2016 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーを介した妊娠高血圧症候群のメタボローム解析と予知因子の同定
Project/Area Number |
16K11096
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
西田 欣広 大分大学, 医学部, 准教授 (10336274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花田 俊勝 大分大学, 医学部, 教授 (10363350)
酒井 久美子 大分大学, 医学部, 助教 (60225753)
花田 克浩 大分大学, 医学部, 助教 (90581009)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 妊娠高血圧症候群 / オートファジー / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠高血圧症候群(PIH)は妊娠中の高血圧、蛋白尿をきたす最大の周産期合併症であるにもかかわらず、その病態も複雑かつ要因も多岐にわたりいまだに全貌が明らかになっていない。妊娠高血圧症候群の胎盤では低酸素、低栄養、老化が進んでいると考えられ、今回の研究では、ほとんど研究報告のない胎盤におけるオートファジーとそのメタボローム解析に焦点をあてた。これまでに行ってきた胎盤や培養細胞での研究成果をもとに、主としてシャペロン介在性オートファジー機構を細胞生物学的手法、免疫染色法を駆使し解明する。またmRNA arrayよりautophagy pathwayからみた胎盤の細胞内における蛋白の変動と、その一次代謝物をメタボローム解析でより詳細にかつ包括的に細胞内動態をダイナミックに分析し、病態の本体にアプローチしている。 これまでに我々が行った研究で、PIHでは過剰なBAG3-HSPB8 complexが誘導され、また最終段階のLC3-IIの発現がみられ、PIHの胎盤ではシャペロンを介したオートファジーが誘導されていることを確認した。さらに胎盤のメタボローム解析により、測定可能475代謝物中372代謝物 (78.3%)が同定された。Partial Least Squares判別分析法で正常と異常(PIH)胎盤は2群に識別可能であった。PIHの胎盤では372代謝産物中9代謝物がそれぞれ有意に増加(p<0.05)、1代謝物が有意に減少していた(p<0.05)。この代謝産物の解析により新たにPIHの胎盤ではペントースリン酸経路が活性化していることを明らかにした。さらにその上流経路としてKeap1、Nrf2因子の発現をwestern blottingおよび免疫組織学的に核内への移行を確認し、新しい代謝経路の知見を多く発見している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに我々が行った研究で、PIHでは過剰なBAG3-HSPB8 complexが誘導され、また最終段階のLC3-IIの発現がみられ、PIHの胎盤ではシャペロンを介したオートファジーが誘導されていることを確認した。また、HUVEC(臍帯静脈血管内皮細胞)の低酸素誘導実験におけるwestern blotting、細胞免疫染色(BAG3,HSPB8,DAPIの三重染色)でもBAG3、HSPB8の発現を確認し、胎盤におけるオートファジーの関与を証明できた。さらに胎盤のメタボローム解析により、測定可能475代謝物中372代謝物 (78.3%)が同定された。Partial Least Squares判別分析法で正常と異常(PIH)胎盤は2群に識別可能であった。PIHの胎盤では372代謝産物中9代謝物がそれぞれ有意に増加(p<0.05)、1代謝物が有意に減少していた(p<0.05)。この代謝産物の解析により新たにPIHの胎盤ではペントースリン酸経路が活性化していることを明らかにした。さらにその上流経路としてKeap1、Nrf2因子の発現をwestern blottingおよび免疫組織学的に核内への移行を確認し、新しい代謝経路の知見を多く発見している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのメタボローム解析によりPIHの胎盤ではペントースリン酸経路が活性化していることが明らかになり、mRNA microarrayを含めた詳細な検討によりG6PDを介したKeap1-Nrf2 systemにより制御されている可能性が初めて示された。ペントースリン酸経路は胎盤において核酸産生とともに NADPHを生成し、抗酸化作用を増強することで酸化ストレス耐性化に関与していることが示唆されているため、今年度以降はさらに症例を重ね、詳細な胎盤における詳細な酸化ストレスに関与する代謝機構を明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた、胎盤組織サンプルを用いてmRNA array解析(外注委託)を行う予定にしていた予算であるが症例数が足りなかったので、次年度に解析を行うことにしている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
胎盤組織のmRNA array検査は1検体当たり約10万円を計上しており、検体数は10検体(正常組織5検体、異常組織5検体)を研究計画として予定している。次年度にこの予算にて研究を遂行していく。その他残り予算は組織採取、調整に関する試薬等に使用予定である。
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