2017 Fiscal Year Research-status Report
血小板の細菌感染防御メカニズムの解明:新しい敗血症治療戦略を提唱するために
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16K10957
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
亀井 政孝 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (60443503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島岡 要 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40281133)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血小板 / 敗血症 / 新生児 / プロテオミクス / platelet rich plasma |
Outline of Annual Research Achievements |
新生児の周術期では血小板機能の未熟性がしばしば問題となる。新生児血小板の止血機能の未熟性については最近の精力的な研究により、多くの重要な知見が集積されてきた。血小板は血栓止血能だけでなく、免疫系とのクロストークを通じて多彩な生体防御機能を有していることが明らかとなってきている。敗血症では、血小板と自然免疫系のクロストークにより、全身性の炎症反応と血栓症が互いに増幅しあいながら、重要臓器の微小血管レベルでの循環不全をまねき多臓器不全に陥る。敗血症における血栓症は、凝固カスケード亢進によって形成されるフィブリン塊だけでなく、局所に凝集した血小板によるさらなる凝固カスケード亢進により悪化していくと考えられている。敗血症が重症化するほど血小板数低下を示し、血小板数低下は死亡リスク因子の一つとして広く認められている。敗血症マウスモデルでは、血栓症と血小板減少症は血小板GPIbを介してひきおこされる。新生児では敗血症時の致死率は成人と比較して低い(10-15%)が、血小板の止血機能、免疫調節機能、組織修復機能などに新生児に特異的な変化があるのか、その詳細は明らかでない。免疫系が完全には発達していない新生児では、血小板の生体防御機能が周術期感染症や炎症反応の制御に貢献し、敗血症の病態を左右する要因であると考えられるが、ほとんど研究が進んでいない。そこで、まず、第一段階として新生児と成人血小板のタンパク質発現相対定量解析(iTRAQ解析)を行い、タンパク発現プロフィールを網羅的に比較検討し、新生児と成人血小板の発現に大きな差異がみられる分子を同定することを目指したが、サンプル採取する体制がとれずにいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新生児血小板では免疫調節能と血管内皮修復能に未熟性があるか、逆に活性が亢進しているのかを解析するために、期間内に3部に分けて研究を推進する予定である。 【Part-1】新生児血小板のプロテオミクス解析:新生児と成人血小板のタンパク質発現相対定量解析を行い、タンパク発現プロフィールを網羅的に比較検討する 【Part-2】PRP抽出液の免疫調節能・血管内皮修復能の解析:血小板(PRP抽出液)が自然免疫系細胞と血管内皮細胞を制御する活性をin vitro実験系で解析する 【Part-3】新生児PRP抽出物の敗血症に対する効果の検討:血小板(PRP抽出液)がマウス敗血症モデルにおよぼす新規効果を検討し、新生児血小板において新規活性がどのように変化しているのか、未熟ではなく、亢進している可能性も含めて評価する。しかし、現在、Part-1の新生児血小板サンプル採取の段階で停滞している。理由は、実地臨床のマンパワー不足により、採取計画を実行できないことによる。サンプルは、帝王切開臍帯血より採取し、採取後ただちに処理する必要があるが、その時間を確保することができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は、実地臨床のマンパワー不足のため進んでいなかったが、本年度より教室員9名の増員があり、体制が整いつつある。新生児血小板のプロテオミクス解析の実施体制はすでに確立されている。iTRAQ受託サービス(Bio Garage)を利用し、新生児と成人血小板のタンパク発現解析を行う。新生児と成人とで発現に大きな差が見られる分子群のうち、いくつかは免疫系や組織修復に対する機能がすでに知られた分子であると予測される。まずタンパク発現量の差違をより定量的な別の方法で確認する(フローサイトメトリー(FACS)、ウエスタンブロッティング)。差違が確認できた分子については、知られた機能に基づき、データの医学的な意義を考察する。免疫機能調節に関わる機能が知られた血小板分子にはサイトカイン(IL-1, TGF等),HMGB1, ケモカイン、Toll様受容体, TREMリガンド, CD40, CD154と、組織修復能に関連する増殖因子(PDGF, VEGF, HGF,EGF等)がある。 対照的に、新生児と成人とで発現に大きな差が見られる分子群のうち、その免疫系や組織修復に対する機能が全く不明な分子が多数含まれると予測する。これらの分子についてはバイオインフォマティクスやマイニングにより機能予測に尽力するが、それでも免疫系や組織修復との関連性を示す情報が得られないときには、ケースバイケースで判断し一旦保留とし本研究の別の部分にリソースを向ける。Part-1新生児血小板のプロテオミクス解析およびPart-2 PRP抽出液の免疫調節能・血管内皮修復能の解析を同時並行させ研究を推進する。Part-1の結果により、Part-3新生児PRP抽出物の敗血症に対する効果の検討を実施するかどうか決断する。
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Causes of Carryover |
【理由】研究計画に変更はないが、研究を進めていく上で必要に応じて購入する薬品を検討していたため、当初より購入量を抑えた。 【計画】前年、検討した薬品を購入する。また、学会発表のための旅費、英語論文の校正費に使用する予定である。
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