2016 Fiscal Year Research-status Report
周術期炎症管理における新規診断・治療戦略の開発：レドックスバイオロジーの臨床応用
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16K10975
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| Research Institution | Kansai Medical University |
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Principal Investigator |
松尾 禎之 関西医科大学, 医学部, 講師 (50447926)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広田 喜一 関西医科大学, 医学部, 教授 (00283606)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | レドックス / ストレス / 炎症 / チオレドキシン |
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| Outline of Annual Research Achievements |
チオレドキシンは酸化ストレスや感染等により誘導され、様々なバイオストレスに対する生体防御因子として働く。本研究では、オンサイトでのチオレドキシンの定量を可能にする迅速測定システムを構築し、周術期管理におけるストレスマーカーとしてのチオレドキシンの有用性を確立する。さらに細胞外チオレドキシンの示す抗炎症作用について、酸化還元（レドックス）制御の観点から、その分子機序を明らかにすることを目的とする。
従来のELISA法（固相化抗体による呈色反応）に代わるチオレドキシン定量法として、小型化学発光自動分析装置POCubeを用いたチオレドキシン測定系を開発した。本技術は液相での免疫反応と化学発光（CLEIA法）に基づき、カートリッジ方式により様々な生理活性物質を半自動的に測定することが可能である。組換えヒトチオレドキシンタンパク質を標準物質として、同一の抗体ペアを用いたELISA法との比較を行ったところ、従来法と同等以上の測定感度を示した。血漿サンプルを用いた予備検討において、検体採取法、希釈率、反応量等に関する条件設定を行い、定量性に問題がないことを確認した。
チオール基の修飾と電気泳動法を組み合わせた手法により、チオレドキシン、およびその関連分子の酸化還元状態の検出法を確立した。N-エチルマレイミド、4-acetamido-4- maleimidyl-stilbene-2,2-disulfonate (AMS)、PEGマレイミド等のチオール修飾試薬を用い、酸化型および還元型チオレドキシンタンパク質の判別に成功した。また生細胞におけるタンパク質のレドックス状態について、同様の手法により解析を行った。活性酸素によるタンパク質の酸化的ダメージの検出に加えて、小胞体へのタンパク質の蓄積を伴うストレス条件下において、小胞体内レドックス関連分子が還元型から酸化型へ変換されることを見出した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チオレドキシンの体内レベルについては、主にELISA法による測定が行われ、文献的なデータの蓄積がなされてきた。今回新たなチオレドキシンの迅速測定法が確立され、オンサイトでの測定や短期間における時間変動の解析など、チオレドキシンのストレスマーカーとしての有効性に関する研究の進展が期待される。また炎症等のストレス環境下においては、レドックスバランスの撹乱が原因となり、代謝異常や細胞死など病態増悪につながることが知られている。本年度は精製タンパク質および生細胞を用い、細胞内レドックホメオスタシスについて、タンパク質のレドックス状態の変化、活性酸素の発生、低分子抗酸化物質の変動などの観点から包括的な解析を行った。本成果をもとに、細胞内代謝、シグナル伝達等の観点からさらに解析を進め、高度侵襲がもたらす生体ストレスと体内レドックス環境維持との関連について明らかにしたい。
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| Strategy for Future Research Activity |
臨床検体を用いてチオレドキシンレベルの変動を測定する。他の炎症パラメータ（CRP、プロカルシトニン等）との比較、病態進展度や予後との関連解析により、周術期におけるチオレドキシンの動態把握、ストレス指標としての適性調査を行う。
侵襲による炎症応答を反映する実験モデルにおいて、チオレドキシンおよびレドックス関連分子による代謝・シグナル伝達の制御機構の詳細を明らかにする。
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| Causes of Carryover |
配備済みの機器等を使用するなど必要に応じて無駄のない研究費の執行に努めたため、当初の見込み額と当年度の執行額に差額が生じた。また海外渡航費の執行を取りやめたため未使用額が生じた。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に大きな変更は無く、当初の計画通りに研究を遂行し、前年度分も含めて適切な研究費の使用に努める。
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