに、その手技を用いて、グリア細胞の亜種分類とそれぞれの細胞の3次元的微細構造を明らかにすることができた。すなわち脊髄後根神経節を対象とした計画は予想以上に進んでいる。 脳を対象とした質量顕微鏡による解析の研究計画はやや遅れている。その理由のひとつとして安定したモデル動物の作出が困難であったことが大きい。試行錯誤の結果、終脳皮質梗塞モデルを用い、梗塞巣に胆汁酸が集積する所見を質量顕微鏡でとらえることができた。手技的困難を克服し、合成酵素の存在・周辺にあるグリア細胞の形態変化を相関観察したい。
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Strategy for Future Research Activity |
1)質量顕微鏡による観察、共焦点顕微鏡による組織化学観察と3次元再構築、走査電顕反射電子像による観察3次元再構築の、3つを相関させる手技を開発したい。それぞれに適した組織標本作製手技は全く異なるので折り合いできる条件を検討したい。 2)得られた手技を用い、終脳皮質梗塞巣におけるサテライト細胞の機能的亜種を検索する。もし手技の問題点克服が無理な場合でも、3者の観察法を相関観察ではなく比較観察することで解決したい。 3)脊髄後根神経節でのサテライト細胞の亜種分類については、論文執筆をおこなう。
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Causes of Carryover |
所属大学共同利用研究施設設置の共焦点顕微鏡の故障修理に相当の時間がかかり一時期実験(観察)がかなわなかったことと、ナノ金属粒子標識の光顕組織化学を観察する暗視野装置の導入がメーカーの都合で遅れたことに合わせて、標本作製のための消耗品費の執行を遅らせていたため。しかしそれらを回避・回復させる措置によって本年度での実験進行をおこない、消耗品費を執行する。目標成果の取得に遅延は起こらない。
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Research Products
(10 results)