2016 Fiscal Year Research-status Report
結核菌の新しいヒト免疫抑制機構の解明とその解除による新規制御法の開発
Project/Area Number |
16K08774
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
尾関 百合子 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00169301)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富山 智香子 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80359702)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 結核菌 / 結核菌抗原 / 制御性T細胞 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
結核ワクチンBCGは接種後間もない小児に対しては著名な効果を発揮するが接種後の年数が経過した成人に対する防御効果は低い。我々は以前に制御性T細胞への分化を促すと考えられる結核菌抗原群を見いだしていた。今回はこれらの抗原をベクターpet22bに組みこみ、ヒスチジンタグをつけて大腸菌に発現させた。大腸菌レアコドンが多数含まれている抗原については遺伝子を最適化した全合成遺伝子をpet22bベクターに組みこみ、BL21(DE3)株に形質転換した。また、mRNAの安定化が期待できるBL21Star(DE3)株, レアコドンが補填できるRosetta2(DE3)株に形質転換して発現量を比較した結果、Rosetta株での発現量が顕著に高かった。また、LPS除去によるロスを防ぐため、LPSフリー大腸菌(LPSの一部改変)にも形質転換し、発現することを確認した。発現蛋白質の精製はカラムクロマトグラフィーAKTA exproler 10sを用いてカラム精製を行い、1L培養液から500 μg以上の抗原が得られ、しかも精製蛋白質は立体構造を維持していることがCDスペクトル解析から明らかとなった。数種の結核菌抗原を、BCG接種歴のある健常人由来の末梢血単核球から分離したT細胞とマクロファージとともに培養し、サイトカイン産生を調べると、これらの中である種の抗原が制御性T細胞誘導の他に防御に関わるサイトカイン産生を促すことが判明した。しかし、代表的な抗原Ag85Bではその産生が見られなかった。現在、T細胞を活性化すると予想される結核菌抗原群の発現、精製を実施している。さらに本来の宿主である抗酸菌(Mycobacterium smegmatis)での抗原発現系を確立し、抗原精製を実施している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ある種の結核菌抗原群が制御性T細胞の誘導のみでなく、防御性サイトカイン産生をも促すことを見つけたこと、大腸菌による抗原の発現のみならず、抗酸菌での発現系を確立し、精製が進んでいること、さらに複数の抗原の発現・精製を行っていることから、概ね順調に進んでいると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度はある種の結核菌抗原がBCG接種歴のあるヒトPBMCから、制御性T細胞誘導のみでなく、防御に必須のサイトカイン産生も誘起することを明らかにした。昨年度に引き続き、これらの抗原の発現と精製を実施する。さらに、これらの抗原について抗酸菌を宿主とした発現系を構築し、精製を実施する。本年度の目標は 1)これら抗酸菌発現系による効率の良い精製方法を確立する。得られた抗酸菌発現結核菌抗原について、防御抗原としての有効性および制御性T細胞誘導能について検討し、大腸菌発現系による抗原との有効性について比較する。 2)大腸菌発現抗原と抗酸菌発現抗原で防御サイトカイン産生能や制御性T細胞誘導能に顕著な差異がみられた場合、それぞれの抗原の修飾等の差異を質量分析により、明らかにする。 3)防御サイトカイン産生を誘導する結核菌抗原については、その産生細胞を表面抗原および細胞内染色により明らかにする。 4)これらの細胞中のサイトカイン産生を誘起する責任分子について免疫沈降および質量分析で同定を試みる。
|
Causes of Carryover |
3月に発注した物品の納入が遅れ、4月にはいったため、次年度使用額として算出された。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記金額についてはすでに支払いが終わっている。
|