2017 Fiscal Year Research-status Report
黄色ブドウ球菌増殖を伴う皮膚炎自然発症モデルマウスを用いた皮膚炎発症機構解明
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16K10175
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐々木 貴史 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70306843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩濱 愛子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40383731)
天谷 雅行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90212563)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
Tmem79欠損マウスの皮膚炎及び細菌叢の関与を解明を行うために、以下の実験・解析を行った 1) 1~24週齢のTmem79 -/-マウス及びTmem79 +/-マウスのSPFコハウジング環境下における皮膚炎経時変化解析 これまでの解析によりTmem79欠損マウスは時期により皮膚炎症状の重篤度が変化することが観察されたことから、誕生直後から同腹のTmem79 -/-マウス及びTmem79 +/-マウスをSPFコハウジング環境下で経時的に皮膚炎症状(Skin severity score及びTEWL)を解析した。その結果、Tmem79 -/-マウスは3~4週齢時に皮膚炎を発症し、その後皮膚炎症状は回復するが、12週齢以降によりひどい皮膚炎を発症することが明らかになった。これらの結果から、Tmem79 -/-マウスは二相性の皮膚炎を発症することが明らかになった。 2) 抗生物質投与によるTmem79 -/-マウス二相性皮膚炎症状の改善解析 これまでの研究によりTmem79 -/-マウス二相目の皮膚炎では炎症部位で黄色ブドウ球菌が増殖していることが明らかになっている。そこで、2相の皮膚炎症状が抗生物質投与によって改善するか明らかにするために抗生物質投与を行った。その結果、一相目、二相目とも抗生物質投与により皮膚炎症状の改善が見られたことから、細菌が皮膚炎に寄与していることが明らかになった。 3) 1~24週齢のTmem79 -/-マウス及びTmem79 +/-マウスのSPFコハウジング環境下における細菌叢経時変化解析 二相性の皮膚炎症状が発症するTmem79 -/-マウスで細菌叢変化を明らかにするために細菌叢解析を行った。その結果、二相目で黄色ブドウ球菌が検出され炎症症状が悪化に呼応して細菌叢中の黄色ブドウ球菌比率が高くなっていた。しかし、一相目では明らかな細菌叢異常が見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tmem79 -/-マウス及びTmem79 +/-マウスのコハウジングの皮膚炎および細菌叢の詳細な解析により、Tmem79 -/-マウス二相目の皮膚炎では皮膚炎症状に呼応して黄色ブドウ球菌が増殖していることが明らかになったが、細菌叢解析では一相目の細菌叢異常を検出することができなかった。しかし、選択培地による解析により、一相目でStaphylococcus属の増殖が確認されることから、菌量が変化している可能性が示唆された。これまで細菌叢解析の対象とされてきた便中の細菌叢解析では、便中に含まれる細菌量と大腸での細菌量の相関が難しいこともありあまり定量解析をされてこなかったが、皮膚では領域を明確に分けることが可能であること、そして大腸と異なり細菌量自体が多くないこと、そして炎症時では非炎症時より菌が検出されることから、定量性を伴う細菌叢解析が重要であると考えられた。これまでに、FACSを利用した定量の報告があるが、皮膚細菌叢の場合菌量が少ないサンプルも多いことから、細菌叢解析用サンプルとカウント用サンプルに分けることが難しいこと、また、細菌叢データと菌数のデータを計算する際、正確な計算のためには各菌の16S rRNA コピー数の違いを補正する必要があることから、皮膚細菌叢にそのまま応用することはむずかしい。そこで、16S rRNA geneのampliconをqPCRで定量する方法の構築を行った。絶対定量法で行うため、大腸菌ゲノムDNAから増幅した16S rRNA PCR産物のDNA濃度を測定しamplicon数既知のサンプルを検量線スタンダードとした。これらのスタンダードとサンプルを同時に解析し、CT値を比較することにより定量を行った。定量法が完成したことから、Tmem79 -/-マウス及びTmem79 +/-マウス細菌叢の定量解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
Tmem79欠損マウスにおける複数細菌の表皮での増殖性変化の原因を解明するために、当初予定したとおり、表皮最上層のSG1細胞から細胞外に分泌されるタンパク質・脂質の解析と、その結果から、Tmem79欠損マウスでの複数細菌の表皮での増殖性変化機構の解明を試みるために、以下の実験を行う。 Tmem79欠損マウスのSG1細胞及び角層での抗菌性機能解析 1) マウス皮膚からブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群原因毒素ETAを用いて、表皮最外2細胞層を表皮から分離 2) シート状に分離した表皮細胞に対し、酵素を用いて単細胞へ分離 3) 表皮細胞用の細胞培養培地を用いて培養 分離したSG細胞に対し、Il17を用いて刺激を行う。24時間培養後に細胞と培地を分離し、細胞画分に対して抗菌ペプチドを主な対象としたmRNA及びタンパク質解析、及び、培地画分に対してタンパク質、有機物、抗菌活性解析を行う。これをTmem79欠損マウス由来細胞とコントロールで比較し、Tmem79欠損により生じる抗菌成分の分泌能の違いを解析する。 Tmem79欠損マウス表皮での細菌増殖性変化の解明 1) Tmem79欠損マウス及びコントロールマウスの角層及び表皮細胞を分離し、SG1細胞で違いの見られた抗菌成分の発現及び分布について解析をおこなう。 2) 細菌数の定量解析方法を構築したことから、細菌定量解析と細菌叢解析の結果を用いて、細菌数を反映した細菌叢解析方法の構築を行う。その方法を用いてTmem79欠損マウスの一相目、二相目の皮膚炎領域での皮膚細菌叢の解析を行い、皮膚炎の発症機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
H29年度のマウス実験スペースは、飼育費を教室で負担していただける箇所を確保することができたことから、使用額を抑えることができた。その分は最も予算が必要となる細菌叢解析費として利用予定である。
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