2017 Fiscal Year Research-status Report
不安定プラークに関わる内膜平滑筋細胞の未熟性の解明
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16K08675
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
倉田 厚 東京医科大学, 医学部, 准教授 (10302689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 雅彦 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (80251304)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / 平滑筋 / 免疫組織化学 / h-Caldesmon / 頚動脈内膜剥離術 / 奇形腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先進国の主要な死因である動脈硬化による動脈閉塞疾患について、機序の解明に役立つことを目的としている。動脈閉塞の原因にプラークの不安定化が関わることが支持されているが、なぜプラークが不安定化するかについて現在、分かっていない。我々はプラーク内の内膜平滑筋に着目し、2015年に、心筋梗塞の原因となる冠動脈の剖検例を用いて、不安定プラークは安定プラークに比して内膜平滑筋が未熟化していると見出した。 本研究においては、①冠動脈での知見が頚動脈など他の動脈でも同様か?、②我々が提唱したh-Caldesmonの陽性率を血管平滑筋の成熟化の指標としている手段は妥当か?、について探索してきた。 ①では、頚動脈剥離術で外科的に切除されたプラークでも、h-Caldesmonの陽性率の低下で示される未熟な内膜平滑筋が多い症例では、そうでない症例と比べて、切除後5年以内に心筋梗塞等の全身の動脈硬化性疾患の発症率が高くなることを、後ろ向きコホート研究により示した。②では、ヒト卵巣奇形腫組織を用いて、奇形腫のGradeが進行し未熟になるに従って、腫瘍内の血管におけるh-Caldesmon陽性率が低下することを明らかにした。したがって、血管におけるh-Caldesmon陽性率は奇形腫の成熟度と平行しており、血管平滑筋の成熟化の指標となることが支持された。 さらに、突然死の剖検例において、死因が心筋梗塞なのかの判定に、冠動脈内膜平滑筋のh-Caldesmon陽性率を検索することが一助となる、高安大動脈炎の時相を推定する際にもh-Caldesmon陽性率が役立つこと、孤立性肺毛細血管腫の診断に、平滑筋の免疫組織化学的検索が有用であることを明らかにした。 上記の研究成果の一部は、第106回日本病理学会総会(平成29年4月東京)などで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より、動脈硬化におけるプラーク不安定化に、プラーク内平滑筋(内膜平滑筋)の未熟性が関わると、心臓で提唱してきた。すなわち、剖検例の冠動脈において、心筋梗塞症例は、そうでない症例に比して内膜平滑筋が未熟であった。この平滑筋の未熟性は、α-SMA陽性で示される全ての平滑筋を分母として、h-Caldesmon陽性で示される成熟した平滑筋を分子とした比率の低下で判定してきた。が、この判定手法の妥当性、そして剖検例の冠動脈のみでの計測という研究対象の限定性が、本研究(プラーク不安定性を平滑筋で評価する手法)の弱点と考えた。 今回、頚動脈での研究にて、h-Caldesmon/α-SMA比の低下で示される内膜平滑筋の成熟度の低下が、手術時点の脳梗塞の有無とは相関しなかったものの、その後5年以内の全身動脈硬化性疾患の有無と相関したこと、また、この成熟度は同一症例においては、プラーク自体を覆う内膜平滑筋とプラークから離れた内膜平滑筋とで相違が無かったために、因果関係として内膜平滑筋の成熟度がプラーク安定性を規定すると考えられたことは、注目に値する。おそらくは、血管平滑筋の成熟度を低下させる因子(遺伝的体質ないしは食生活やストレスなどの後天的因子)がまずあり、それによりプラークが不安定化し、引き続いてプラーク増大に伴う動脈閉塞が発症すると示唆される。 そして、奇形腫の未熟度と、奇形腫内血管壁のh-Caldesmon/α-SMA比の低下で示される平滑筋の未熟度とが相関したことからは、血管平滑筋の成熟度をh-Caldesmon/α-SMA比で測定する手法が妥当であったと示唆される。 我々の知見はさらに、突然死の剖検例における心筋梗塞の有無の判定、高安大動脈の時相の判定、孤立性肺毛細血管腫の診断根拠など、血管平滑筋への着目が有用であることを見出してきている。
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Strategy for Future Research Activity |
頚動脈の研究で、平滑筋の未熟性がプラーク不安定性をもたらすと示唆され、奇形腫の研究で、h-Caldesmon/α-SMA比が血管平滑筋の成熟度の有用なマーカーとなることが示されたが、血管内膜平滑筋の未熟性がプラーク不安定化の原因となるかをより明確に実証するために、動物モデルでの研究を行っていく。 具体的には、動脈硬化モデル動物で実験的に動脈硬化を発生させ、屠殺後にその動脈を採取し、h-Caldesmonおよびα-SMAの免疫組織化学検討を行う。これまでのヒト冠動脈および頚動脈で示してきたような、h-Caldesmon/α-SMA比の低下が認められるかどうかを調査していく。また、これらh-Caldesmon/α-SMA比の低下は、アポE欠損マウスのような先天的な異常でより生じるのか、高脂肪食のような後天的な異常でより生じるのか、ないしはガラス玉覆い隠し行動のようなストレスで生じるのかを、実験条件を変えることで検討していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:当該年度に動物実験が計画されていたが、症例報告や高安大動脈炎の研究を優先したため、動物実験を次年度に繰り越して行うことになったため。 使用計画:次年度に動物実験を行う際の、動物購入費・維持費として、これを用いる計画である。
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