2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K10928
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
里元 麻衣子 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (10611551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
槇田 浩史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20199657) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経炎症 / 認知機能障害 / セボフルラン |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】全身性炎症が脳内神経炎症を引き起こし、この反応が引き続いて急性の認知機能障害を呈する現象が注目されている。さらに、神経炎症は術後の認知機能障害(POCD)や術後せん妄の発症原因となることも指摘されている。しかしながら、神経炎症の病態生理学は十分に明らかになっておらず、現在確立された治療法はない。今回我々はLPS投与により誘発される全身性炎症由来の脳内神経炎症と認知機能低下モデルマウスを用いて、セボフルランの前投与が神経保護的効果をもたらすか検討したので報告する。 【方法】成獣マウスを以下の4群に分けた。(1)生理食塩水群、(2)2%セボフルラン1時間投与群、(3)腹腔内LPS5mg/kg投与群、(4)LPS投与前に2%セボフルランを1時間投与群。LPS投与後24時間後に、海馬のミクログリアの活性化、炎症性サイトカインの測定、脳内βアミロイドの解析を、免疫染色及びウエスタンブロッティングで行った。認知機能は行動実験を用いて解析した。 【結果】LPS投与により、脳内のミクログリアの活性化(150%)、炎症性サイトカインの上昇(160%)、脳内βアミロイド関連タンパクの上昇(350%)を認めた。セボフルランの前投与はこれらの上昇を抑えた。全身性LPS投与により有意な学習障害が惹起されたが、セボフルランの前投与はこの学習障害を軽減した。セボフルラン単独による脳内神経炎症や学習への影響は認めなかった。 【考察及び結論】セボフルラン前投与は全身性LPS投与により引き起こされた記憶障害を改善させ、過度のミクログリアの活性化を抑制し、炎症を抑え、アミロイド関連蛋白の上昇を抑制した。これら結果からセボフルランの前投与は脳内神経炎症に有効である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
LPS腹腔内投与により引き起こされる全身炎症による脳内炎症反応の検討について、免疫組織学的に評価できた。さらに、脳内炎症を抑える薬剤の開発についても研究結果を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間内に計画していたことの大筋はすでに研究結果を示した。今後は、より微細な構造変化、たとえば脳内神経相互の関係性を免疫組織学的に評価しようと考えている。また、脳内炎症を抑える薬剤の投与時期や期間により、より臨床の現場に即した使用方法での効果を判定していく計画である。 現在得られた知見を英文雑誌に投稿中であり、受理されることでより広く研究結果を世の中に示すことが出来ると考えている。
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Causes of Carryover |
2月より勤務先が変更となり、それに伴い、移動前後の時期に研究が一旦ストップしたため、予定していた研究の一部が平成29年度に持ち越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海馬全体での変化はまとめたが、神経相互の関係、神経のタイプによる反応については平成29年度以降に実施していく計画である。
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