2016 Fiscal Year Research-status Report
DIC病態における炎症と凝固のクロストークと血管作動性物質の役割
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16K11396
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
朝倉 英策 金沢大学, 附属病院, 准教授 (60192936)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | DIC |
Outline of Annual Research Achievements |
播種性血管内凝固症候群(DIC)の本態は、基礎疾患の存在下における著しい凝固活性化と微小血栓多発であり、予後改善のためには適切な診断基準の作成と病態に応じた治療介入が必要である。DICモデルを用いた我々の検討では、充分な抗凝固療法を行っても、特に炎症の強い病態では臓器障害やサイトカイン発現を伴うDICの進展は不可逆的であり、凝固活性化以外の要素が病態に深く関与していると考えられる。血管作動性物質は、DICの循環動態に影響を与える可能性が高いが、その意義はほとんど検討されてこなかった。今回、DICモデルでの血管作動性物質の発現機序を解明し、内皮障害、微小血栓形成、臓器障害との関連を検討する。 DICは、敗血症(LPS誘発モデル)型のDICに代表されるように臓器障害が前面に出る線溶抑制型DIC、急性白血病(組織因子誘発モデル)型に代表されるように出血症状が前面に出る線溶亢進型DIC、その中間の線溶均衡型DICに分類される。これら病態の差違にもかかわらず、画一的に診断されてきた。また、DICの本態である凝固活性化を反映するマーカーが診断基準に組込まれてこなかった。これらの点を改善し、適切に診断する能力を有したDIC基準を作成して、英文論文での発表を行った。 DIC診断におけるFDPやD-ダイマーの測定意義は大きいが、両者測定の意義については十分な議論が行われてこなかった。両マーカー測定の意義とともに、これらのマーカーでのみ病態評価を行うことの限界についてシンポジウムなどでの発表を行った。 大動脈瘤に起因するDICは炎症の関与が少ない一方で、時に大出血をきたす。また慢性に経過するために持続点滴治療は患者負担が大きい。ワルファリンはDICの病態を悪化させるのに対して、直接経口抗凝固薬はDIC病態を劇的に改善することを見出し、英文論文化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DICの病型分類は、DICの病態解析、診断、治療法の開発などDIC研究の根幹に関わる極めて重要な概念である。線溶亢進~線溶均衡型DIC(組織因子誘発モデルに類似した病態)、線溶抑制型DIC(LPS誘発モデルに類似した病態)といったDICの病型分類は我々が世界で最初に提唱した考え方であるが、国際的に共有された概念とまでは言い難かった。この度、このDIC病型分類の重要性を詳細に記述して英文論文化した。また、違った病態を有するにもかかわらず画一的な診断が行われてきたこれまでの矛盾を指摘して、この矛盾を解消すべく新しい診断基準の作成を行いその検証作業も行った。なお、この作業は内科のみならず、小児科、産婦人科、外科、救急医学、臨床検査医学など多くの領域における専門家の間での議論を繰り返して成し遂げられた。この新しい診断基準が今後浸透することで、DICの臨床、研究レベルの向上が期待される。新しいDIC診断基準の英文論文化は大きな一歩であったと言えよう。 DIC診断の上で大きな比重をしめる血液凝固検査の意義およびその限界に関して、数々の学会学術集会での発表を行うとともに、総説論文や著書を通しても積極的に啓蒙活動を行った。 大動脈瘤は、線溶亢進型DICを併発することで知られており、時に出血症状が問題となる。我々はこれまでも大動脈瘤の進展にアネキシンIIの関与があることを報告してきた。また、大動脈瘤に起因するDICは慢性に経過するのが特徴であり、経口薬でのコントロールが可能であれば理想的である。ワルファリンは伝統的に用いられてきた経口抗凝固薬であり、専門家の間でもDICに対して有効ではないかと考える者もいた。今回我々は、ワルファリンはDICに対して全く無効であるどころかむしろ病態を悪化させるのに対して、直接経口抗凝固薬は速やかにDIC病態を改善させるという新知見を得たために英文論文化した。
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Strategy for Future Research Activity |
DICモデルの作成:ラットを使用し、DIC惹起物質であるLPSまたは組織因子を尾静脈より持続点滴し、DICモデルを作成する。DIC惹起物質投与前、投与中、投与後における血小板数、フィブリノゲン、PT、D-ダイマー、アンチトロンビン(AT)、TAT、PAIによりDICの発症、病型(線溶抑制型DICまたは線溶亢進型DICのモデルであるか)を確認する。 LPS誘発DICモデルとTF誘発DICモデルの病態比較検討:両DICモデルにおいて、凝固線溶動態のみでなく、血管作動性物質(エンドセリンETおよび一酸化窒素NO)の動態観察、ETおよびNOの発現臓器を同定することにより両DICモデルにおける血管作動性物質のDIC病態への関与・役割を考察する。 DICにおけるNO産生に関与するNOSアイソザイムの同定:両DICモデルの臓器におけるiNOS-mRNA、eNOS-mRNAの発現程度を評価することにより、NO産生に関与するNOSアイソザイムを同定する。我々の予備実験により、LPS誘発DICモデルと組織因子誘発DICモデルのいずれにおいても血中NOXは著増するが、LPS誘発DICモデルではiNOS-mRNA発現が著増しているのに対し、組織因子誘発DICモデルではiNOS-mRNAの発現はなく、他のNOSアイソザイムがNO産生に関与しているらしいことを観察中であるが、アイソザイムの同定には至っていない。 各種NOSインヒビター投与によるNO産生への影響:両DICモデルに対するアイソザイム特異的NOSインヒビターの投与に伴うNO産生への影響を観察することにより、NO産生に関与するNOSアイソザイムを確認可能である。また、特異的NOSインヒビターの投与に伴う、凝固線溶病態、微小血栓形成、臓器障害、血行動態への影響を評価することにより、両DICモデルにおけるNOの役割を明らかにする。
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Research Products
(32 results)
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[Journal Article] Causative genetic mutations for antithrombin deficiency and their clinical background among Japanese patients2017
Author(s)
Sekiya A, Taniguchi F, Yamaguchi D, Kamijima S, Kaneko S, Katsu S, Hanamura M, Takata M, Nakano H, Asakura H, Ohtake S, Morishita E
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Journal Title
Int J Hematol
Volume: 105
Pages: 287-294
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Gene analysis of six cases of congenital protein S deficiency and functional analysis of protein S mutations (A139V, C449F, R451Q, C475F, A525V and D599TfsTer13)2017
Author(s)
Taniguchi F, Morishita E, Sekiya A, Nomoto H, Katsu S, Kaneko S, Asakura H, Ohtake S
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Journal Title
Thromb Res
Volume: 151
Pages: 8-16
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] The valuable diagnosis of DIC and pre-DIC and prediction of a poor outcome by the evaluation of diagnostic criteria for DIC in patients with hematopoietic injury established by the Japanese Society of Thrombosis and Hemostasis2017
Author(s)
Aota T, Wada H, Fujimoto N, Sugimoto K, Yamashita Y, Matsumoto T, Ohishi K, Suzuki K, Imai H, Kawasugi K, Madoiwa S, Asakura H, Katayama N.
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Journal Title
Thromb Res
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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