2016 Fiscal Year Research-status Report
Velocity Vector Imagingを用いた胎児異常における心機能解析
Project/Area Number |
16K11102
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
菊池 昭彦 岩手医科大学, 医学部, 教授 (10280942)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スペックルトラッキング / Velocity vector imaging / 胎児心臓壁運動解析 / 胎児心機能 / 胎児異常 / 胎児発育不全 / 胎児先天性心疾患 / 双胎間輸血症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年6月から平成29年3月まで、正常単胎胎児群(コントロール;C群)31例、胎児異常群29例(胎児発育不全;FGR群8例、胎児心疾患;CHD群7例、双胎間輸血症候群;TTTS群1例、TTTS発症なし双胎;non-TTTS群13例)のエントリーを行なった。すべて当院産婦人科で妊娠管理を行っている妊婦であり、超音波診断装置ACUSON S2000 (Mochida Siemens Medical Systems)を用いて、研究計画に基づき胎児心臓超音波検査を行った。それぞれの症例において、妊娠14週以降より2週間毎に検査を行い記録した。のべ超音波試行回数は、C群207回、胎児異常群144回であった。 C群について行った解析結果は下記の通りである。 1.systolic global longitudinal peak velocity (sGLPV):妊娠週数の進行に伴い増加する。また、妊娠週数によらず常に右室が優位であり、妊娠後期に向けて左室GLPVが右室GLPVに近づく。 2.diastolic global longitudinal peak velocity (dGLPV):妊娠週数の進行に伴い増加する。妊娠週数によらず常に右室が優位である。 3.心室中隔及び自由壁における各セグメントのvelocity比較では、全心収縮周期において右室・左室ともに自由壁基部で最も大きく、中隔側心尖部で最も低い値を示した。 以上の結果は既存の研究報告と同様であり、コントロールとして矛盾しない結果が得られた。超音波スペックトラッキング法を用いた、正常単胎胎児心臓に関する解析パラメータの基準値は今のところ確立されていないが、本研究結果は基準値を確定するために重要な意義を持つと考えられる。さらに、この基準を用いて胎児異常群と比較することが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C群、胎児異常群ともに、概ね当初見込んでいた症例数をエントリーをすることが出来た。また、概ね計画通り2週間毎の記録が可能であった。C群に関して行った解析結果は、コントロールとして矛盾しない結果となった。 C群の結果より、妊娠初期;first、中期;second、後期;third trimesterそれぞれにおける胎児心臓に関する解析パラメータの基準値を算出することができる。これより今後、胎児異常群と比較することが可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.胎児異常群の症例数と超音波試行回数を増やす。胎児異常群は、症例によってはその異常が発見される前である妊娠初期(first trimester)にエントリーすることが困難であるため、症例の収集に時間を要す。平成29年度もエントリーを継続して行う。 2.C群、胎児異常群ともにデータ解析を進める。本研究は、C群、胎児異常群ともに同一胎児における週数毎の心臓壁運動変化を解析する。同一胎児における経時的解析は今まで報告がなく、本研究の意義として重要である。 3.超音波画像をフレームレート80 Hz以上で記録するため、心房が不鮮明となってしまう場合があり、心房の解析が困難な画像がある。心房の解析については、解析可能な画像を検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
今年度の当初の計画では、英文校閲のために人件費・謝金を200000円、論文投稿と論文校正のためにその他100000円を予定していたが、今年度の症例集積数ではまだ英文論文作成には不十分であると判断したためにこれらの経費が未使用となったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には研究成果を適宜学会で発表するための旅費使用が増加する予定である。また成果をまとめた本格的な英文原著論文は最終年度に作成予定であるが、次年度には本研究に基づく英文症例報告作成などに使用していく予定である。
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