2017 Fiscal Year Research-status Report
去勢抵抗性前立腺癌に対するARBの治療効果およびその分子メカニズム解析
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16K08717
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
高橋 智 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (60254281)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 前立腺癌 / 動物モデル / 転移・浸潤抑制 / アンギオテンシン1型受容体阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンギオテンシン1型受容体阻害剤(ARB)であるカンデサルタン(CS)を1あるいは2mg/kg/day、およびアンギオテンシン2型受容体作動剤であるC21を2mg/kg/dayの濃度で15週間飲水投与し、浸潤性前立腺癌に対する発生抑制、治療効果について検討した。側葉における浸潤癌発生個数は対照群2.7個に対しC21、CS 1あるいは2mg/kg/day投与群でそれぞれ1.7個、1.6個、1.2個、側葉前立腺全腺房数で補正した浸潤癌発生率は対照群1.8%に対し、C21、CS1、2mg/kg/day投与群でそれぞれ1.4%、0.7%、0.6%であり、いずれも群間で有意な差はみられなかった。しかしながら対照群における浸潤癌発生数が低いこと、CS群で発生抑制傾向がみられたことから追加実験を行い、再検証を試みた。その結果、側葉における浸潤癌発生個数は対照群で4.2個に対しCS 2mg/kg/day投与群では1.5個であり、CS投与により有意に抑制された。また、全腺房数で補正後の浸潤癌発生率は対照群、CS2投与群でそれぞれ2.2%、0.7%であり、発生個数と同様に有意な減少が観察された。 PCai1-luc-#5-1を用いた前立腺癌転移病巣に対するARBの治療効果を検討する実験においては、PCai1を経静脈的に移植後16週時点における肺転移頻度は、対照群、CS群でそれぞれ14/30例(47%)、17/32例(53%)、骨転移頻度はそれぞれ2/30(7%)、5/32(16%)であり、有意差はみられなかった。一方、腫瘍の大きさの指標となる発光量(photons/sec)は肺転移巣では群間でほぼ同等の値を示したのに対し、骨転移巣では対照群、CS群でそれぞれ4.3E+08、1.5E+08であり、有意差はなかったものの減少傾向が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TRAPラットを用いた浸潤癌モデル実験は概ね順調に進んでいるが、PCai1前立腺癌細胞を用いた実験では転移頻度がbackground dataに比較して低く、細胞数の調整、観察期間の検討等に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
浸潤癌モデルを用いた実験ではカンデサルタン投与による抑制が明らかとなったことから、PCai1ラット前立腺癌細胞にカンデサルタンを処理することにより、転移・浸潤関連遺伝子発現に対する影響をマイクロアレイを用いて網羅的に解析する。また、PCai1を用いた転移実験については、経静脈内移植の手技が安定していない可能性があるため、背部移植による転移実験に切り替えて検討を行って行く。
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