2016 Fiscal Year Research-status Report
うつ病休職者に対する職場トラウマ記憶書き直しに関する認知療法技法の導入と効果検証
Project/Area Number |
16K10243
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高梨 利恵子 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任研究員 (30755848)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 栄司 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00292699)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 職場トラウマ記憶 / リワークプログラム / イメージ書き直し / 認知行動療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、うつ病の難治化や度重なる休職につながるような職場でのストレスフルな出来事の記憶を「職場トラウマ記憶」と定義した上で、1.休職中のうつ病患者の職場トラウマ記憶の概要を明らかにする、2.職場トラウマ記憶に対し認知行動療法の技法であるイメージ書き直し技法(imargery rescripting:IR)を行い、症状改善や職場再適応への効果を検証することを目的とする。 今年度は、研究計画について本学医学部の倫理審査委員会の承認(審査番号:2524)を得たのち、うつ病で休職している患者における職場トラウマ記憶の精神症状への影響を把握すること、および本邦で実施されたIRの効果の量的、質的な側面の特徴と安全性ついて検討することに取り組んだ。 職場トラウマ記憶の精神症状への影響の程度について把握するために、うつ病リワークデイケアに参加している患者29名に対し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の評価尺度である IES-R(Impact of Event Scale-Revised)を実施した。対象者29名のうちPTSDおよびpartial PTSDのスクリーニング目的で使用されるカットオフ値(24/25)を超える患者が12名(41%)であった。また、カットオフを超える患者のなかで、現行リワークプログラムに1か月参加した9名のうち、4名(44%)が参加中にカットオフを下回った。一方、一か月リワークプログラムに参加した20名の患者のうち、5名(25%)の患者が得点が上昇し、2名(10%)が新たにカットオフを上回ったことがわかり、職場トラウマ記憶をターゲットとした技法の必要性が示された。 さらに、トラウマ記憶のIRの本邦における効果と安全性を検討するため、IRを施術した16名の社交不安患者に対し治療体験に関するインタビューを実施した音声データをテープ起こしし、質的な解析を実施している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
うつ病休職者のトラウマ記憶による精神症状の強さと特徴を把握することができた。患者と面接者双方の時間的、労力的負荷が検討され、当初予定していた職場トラウマ記憶の内容を聴取する半構造化面接が未実施であるが、これに代わる質問紙を開発し実施予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
質問紙、および面接により職場トラウマ記憶の内容や性質を明らかにし、うつ病やPTSDの侵入記憶との比較を行う。さらにイメージ書き直し技法を受けた患者の体験インタビューからから明らかになった効果の現れ方や安全性について検討したうえ、これらを踏まえ、リワークプログラムの実施者チームで協議を行い、職場トラウマ記憶に対するイメージ書き直し技法を開発する。
|
-
[Journal Article] Cognitive Behavioral Therapy for Patients with Social Anxiety Disorder who Remain Symptomatic following Antidepressant Treatment: A Randomized, Assessor-Blinded, Controlled Trial.2016
Author(s)
Yoshinaga N*, Matsuki S, Niitsu T, Sato Y, Tanaka M, Ibuki H, Takanashi R, Ohshiro K, Ohshima F, Asano K, Kobori O, Yoshimura K, Hirano Y, Sawaguchi K, Koshizaka M, Hanaoka H, Nakagawa A, Nakazato M, Iyo M, Shimizu E.
-
Journal Title
Psychotherapy and Psychosomatics
Volume: 85
Pages: 208-217
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-