2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K10444
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
辻 昭一郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (70726736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉岡 篤 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (20171150)
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
吉澤 淳 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60457984)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝移植 / マウス / 免疫寛容 / 拒絶 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの肝移植技術を確立するために、初めにラットで肝移植の技術を確立した後、マウスの同所肝移植を全身麻酔下で行った。本研究の移植実験ではレシピエントとして主にC56BL/6系のマウスを用い、ドナーとしてはMHCの異なるBalb/c系などのマウスを用いる予定であるが、Balb/cなどの白色系のマウスは組織が脆弱であるため、技術の確立のために初めはドナー、レシピエントともにC56BL/6を用いた。 肝上大静脈は連続縫合を行い、門脈、肝下大静脈はカフを用いて、また胆管はステントを用いて吻合した。肝動脈は原法と同じく吻合を行わなかった。マウスの肝移植は技術的に、特に肝上大静脈、門脈、肝下大静脈の吻合が極めて難しく、器具、手技の再検討などの改良を行い、ようやく肝移植後に麻酔から覚醒するようになり、短期予後の条件下ではマウス肝移植の技術が確立した。 次にドナーにBalb/cを、レシピエントにC57BL/6を用いて同様に同所肝移植を行った。Balb/cは組織が非常に脆弱で特に肝臓が容易に裂けるため技術の習得には時間を要したが、手技、道具の改善により短期予後の条件下ではドナーにBalb/cを用いた場合でもマウス肝移植の技術が確立した。しかし長期的には成績が安定せず、現在長期予後条件下での技術の確立を目指している。 マウスは多数の近郊系の存在、遺伝情報の解読、遺伝子改変技術など研究のためのモデル動物として非常に有用で、かつ免疫学的特性からもマウスの肝移植モデルを用いた研究が望まれてきた。しかしマウス同所肝移植は技術的に極めて困難であり、世界でも数人しかその技術を保持しておらず、マウスによる肝移植研究の障害となってきた。本研究では、短期予後条件下ながらもマウス肝移植の技術を確立したため、その意義は極めて大きい。また長期予後条件下でも技術が確立しつつあり、今後の肝移植研究に大きな道を開く事となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
マウスの肝移植は技術的に非常に困難で世界でも数人しか行うことができない。しかし我々の研究室にはマウス肝移植を行うことができる研究員がおり、マウス肝移植を用いた研究を行っていた。この度当該研究員が海外の研究室に移籍する事となり、当初は移籍した研究室と共同研究をすることになっていたが、その研究室との共同研究や研究員から研究支援を受ける事も困難となったため、マウスの肝移植の技術を再確立する必要性が生じた。 初めはラットにて肝移植技術の獲得を行い、マウスによる肝移植技術の確立を試みた。マウスの肝移植が技術的に困難であり、技術獲得に非常に時間を要したため、マウスの肝移植を前提とした実験計画にやや遅れを生じたが、困難を乗り越えて短期生存の条件下ではマウス肝移植の技術が確立されつつあった。しかし、マウス肝移植を行う研究員が右肩甲骨骨折を受傷したため、研究が中断されてしまった。現在、肩甲骨骨折は回復に向かい、実験が再開できる環境が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究員自身の受傷からの回復後、短期生存の条件下でマウスの移植技術の再確立を行い、さらに現在長期生存の条件下でも移植技術の確立を行う。今後は当初の計画通り、MHCの異なったマウス間で同所肝移植を行い、免疫寛容の成立およびBAFF関連遺伝子、MHC等の発現の検討を行う。またTACIノックアウトマウスおよびBAFFトランスジェニックマウスを用いた移植実験を行い、免疫寛容および拒絶におけるTACIおよびBAFFの役割を検討する。また生体肝移植後の患者さんの肝生検標本および血清を用いて、BAFF関連遺伝子の発現および拒絶におけるその役割を研究する。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究員の受傷により移植実験を用いた研究が止まっているため、当初必要とされていた費用が現時点では使用されておらず、次年度使用額が生じている。 (使用計画) 現在、研究員が受傷より回復しつつあり、まもなく研究が再開できる見込みである。今後は当初の計画の如く、これまでの研究の遅れを取り戻すべく、当初予定されていたMHCの異なるマウス間での移植実験が行われるため、今年度不使用の費用を予定通り使用する。
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