2017 Fiscal Year Research-status Report
脂肪組織由来幹細胞の抗炎症作用による創傷治癒促進に関する基礎的研究
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16K11677
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
倉林 くみ子 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (40586757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 夕子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50466744)
疋田 温彦 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60443397)
米永 一理 東京大学, 医学部附属病院, 届出診療員 (60756774)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂肪由来幹細胞 / 難治性潰瘍 / ハイドロゲル / デリバリーシステム / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘膜炎、潰瘍は、要因除去、洗浄、軟膏塗布などによる治療で多くは治癒するが、一部では慢性炎症、難治性潰瘍として長期化する。創傷を早期に治癒に導く低侵襲の治療法を開発することは喫緊の課題である。近年、脂肪由来幹細胞(ASC)が抗炎症作用、治癒促進作用を有することが報告され、が注目されている。ASCが創傷治癒過程において、成長因子やサイトカインを分泌することが報告され、それらの相互作用により、組織修復や抗炎症作用などの重要な役割を果たしていることが示唆されているが、その作用機序などは依然明確になっていない。そこで、これまで報告されてきたASCの機能を基に、治癒不全糖尿病マウスを用いて創傷モデルを作製し、ASCの抗炎症効果ならびに創傷治癒過程における治癒機転促進の機序を検証している。また、ASCを用いた細胞療法による創傷治癒効果が期待できるとすれば、具体的には、いかにASCを患部に有効に滞留させ、サイトカインを有効に徐放させるかという事が大きな課題となる。適切な組織分化を期待する治療にも関わらず、細胞が本来目的とする組織に留まらないばかりでなく、多部位を標的とするようになってしまう事は回避しなければならない。申請者らは過去の研究でハイドロゲルと成長因子の組み合わせによる徐放効果を利用した体細胞増殖法を確立している。これを応用しハイドロゲルを用いたサイトカインのデリバリーシステムを構築することが本研究の目的である。 具体的には以下の研究をに行う。①in vitroにおけるASCの純化・培養法の確立および特性評価②モデルマウスを用いた皮膚創傷モデルの作製③皮膚創傷モデルマウスにおけるASCの抗炎症作用の検証と創傷治癒メカニズムの探求④皮膚創傷モデルマウスにおけるASCのデリバリーの違いによる創傷治癒効果の比較検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までにin vitroにおけるASCの純化・培養法を確立し、皮膚創傷モデルマウスにおけるASCの抗炎症作用の検証と創傷治癒メカニズムの探求した。 これらの検討した方法を用いてGFP標識C57BL/6JマウスからASCを採取し、ASC懸濁液(1.0x106~8 cells/mL)を皮膚欠損に対して塗布し、フィルムドレッシングを貼付する。ASC塗布後4, 7, 10, 14日後、創閉鎖時、創閉鎖後1週間、1か月でのASCの生着状態および創傷治癒過程におけるASCの作用を二光子顕微鏡によって、ASCをGFPで、コラーゲン線維を第2次高調波発生で観察し、ASCの分布とSHGシグナルの分布の関連の検討を行っている。その後、マウスを犠牲死させたのち、創部の形態、創幅の計測、新生上皮長の計測(上皮化)をおこない、ASCの局在、炎症性細胞および線維芽細胞の浸潤を組織学的、免疫組織学的に評価。また、組織よりmRNAおよび蛋白質を採取し、炎症反応の指標であるIL1b, IL2, IL6, IL8, TNFa, MMP2, MMP8, MMP9、また肉芽形成・収縮の指標であるCOL1a1, TGFb, SMA(ACTA2)、さらに上皮化の指標であるLAMA5, FN1, COL4a2をリアルタイムRT-PCR、western blottingによって生化学的に評価をおこなうshRNAにより発現抑制されたASCを用いて比較検討することで、ASCが創傷治癒に関与することを実証するとともに、創傷治癒の各過程におけるASCが分泌する治癒促進に効果的な因子の同定し、ASCによる治癒作用機序検証している。
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Strategy for Future Research Activity |
皮膚創傷モデルマウスにおけるASCのデリバリーの違いによる創傷治癒効果の比較検証する。これまでに検証したASCの創傷治癒過程における作用機序を基に、ASCの至適投与数、投与のタイミングを確立する。実際の臨床の場において、特に口腔内に広範に症状を呈す難治性口内炎に対して、フィルムでドレスし続けることが困難であるため、ASCを創部に一定時間保持でき、創傷治癒に促進的に働く因子を徐放させることで効率的に治癒させる必要がある。そこで、これまでいくつかの報告がなされ、実績のあるヒアルロン1.0x106~8 cells/mLの酸、アテロコラーゲン、PuraMatrixといったデリバリー剤に注目し、これらにASCを混和させることによって、創部への作用・効果を比較検証するとともに、最適なデリバリー剤を決定する。コントロール群として、テガダーム(3M)既成の創傷被覆材を用いる。 GFP標識C57BL/6Jマウス由来ASCおよびASCの抗炎症サイトカインを各デリバリー剤と混和したのち、創部に塗布する。ASC塗布後のASCの生着・生存状態および創傷治癒過程におけるASCの作用を2光子顕微鏡によって、組織形態学的に評価をおこなう。その後、マウスを犠牲死させたのち、創部の形態、創幅の計測、新生上皮長の計測をおこない、ASCの局在、炎症性細胞および線維芽細胞の浸潤を組織学的、免疫組織学的に評価する。また、組織よりmRNAおよび蛋白質を採取し、炎症反応の指標であるIL1b, IL2, IL6, IL8, TNFa, MMP2, MMP8, MMP9、また肉芽形成・収縮の指標であるCOL1a1, TGFb, SMA、さらに上皮化の指標であるLAMA5, FN1, COL4a2をリアルタイムRT-PCR、western blottingによって生化学的に評価をおこなう。
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Causes of Carryover |
二光顕微鏡等の実験は研究日などを利用して他施設にて機器を利用する必要があったため当初の計画と比較して実験の進捗状況が次年度に繰り越すことになった。
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