2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K09628
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
角田 隆俊 東海大学, 医学部, 教授 (50276854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井 厳太 東海大学, 医学部, 講師 (00535221)
澤田 佳一郎 東海大学, 医学部, 客員講師 (10420952)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 副甲状腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
副甲状腺は細胞分裂頻度が非常に低く、その実質細胞のin vitro培養は極めて困難である。遺伝子導入により不死化した細胞株も確立されておらず、今後、副甲状腺機能亢進症の研究を進展させ、その治療法を開発するためには、機能的な副甲状腺細胞の増殖を促進する培養法の確立が急務である。本研究では培養副甲状腺細胞の増殖手法の開発を目的として、ヒト患者の過形成副甲状腺に特徴的な遺伝子発現を探索し、その制御を試みて分裂増殖を促して細胞株の樹立を目指す。 本年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 (1)前年度のmiRNAの網羅的検索から、過形成腺の最大腺と細小腺で発現が大きく異なるもので既知の配列のもの4種類について、それぞれのインヒビターを培養副甲状腺細胞へ導入して、各種の遺伝子発現の変化について調べたところ、細胞周期や細胞死、また副甲状腺ホルモン分泌に関する遺伝子発現に影響するものを発見した。 (2)細胞周期静止期(G0期)から細胞周期G1期への移行促進手法の検討:副甲状腺細胞が発がん関連遺伝子の導入でも不死化し難いのは、副甲状腺細胞の分裂頻度が非常に低く、ほとんどの細胞がG0期にあるためであると考えられる。二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬であるカルシウム受容体作動薬シナカルセトの処方を続けながらも副甲状腺摘出術に至った患者の副甲状腺では、非投与患者と比較して、(ⅰ) G0期に発現し、細胞をG0期に留め置く役割を持つp27Kip1の発現が腺全体で弱まっていること、(ⅱ)分裂細胞で発現し、G0期への復帰を阻害するc-mycの発現細胞が増えていること、を見出した。しかし同時にアポトーシスも増えていることから、細胞周期へ復帰した細胞の多くが細胞死を起こしていることが推測された。よって次年度は、シナカルセトを作用させた上で細胞死を抑制することで、細胞周期を継続する細胞数を増やすことを試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果から、より具体的な手法の展開が可能となり、副甲状腺細胞の株化の実現にも近づいたと思われる。すなわち、 (1)miRNAの網羅的検索から、細胞周期や細胞死、また副甲状腺ホルモン分泌に関する遺伝子発現に影響するものを発見しており、細胞の株化に重要な機能を持つmiRNAである可能性がある。同様に大小の腺で発現パターンに大きな差異があるものは、未知のmiRNA群の中にも多数見つかっており、これらの中からも細胞の株化に利用できるmiRNAが見つかる可能性は十分にあると思われる。 (2)カルシウム受容体作動薬シナカルセトの処方患者から摘出されたの副甲状腺の解析から、細胞をG0期に留め置く役割を持つp27Kip1の発現が腺全体で弱まると共に、G1期からG0期への移行を阻害するc-mycの発現細胞が増えていることが判明し、カルシウム感受性受容体の活性化が細胞周期の促進を行っている可能性が示唆された。ただし、シナカルセトの作用により細胞周期に復帰した細胞の多くはその後細胞死を遂げることも判明したので、この機序を解析することで細胞死を抑制し、細胞周期を回し続ける方策を見つけることも可能であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究を続行しながら、それぞれの研究より得られた株化細胞の樹立に役立つ成果を組み合わせて株化の実現を図ると共に、新たな手法の開発も試みる。 (1)miRNAの網羅的検索から得られた細胞周期調節関連因子の利用:miRNAアクチベータ/インヒビター導入による細胞分裂調整とその維持の手法の開発。 (2)シナカルセトの細胞周期復帰作用の利用:シナカルセトの作用による細胞周期への復帰と、その後の細胞死抑制手法の開発。 (3)未分化胸腺腫細胞やiPS細胞から副甲状腺細胞への分化誘導の検討:副甲状腺は発生学的に胸腺と共通の祖先細胞を持つ。ヒトの未分化胸腺腫細胞Ty82に副甲状腺分化に必要な遺伝子であるGCM2やMAFBなどの強制発現や、副甲状腺を含む内分泌腺における多発性内分泌腫の原因遺伝子であるMENINの発現抑制、あるいはその変異遺伝子の強制発現により、PTH産生・分泌などの副甲状腺細胞の機能を獲得させることを試みる。また最近、ES細胞にPTH産生を誘導する手法が報告されているので、これを参考に胸腺細胞の分化転換を試みると共に、将来の再生医療への応用を見込んでiPS細胞から副甲状腺細胞への分化誘導手法の開発も試みる。 (4)温度感受性マウス副甲状腺細胞の作製:温度感受性のSV40-T遺伝子のトランスジェニックマウスを亜腎摘と高リン食餌投与によって誘導した過形成副甲状腺より細胞を単離して、許容温度で増殖させ、非許容温度で副甲状腺細胞に分化させて副甲状腺細胞としての機能を確認し、細胞株の確立を図る。
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Causes of Carryover |
研究支援組織への依頼の見直しにより余剰金が生じた。これを次年度の物品費と併せて使用する予定。
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