2017 Fiscal Year Research-status Report
悪性腫瘍における腫瘍幹細胞の可塑性を制御する因子の解析
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16K08649
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 純一郎 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (20379176)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腫瘍幹細胞 / 子宮内膜癌 / 病理学 / 癌 / 可塑性 / アルデヒド脱水素酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍は単一クローンに由来するが非常に多様性のある集団であり,その中に腫瘍幹細胞とよばれる化学療法や放射線療法に抵抗性で再発や転移の原因となる一群の小集団が存在するとされている.この腫瘍幹細胞の制御ががん治療の重要な鍵となっている.これまで腫瘍幹細胞は自分自身を複製すると同時に非腫瘍幹細胞を産生するが,非腫瘍幹細胞からは腫瘍幹細胞は生み出されないとされてきた.しかし近年,非腫瘍幹細胞からも腫瘍幹細胞が形成されるという,いわゆる「可塑性」がみられることがわかり,この可塑性を制御することが悪性腫瘍の治療において重要な要因になると考えられる.そこで,我々は様々な腫瘍における腫瘍幹細胞の可塑性を検討し,それを制御する因子を同定することを計画した.本年度は,子宮内膜癌の腫瘍細胞株を用いて,腫瘍幹細胞のマーカーとされているアルデヒド脱水素酵素(ALDH)をターゲットとして非腫瘍幹細胞から腫瘍幹細胞への変換における腫瘍幹細胞自身の関与を検討した.その結果,腫瘍幹細胞は自己複製能が高い時には可塑性を惹起する能力が高いが,自己複製能が低く分化傾向が高い時には逆に可塑性を抑制する傾向があり,可塑性を惹起する能力は腫瘍幹細胞と非腫瘍幹細胞の直接接触を介することが示され,その能力は腫瘍幹細胞を維持する性質が強いものほど高い傾向がみられた.そこで可塑性を惹起しやすい状態とそうでない状態の細胞をセルソーターを用いて採取し,そこからRNAを抽出してRNA-seq解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮内膜癌の腫瘍細胞株を用いて,非腫瘍幹細胞から腫瘍幹細胞への変換における腫瘍幹細胞自身の関与を検討した結果,腫瘍幹細胞は自己複製能が高い時には可塑性を惹起する能力が高く,その能力は細胞同士の直接的な接触によることが推察された.現在,可塑性を惹起しやすい状態とそうでない状態の細胞を用いてRNA-seq解析を行い,可塑性制御の候補となる因子への検討に入っており,概ね計画通りに進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は腫瘍幹細胞の可塑性を制御する因子の同定にむけて,RNA-seq解析で得られた候補となる遺伝子から可塑性を惹起する状態と抑制する状態での違いを分子レベルで検討していく.
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Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため,当初の見込み額と執行額は異なった.研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め当初予定通りに計画を進めていく.具体的には,消耗品,情報収集あるいは成果発表のための国内旅費,複写費,研究成果発表費用(投稿料)に用いる予定である.
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Research Products
(21 results)