2016 Fiscal Year Research-status Report
臨床検体を用いたプロテオミクスによる転移性骨腫瘍の分子背景の解明と新規治療法開発
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16K10880
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
近藤 格 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (30284061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
穴澤 卯圭 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (20245525)
菊田 一貴 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30383798)
多田 裕司 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (50344990)
川井 章 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (90252965)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 転移性骨腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
転移性骨腫瘍は多くの悪性腫瘍で発生し、病的骨折や疼痛そして高カルシウム血症を来す。近年、分子標的薬を用いた治療法が急速に発展し、転移を有しながらも長期間にわたって生存できる症例が増えた。したがって、転移性骨腫瘍を患う症例は今後ますます増加すると考えられる。骨転移の早期発見・治療はQOLの改善につながるので、血液バイオマーカーを用いた非侵襲的に骨転移を検出できる検査法の開発が望まれる。しかし、骨転移を感度・特異度高く検出できる血液検査は存在しない。本研究の目的は、転移性骨腫瘍の早期発見および病態モニターのための血液バイオマーカーを創出することである。これまでの研究から、プロテオーム解析を用いて骨転移腫瘍で原発腫瘍巣に比べて著しく発現亢進するタンパク質群を同定した。今年度は、同定したタンパク質の臨床的有用性を検証した。具体的には、千葉大学呼吸器内科で採取された肺がん症例75例の血漿を用いて、画像的に骨転移が存在する症例群におけるバイオマーカーの血中発現レベルを、画像的に骨転移が存在しない症例群と比較した。市販のELISAプレートはうまく稼働せずウェスタンブロッティングを用いた解析を行った。その結果、骨転移が陽性の症例群において高い確率で候補タンパク質が強く発現することが確認された。同タンパク質には複数のファミリータンパク質が存在する。そこで、一連のファミリータンパク質を調べ、同候補タンパク質の特異性を確認した。また、転移性骨腫瘍組織を液相トップダウン質量分析で調べ、転移性骨腫瘍で高い発現レベルを示すタンパク質の中に同ファミリータンパク質のものが複数含まれていることもわかった。転移性骨腫瘍組織からの初代培養細胞株の樹立については、入手可能な腫瘍組織の状態について関係者と打合せを行い、樹立に関わる課題を解決するための技術を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロテオーム解析でみいだされたバイオマーカー候補について、転移性骨腫瘍を有するがん患者の血漿中で、画像的に骨転移のないがん症例よりも発現が有意に高いタンパク質を簡便な手法で確認することができた。症例の数は75症例と限られているが、検証実験をこれから拡大する根拠を得ることができた。また、肺がん70例、悪性胸膜中皮腫27例の臨床病理情報について、バイオマーカー候補タンパク質の発現との相関解析を開始した。診断技術として開発するために、平成29年度以降、さらに症例数を増やした多施設共同の検証実験を行う必要がある。同定されたタンパク質は培養がん細胞においては培養上清中に放出されることは以前の実験でわかっていたが、血漿タンパク質としては知られていない。細胞中に発現する同タンパク質は腫瘍細胞の増殖や浸潤を促進することを以前のin vitroの実験で確認しており転移性骨腫瘍組織での発現亢進については機能的に矛盾しない。しかし、どのようなメカニズムで血中に放出され、しかも安定して存在しているのか不明である。分子量からすると分解されているわけではなさそうである。液相トップダウン質量分析を用いた新しい候補タンパク質の同定については、候補タンパク質を含む多数のタンパク質を観察できることがわかったので、臨床病理学的をそろえた解析を実施することで、新規のバイオマーカー候補が同定できると見込まれる。一方、転移性骨腫瘍組織からのPDXと初代培養細胞株の樹立および阻害剤の実験は達成できておらず、平成29年度以降の課題である。このように、決定的な結果は未だ得られていないものの、バイオマーカー候補の有用性の検討およびプロテオーム解析については平成28年度に計画していた実験はほぼ終了し、次のステージに進む根拠となるデータを得ることができた。したがって、総括としてはおおむね順調に進展していると結論した。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオマーカーの検証実験はサンプルを追加して実施する。ウェスタンブロッティングでの検出である程度の数を調べたあと、ELISAプレートを使った実験に移行することを検討する。ウェスタンブロッティングは、発現量のデータに加えて分子量のデータを合わせて採取できるというメリットがあり、細胞内タンパク質が血漿中で検出される機構について調べる目的で、引き続き使用する。検証実験に必要なサンプルについては、必要に応じて参加施設を増やすことを検討する。すでに報告されている骨転移の網羅的解析のメタデータを用い、同定したタンパク質に加えそのファミリータンパク質の特異性を多数の症例において調べる。同定したタンパク質に対する阻害剤の細胞レベルの効果を調べ、薬効の分子背景を網羅的解析によって調べる。転移性骨腫瘍組織を用いた液相トップダウン質量分析によるプロテオーム解析については、臨床病理学的背景を考慮した発現解析を、ある程度の症例数を対象に行う。必要な腫瘍組織は既に採取してあるものを対象とすることを計画しているが、必要に応じて新規のサンプルも実験に加える。新規の症例の新鮮腫瘍組織を用いたPDXおよび初代培養細胞株の樹立を進める。樹立できた株については、その由来を確認し、分子背景をプロテオーム解析で調べ、薬剤感受性試験を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は検証実験を開始年度であり、すでに保管されていた血清および血漿サンプルを用いた解析を行った。分担研究者は新しいサンプルの収集を始めたところであり、研究成果はまだ発表する段階ではなく、計画していた物品費や旅費を使用する機会がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新しく血清および血漿サンプルを用いた解析を実施するために、新しいサンプルの収集を継続する。研究成果として発表する内容が得られる時期であり、情報収集が必要になってくる。そのため、計画していた物品費や旅費を、繰り越した研究費も合わせて使用する機会が発生すると見込まれる。
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[Journal Article] Novel p53 target gene FUCA1 encodes a fucosidase and regulates growth and survival of cancer cells2016
Author(s)
5.Ezawa I, Sawai Y, Kawase T, Okabe A, Tsutsumi S, Ichikawa H, Kobayashi Y, Tashiro F, Namiki H, Kondo T, Semba K, Aburatani H, Taya Y, Nakagama H, Ohki R
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Journal Title
Cancer Sci
Volume: 107
Pages: 434-435
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Diagnosis and treatment of bone metastasis: comprehensive guideline of the Japanese Society of Medical Oncology, Japanese Orthopedic Association, Japanese Urological Association, and Japanese Society for Radiation Oncology2016
Author(s)
Shibata H, Kato S, Sekine I, Abe K, Araki N, Iguchi H, Izumi T, Inaba Y, Osaka I, Kato S, Kawai A, Kinuya S, Kodaira M, Kobayashi E, Kobayashi T, Sato J, Shinohara N, Takahashi S, Takamatsu Y, Takayama K, Takayama K, Tateishi U, Nagakura H, Hosaka M, Morioka H, Moriya T, Yuasa T, Yurikusa T, Yomiya K, Yoshida M
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Journal Title
ESMO Open
Volume: 1
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] 肉腫のプロテオーム解析2016
Author(s)
近藤格
Organizer
第89回日本整形外科学会学術総会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
Year and Date
2016-05-12 – 2016-05-15
Invited
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