2016 Fiscal Year Research-status Report
金ナノ粒子造影剤を用いた肝細胞癌の新規画像診断法の開発
Project/Area Number |
16K10268
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 康之 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (50636008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川岸 直樹 東北大学, 大学病院, 准教授 (00333807) [Withdrawn]
宮城 重人 東北大学, 大学病院, 准教授 (00420042)
亀井 尚 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10436115)
権田 幸祐 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80375435)
大内 憲明 東北大学, 医学系研究科, 教授 (90203710)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / 肝細胞癌 / 高解像度X線CT / EPR効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞癌の治療において高精度な画像診断が極めて重要である。肝細胞癌の診断では、X 線 CT 造影、MRI 造影等が主として行われている。最も普及している CT 造影によるCT 画像診断の分解能は 5mm 程度である。癌組織は 1mm 程度の大きさから新生血管が構築され始め、癌転移の危険性が高まるため、できるだけ微小な癌を検出することが望ましい。本研究では高造影能を有する金ナノ粒子造影剤を開発し、造影剤の EPR 効果により肝細胞癌を特異的に CT イメージングする。これにより従来以上の高精度な画像診断法を開発し、臨床応用へ繋げることを目的としている。 本研究では、(1)安定した肝細胞癌モデルマウスの作製、(2)造影剤排泄性の強化、(3)ナノ粒子造影剤の癌細胞標的性の強化の3点の課題解決を目標としている。これまでの研究成果は以下の通りである。 (1)安定した肝細胞癌モデルマウスの作製:肝細胞癌モデルマウスとして、NASH-HCC(非アルコール性脂肪性肝炎-肝細胞癌)モデルマウス(SMC Laboratories, Inc, Tokyo, Japan)を用いた。これは2型糖尿病を基礎疾患として保持し、高脂肪食負荷により、週数を経て確実に肝細胞癌を多発性に発癌するモデルである。これにより安定した肝細胞癌モデルマウスの作製が可能となった。 (2)造影剤排泄性の強化:先行研究で確立した系を用い、血液滞留性が高く、高造影能を有する金ナノ粒子造影剤を独自に合成した。 (3)ナノ粒子造影剤の癌細胞標的性の強化: CTイメージングで造影能を検討し、実際に1mm未満の肝細胞癌の同定に成功した。さらに、EPR効果により、癌組織選択的にナノ粒子が集積するため、時間に依存してより特異的に肝細胞癌を検出可能なことが判明した。肝細胞癌のイメージングとしては、従来の画像診断能を大きく上回る結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1)安定した肝細胞癌モデルマウスの作製、(2)造影剤排泄性の強化、(3)ナノ粒子造影剤の癌細胞標的性の強化の3点の課題解決を目標としている。 (1)安定した肝細胞癌モデルマウスの作製:肝細胞癌モデルマウスとして、NASH-HCC(非アルコール性脂肪性肝炎-肝細胞癌)モデルマウス(SMC Laboratories, Inc, Tokyo, Japan)を用いた。本邦においては、糖尿病、および脂質代謝異常症患者が増加しており、肝炎治療の進歩も相俟って、NASHを背景とした肝細胞癌の増加が顕著である。当該モデルにおいては、2型糖尿病を基礎疾患として保持し、高脂肪食負荷により、週数を経て確実に肝細胞癌を多発性に発癌するモデルである。 (2)造影剤排泄性の強化:塩化金酸とクエン酸を用いた液相還元法により金ナノ粒子を合成し、高造影能を有する金ナノ粒子造影剤を開発した。金ナノ粒子の表面にポリエチレングリコール(PEG) 化を施し、修飾することで粒子の凝集を防ぎ、血液中の抗体や補体等の付着を防ぐことは、血液滞留性を高める方法として効果的であった。また、最終粒子径を 10nm へサイズ化することで、EPR 効果を高めることが可能となった。新規に合成したマウスに尾静脈注射し、CTイメージングを施行した。我々が保持している動物用 CT 装置(Bruker 製 SkyScan1176, 分解 能:9μm)で造影能を検討し、実際に1mm未満の肝細胞癌の同定に成功した。さらに、EPR効果により、癌組織選択的にナノ粒子を集積するため、時間に依存して、より特異的に肝細胞癌を検出可能なことが判明した。肝細胞癌のイメージングとしては、従来の画像診断能を大きく上回る結果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
安定した肝細胞癌モデルマウスであるNASH-HCCモデルマウスに対し、新規に合成した金ナノ粒子造影剤を用いて、肝細胞癌の高精度な画像診断法の検討を引き続き行う。NASHに由来する肝細胞癌は近年注目を浴びているものの、その発癌機序は依然として不明である。金ナノ粒子造影剤を投与し、EPR効果を利用することで従来法を上回る極早期の肝細胞癌を検出可能である。検出した早期肝細胞癌を、病理学的データと統合することで、NASHに起因する肝細胞癌の発癌にかかわるシグナル経路・機序について検討する。 さらに、ナノ粒子造影剤の癌細胞標的性の強化:微小癌の検出と同時に、がんの転移・再発にかかわる癌悪性度評価として、CT による悪性度の可視化について検討する。肝細胞癌の進展に重要な因子であるチロシンキナーゼ型受容体(SCF 受容体、VEGF 受容体、PDGF 受容体)に注目し、これらの因子の細胞外領域を認識する抗体をナノ粒子表面に担持させ、癌細胞標的性の向上を目指す。抗体を担持させる際は、シリカ層表面をアミノ基で修飾した後、アミノ基をマレイミド化し、抗体分子のチオール基との結合を行う。抗体を粒子表面に担持させることにより、癌悪性度の評価を、ナノ粒子造影剤の量に由来する CT 値で定量的に評価できることが期待される。肝臓における癌組 織の「大きさ」と「数」を解析した後、各受容体(SCF 受容体、VEGF 受容体、PDGF 受容体)発現量の病理解析のデータと統合し、CT による癌悪性度評価の可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに進行しているが、物品購入がやや少額で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品購入のために使用。
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Research Products
(5 results)