2016 Fiscal Year Research-status Report
デクスメデトミジンを用いた肺高血圧症に対する新規治療戦略
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16K10061
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
土井 庄三郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (80262195)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肺高血圧 / 肺小動脈リモデリング / 右室肥大 / 右心不全 / デクスメデトミジン / モノクロタリン |
Outline of Annual Research Achievements |
(目的)Monocrotaline(MCT)誘発肺高血圧(PH)ラットに対する、デクスメデトミジン(DEX)のPHに対する生理学的効果を調べることを初年度の目標とした。 (方法)PH群は、6週齢のオスSDラットに60mg/kgのMCTを皮下投与して作成した。臨床現場でPH診断後の治療開始時期に相当すると思われる14日目より、DEX群では皮下に留置した浸透圧ポンプによりDEXを2microgram/kg/hourで持続投与を開始した。DEXの経時的PH改善効果を、心臓超音波検査にて右室圧負荷の程度で評価した。またMCT投与開始後23日目に、圧カテーテルにより両心室圧を実測した。さらに右室/左室+中隔重量比を測定し、肺小動脈の中膜肥厚程度を観察した。また上記検査とは別に生存率を比較検討した。 (結果)右室圧負荷はPH群で経時的に増加し、DEX群ではその増加速度が明らかに抑制されていた。圧カテーテルによる測定で左室圧は約100mmHgであったのに対し、右室圧はコントロール(NC)群26±2mmHg、PH群92±7mmHg、DEX群39±11mmHgで、NC群に比しPH群で有意に高く、DEX群で有意に低かった。右室/左室+中隔重量比は右室肥大の程度を反映し、NC群0.27±0.03、PH群0.49±0.03、DEX群0.40±0.02で、NC群に比しPH群で有意に顕著で、DEX群で軽度ながら有意に低かった。一方生存曲線は、PH群では20日目で60%と低下し、29日目には0%となった。DEX群では25日目まで100%で、29日目でも40%と維持されていた。肺小動脈中膜肥厚はPH群で顕著であり、DEX群で有意に軽度だった。 (考察)以上よりDEXのPH抑制効果が示された。またDEXはPHによる肺小動脈および右室のリモデリングを抑制し、右心不全の軽快により生存率を改善したものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標を、デクスメデトミジンの肺高血圧に対する生理学的効果としたので、その点からは肺高血圧、肺小動脈リモデリング、右室肥大とともに生存率の改善を明らかにすることができたため、進捗状況としては概ね順調に進んでいると考えられる。 しかし、昨年度の後半から開始した免疫組織学的検査が、現段階ではうまく進んでいない。デクスメデトミジンの肺高血圧抑制機序を解明するためにも、検査法の改良などを鑑みながら進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はデクスメデトミジンの肺高血圧抑制の作用機序解明に向けて、取り組む所存である。そのためにも免疫組織科学的評価は必要不可欠である。
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Causes of Carryover |
特に理由は無いが、残額が若干の金額であったとしても有効活用したいために、次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験器具の購入などに回したい。
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