2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K09628
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
角田 隆俊 東海大学, 医学部, 教授 (50276854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井 厳太 東海大学, 医学部, 講師 (00535221)
澤田 佳一郎 東海大学, 医学部, 客員講師 (10420952)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 内分泌学 / 副甲状腺機能亢進症 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ヒト過形成副甲状腺の遺伝子発現の調査 ヒト過形成副甲状腺の遺伝子発現の調節に重要な働きをしていると考えられるmicroRNA(miRNA)についてのRNAシークエンス(miRNA-Seq)を行い、副甲状腺に発現しているmiRNAの網羅的な調査を行った。検体として、原発性副甲状腺機能亢進症患者からは肥大した1腺を、また二次性副甲状腺機能亢進症患者からは過形成の進度の異なる2腺を、それぞれ1~数名の患者について採取し、計9腺を使用した。各腺から抽出したmiRNAについて次世代シークエンスによって、それぞれ100万本以上の塩基配列を決定し、既知のmiRNA配列にマッピングしたところ、全体の約25%の配列が既知のmiRNAと一致した。これら既知のmiRNAはおよそ2600種類に分類され、その内、いずれかの腺で10万本以上検出されたものは26種類、いずれかの腺で1万~10万本検出されたものは42種類あった。同じ患者由来の2腺間の比較では、いずれかで1万本以上検出されたものの内で、大きな腺で小さな腺の2倍以上の発現が検出されたものが14種類(最大30.6倍)、小さな腺で大きな腺の2倍以上の発現が検出されたものが22種類(最大6.3倍)あった。原発性と二次性の比較では、いずれかの腺で1万本以上検出されたものの内で、原発性で二次性の2倍以上の発現が検出されたものが56種類(最大17.0倍)、二次性で原発性の2倍以上の発現が検出されたものが18種類(最大1000倍)であった。予測される標的遺伝子については現在検索中であるが、これらの腺の大きさや病態の違いにより大きな差を持つものの内に重要な調節因子が存在する可能性が大きいと思われる。 (2)培養副甲状腺細胞に細胞分裂を誘導する条件の検討 ヒト副甲状腺の培養条件の検討から、培地に浮かせた多孔質メンブレンの上での細胞塊培養に肥大化を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、患者から採取した新鮮な副甲状腺組織とその培養細胞でのマイクロアレイやmRNAのRNA-Seqを行う予定でいたが、副甲状腺組織の細胞分裂頻度はもともと低い上に、培養状態への以降は多岐の遺伝子発現の変化をもたらすことが予想され、細胞周期関連因子の変化の検出は非常に困難であることが予測されたため、まず遺伝子発現調節に直接関与するmicroRNAの網羅的検索を、同じ患者の異なる腺や病態の異なる患者の腺を用いたmiRNA-Seqにより実施して、検出されたmiRNAの発現量の比較・解析から、副甲状腺細胞の増殖に関する遺伝子発現調節因子を含むであろうmiRNA群を選別した。今後、これらのmiRNAの解析よりその機能を特定して細胞周期に関するものを特定することができると思われる。また、総リード数の約75%におよぶ未知のmiRNAについての解析より、標的遺伝子の探索も可能であると考えられ、この中からも細部周期に関するもの検出される可能性がある。 また、培地に浮かべた多孔質メンブレン上での副甲状腺細胞塊の培養で細胞増殖が観察され、高酸素濃度状態が細胞分裂を及ぼす可能性が示唆されたことから、酸素分圧と細胞増殖の関係が予想される。細胞増殖の機序を明らかにするために、有用な培養系が開発されたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)副甲状腺で発現する細胞分裂調節因子の検索と解析 前年度の成果を基に副甲状腺に発現するmiRNAの解析を進め、標的遺伝子の検討を行うことにより機能を推定する。特に腺の大きさや病態によって発現量の異なるものについては、データベースの大規模検索による標的配列の検索だけでなく、培養副甲状腺細胞等における強制発現や発現抑制を試みてその機能を特定する。未知のmiRNAについても同様の解析を行い、機能の特定から細胞周期に関連するものを特定する。 (2)培養副甲状腺細胞の増殖促進手法の開発 高酸素分圧下での培養副甲状腺における細胞分裂関連因子の発現状況を調査して酸素が細胞増殖へ及ぼす影響を調べる。また、副甲状腺の培養細胞を用いて、G0期にある多数の細胞をG1期へ移行させ細胞周期を回復する手段について検討する。具体的には、p27Kip1のノックダウン、c-myc発現促進、Rbファミリーのリン酸化促進による不活性化、その他p53、CDKインヒビター(p16INK4A、p21Cip1など)、CHK1/2、ATM/Rなどのノックダウンや機能抑制を試みる。
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