2016 Fiscal Year Research-status Report
新規ドセタキセル結合タンパクの前立腺癌におけるタキサン系抗癌剤耐性獲得機序の解明
Project/Area Number |
16K11032
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Research Institution | Meiji University of Integrative Medicine |
Principal Investigator |
高羽 夏樹 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 准教授 (80294081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
納谷 佳男 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (80639881)
浮村 理 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70275220)
上田 紗弥 (伊藤紗弥) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90534511)
本郷 文弥 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80291798)
藤原 敦子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20457980)
邵 仁哲 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (40305587)
上田 崇 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (50601598)
大石 正勝 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (90405316)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タキサン / ドセタキセル / 前立腺癌 / 抗癌剤耐性 / 薬剤結合タンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、先行研究(平成24年-26年度科研費 基盤研究(C) 課題番号:24592405)において我々がケミカルバイオロジーの手法を用いて同定したドセタキセル結合タンパクの前立腺癌における抗癌剤耐性獲得機序の分子生物学的解明を試みる。先行研究で用いた、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株DU145の親株(ドセタキセル感受性株)と、親株から確立した2種類のドセタキセル耐性株を用いる。 先行研究において、ドセタキセル結合タンパクとして同定したbasonuclin 1 (BNC1)のmRNA発現量はドセタキセル耐性株において感受性株の約20%に低下していることを明らかにしている。本年度の研究では、ドセタキセル感受性株におけるBNC1の発現を低下させることで、ドセタキセル感受性が低下するかを以下の通り検討した。先行研究終了後に凍結保存していた上記3種類の細胞株の細胞培養を開始し細胞の状態が安定した後、ドセタキセル感受性株を用いて2種類のsiRNAによるBNC1発現抑制実験を行った。siRNA添加72時間後のBNC1 mRNA発現量を定量RT-PCRで検討したところ、両方のsiRNAともcontrol siRNAに比べ約20%までBNC1 mRNA発現量を低下させることを確認した。次に、siRNAでドセタキセル感受性株を72時間処理しBNC1の発現を抑制した後に細胞を継代し、その24時間後に種々の濃度のドセタキセルを添加し細胞増殖アッセイを行った。ドセタキセル感受性株をBNC1特異的siRNAで処理した場合、control siRNAで処理した場合に比べ、高濃度ドセタキセル存在下での細胞増殖が高く、ドセタキセルに対する感受性が低下していた。以上より、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株DU145においてBNC1の発現低下がドセタキセル耐性獲得に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
長期凍結保存していた3種類の細胞株を安定した状態にするための細胞培養およびsiRNAによるBNC1発現抑制実験・ドセタキセル感受性評価のための細胞増殖アッセイの条件決めに予想以上に長い時間を要したため、予定した実験の一部が施行できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
BNC1の発現低下がドセタキセル感受性低下をきたす分子生物学的機序を明らかにするため、BNC1特異的siRNAで処理したDU145ドセタキセル感受性株およびDU145ドセタキセル耐性株のドセタキセル存在下での細胞周期解析・アポトーシス関連分子の発現状態の評価(フローサイトメトリー、ウエスタンブロットなど)を行う。同様の実験をカバジタキセル存在下にも行い、BNC1発現低下がカバジタキセル感受性にも関連するかを評価する。 BNC1はzinc finger proteinであることから、転写因子としてドセタキセル感受性調節タンパクの発現を制御していることも推測される。一方で我々のこれまでの研究結果よりBNC1にはドセタキセルが結合することが示唆されている。BNC1が特異的に結合する塩基配列をプロモーターとして組み込んだベクターを前立腺癌細胞株DU145の耐性株に導入しCAT assayを行う。ドセタキセル存在下に転写活性が変化するかを評価することで、ドセタキセルの結合によるBNC1転写活性への影響を評価する。 BNC1とは別に、我々がドセタキセル結合タンパクとして精製・同定した40S-ribosomal protein S18および16S-ribosomal proteinの発現を定量RT-PCR、ウエスタンブロットで評価する。前立腺癌細胞株DU145のドセタキセル感受性株と耐性株における発現を比較し、ドセタキセル感受性との関連が示唆された場合は、siRNAによる発現抑制を行ったうえで細胞増殖アッセイを行いドセタキセル感受性への影響を評価する。
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Causes of Carryover |
長期凍結保存していた3種類の細胞株を安定した状態にするための細胞培養およびsiRNAによるBNC1発現抑制実験・ドセタキセル感受性評価のための細胞増殖アッセイの条件決めに予想以上に長い時間を要したことより、本年度に予定していた実験の一部が施行できなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に予定していた実験(siRNAによるBNC1発現抑制状態における細胞周期解析・アポトーシス関連分子の発現状態評価およびドセタキセル結合リボソームタンパクの発現量解析)と来年度に予定している実験(BNC1が特異的に結合する塩基配列をプロモーターとして組み込んだベクターを用いたCAT assayおよびsiRNAによるリボソームタンパク発現抑制下のドセタキセル感受性評価)に必要な試薬、siRNA、細胞培養用培養液、消耗品(培養用プラスチック製品など)の費用として物品費 130万円を、学会発表の費用(旅費、印刷費など)として20万円を予定している。
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