2017 Fiscal Year Research-status Report
低侵襲心臓手術治療成績向上に向けた術後炎症反応の病態解明
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16K10636
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
山口 敦司 自治医科大学, 医学部, 教授 (50265287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 直行 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20382898)
吉崎 隆道 自治医科大学, 医学部, 臨床助教 (20743115)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 低侵襲心臓手術 / 経皮敵大動脈移植術 / 術後炎症反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、経皮的大動脈弁移殖術(transcatheter aortic valve implantation: TAVI)手術実施症例を対象として、通常の外科的大動脈弁置換手術術後の炎症反応との相違を解析する臨床研究を行った。2009年4月から2017年2月までに、外科治療を要した80歳以上の大動脈弁狭窄症症例(通常の外科的大動脈弁置換手術139例・TAVI手術64例)を対象として、基礎臨床データの後ろ向き解析研究を実施した。80-84歳(外科的大動脈弁置換手術実施群:n=119 vs. TAVI手術実 施群:n=27)、及び85歳以上(外科的大動脈弁置換手術実施群:n=25 vs. TAVI手術実施群:n=37)の年齢階層別の比較試験では、両年齢層において、TAVI手術実施群での手術時間と在院日数の短縮化、輸血量の減少を認めた。特に、85歳以上の群において、治療成績の差はより顕著であり、超高齢者におけるTAVI手術の有効性が示唆された。本研究成果は、第70回日本胸部外科学会定期学術集会(2017年9月26日~29日札幌)で発表した。 血液検体を使用する分子細胞学的研究実験は、当大学倫理委員会の承認を得て、患者検体の採取を現在行っている。予備実験で核磁気細胞分離装置(MACS)を使用し、99%に近い精度でCD14+単球を精製し、RIN値7以上のRNAを抽出している。目標症例数は、外科的大動脈弁置換手術実施群12例・TAVI手術実施群12例・コントロール群6例の合計30例であり、現在約1/3の患者検体を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、当施設では、心臓手術リスクの少ない症例に対しては、通常の外科的大動脈弁置換手術を第一選択として実施しているが、80歳以上の高齢者や全身状態が不良な症例では、TAVI手術を積極的に実施している。2017年は、通常の外科的大動脈弁置換術は114例(大動脈弁狭窄症・大動脈弁閉鎖不全症を合計した症例数)に実施し、TAVI手術 は54例に実施した。TAVI手術の治療成績は、手術死亡症例・術後脳梗塞症例ともに0例と非常に良好であった。 血液検体を使用する分子細胞学的研究実験は、当大学倫理委員会の承認を得て、患者検体の採取を現在行っている。目標症例数は、外科的大動脈弁置換手術実施群12例・TAVI手術実施群12例・コントロール群6例の合計30例であり、現在約1/3の患者検体を収集した。2018年7月頃、患者検体の採取は終了する見込みである。得られた患者検体を使用して、単球細胞の遺伝子解析研究、並びに炎症性サイトカインとケモカインの網羅的な計測実験を実施する予定であり、その後、専用ソフトウエアを使用した解析実験を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き患者検体の採取を、外科的大動脈弁置換手術実施群12例・TAVI手術実施群12例・コントロール群(エコー検査で心臓弁膜疾患のない胸部大動脈手術実施症例)6例の合計30症例を目標として行う。これら3群はいずれも70歳以上の高齢者を対象としており、70歳未満の非高齢者は研究対象から除外している。また、術後輸血症例は除外されるため、術前貧血がある症例(ヘモグロビン濃度:10g/dL以下と定義)も研究対象から除外している。本研究は前向き研究ではあるが、振り分け研究ではないため、研究参加に伴って治療内容が変更されることはなく、採血する血液量も少量であるため、術後経過に及ぼす影響は軽微である。 患者検体採取終了後は、単球細胞の遺伝子解析研究、並びに炎症性サイトカインとケモカインの網羅的な計測実験を実施する予定であり、その後、専用ソフトウエアを使用した解析実験を行う。本研究は、国立成育医療研究センター研究所免疫アレルギー・感染研究部との共同研究であり、炎症性サイトカインとケモカインの網羅的な計測実験を、マルチプレックスアッセイシステムを使用して行い、その後の裏付け実験として、単球RNAを使用した定量的PCR実験を行う。上記研究を行うことで、TAVI使用に伴う術後炎症反応の軽減効果の解析を、分子細胞レベルで行う予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 本研究は、基盤研究Cに2016年10月中旬に繰り越し採用となった経緯がある。2017年度から実際の患者検体の採取を開始したが、本プロジェクトの主たる研究実験(マルチプレックスアッセイシステムを使用した炎症性サイトカインとケモカインの網羅的な計測実験と単球RNAの遺伝子発現解析実験)は、全患者検体終了後に行うため、今回次年度使用額が発生した。
(使用計画)メルク社のマルチプレックスアッセイシステム(ヒトサイトカイン・ケモカインパネル)を使用して、炎症性サイトカインとケモカインの発現解析を網羅的に行う。その後、単球(CD14陽性細胞)から採取したRNAの定量的PCR実験を行う予定である。
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