2016 Fiscal Year Research-status Report
ケロイド肥厚性瘢痕における微小血管の関与―内皮由来因子に着目する
Project/Area Number |
16K11364
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
細川 亙 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20181498)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 盾貴 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00362707)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エンドセリン1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケロイド・肥厚性瘢痕の形成メカニズムにおける微小血管の関与について、血管内皮由来因子、その中でも特にエンドセリン1(ET-1)に着目して研究を行っている。 われわれが行った過去の免疫組織学的検討によると、ケロイド組織においては正常皮膚組織よりも真皮血管内皮におけるET-1の発現が強い傾向を認めていた。そこで、それをさらに詳しく検討するため、正常皮膚・成熟瘢痕・肥厚性瘢痕・ケロイドの組織を各6例ずつ解析した。ポジティブコントロールとしては全身性強皮症の病変組織を用いた。その結果、肥厚性瘢痕とケロイド組織では正常皮膚や成熟瘢痕組織と比較して、真皮血管内皮におけるET-1の発現が統計的有意差をもって強く発現していることが判明した。 正常培養皮膚線維芽細胞にET-1を加えると、細胞骨格制御因子の1つであるRhoAが活性化することをプルダウンアッセイにて確認した。また、ウエスタンブロッティングを用いた解析の結果、ET-1刺激により筋線維芽細胞への分化を示すα-SMAの発現も増加し、ET-1と同時にET受容体拮抗薬のBosentan やRho-kinase阻害剤のY27632を投与すると、ET-1によるα-SMAの発現増加は見られなくなった。同様の結果が、Ⅰ型コラーゲンの発現についても確認された。さらに、創収縮のin vitroモデルと考えられているコラーゲンゲル収縮アッセイにても同様の結果が確認された。以上の結果から、皮膚線維芽細胞はET受容体を介してET-1により筋線維芽細胞への分化やコラーゲン産生が促進されること、そのシグナル伝達経路にRhoAが関与することが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、本年度に予定していた、筋線維芽細胞への分化能やⅠ型コラーゲンなどの細胞外マトリックス産生能、創収縮モデルによる評価などについて、おおむね予定通りに施行できたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ET-1発現上昇の原因について血管内皮への機械的伸展刺激による可能性を検討したい。また、現在は内皮由来収縮因子としてET-1に着目しているが、今後は逆に内皮由来弛緩因子としてプロスタサイクリンの関与についても検討を行ってみたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
物品購入には別の財源から充当したため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は、ET-1発現上昇の原因について血管内皮への機械的伸展刺激による可能性を検討すべく、実験を行っていく。また、現在は内皮由来収縮因子としてET-1に着目しているが、今後は逆に内皮由来弛緩因子としてプロスタサイクリンの関与についても検討を行う予定である。
|