2018 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原細菌によるマスト細胞のIL-31を基軸とした歯肉上皮バリア破綻機序の解明
Project/Area Number |
16K11824
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
多田 浩之 東北大学, 歯学研究科, 講師 (70431632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 貴志 東北大学, 歯学研究科, 助教 (50641875)
松下 健二 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 口腔疾患研究部, 部長 (90253898)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 慢性歯周炎 / マスト細胞 / 歯周病原細菌 / Interleukin-31 / バリア破綻 |
Outline of Annual Research Achievements |
Interleukin-31 (IL-31)はTh2細胞やマスト細胞から産生される炎症性サイトカインであり、粘膜組織における炎症誘導に関わる。慢性歯周炎の罹患者における炎症歯肉組織ではマスト細胞が集積することが明らかにされており、歯周炎が重篤になるにつれ集積するマスト細胞は増加する。しかしながら、歯周炎の病態形成におけるマスト細胞の役割についてはほとんどが明らかにされていない。 本研究は慢性歯周炎の病原細菌Porphyromonas gingivalis感染によるヒトマスト細胞からのIL-31誘導とIL-31による歯肉上皮バリアの破綻作用について検討を行った。マウス口腔にP. gingivalisを感染させる歯周炎モデルを用いたところ、P. gingivalis感染により野生型マウス歯肉におけるIL-31 mRNA発現は亢進したのに対して、マスト細胞欠損マウスではP. gingivalis感染による歯肉IL-31発現の変化はみられなかった。実際に、ヒトマスト細胞にP. gingivalisの感染させると著明なIL-31産生がみられ、同作用はP. gingivalisが分泌するシステインプロテアーゼであるジンジパインを欠損する菌株の感染ではみられなかったことから、マスト細胞はジンジパインの刺激でIL-31を産生することが示された。そこで、IL-31が 歯肉上皮バリアを破綻させる可能性について、上皮バリアを構成するタイトジャンクション分子であるclaudin-1発現を測定した。ヒト歯肉上皮細胞にP. gingivalisを感染させると歯肉上皮細胞のclaudin-1発現が亢進するが、マスト細胞ならびにリコンビナントIL-31存在下ではclaudin-1発現亢進作用が抑制されたことから、IL-31はclaudin-1発現を抑制させることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究計画に基づき実験を実施した結果、次の研究成果を得た。P. gingivalis感染によりマスト細胞から産生されたIL-31が歯肉上皮バリア機能を低下させる可能性について、上皮細胞間のデキストラン透過量をバリア機能の指標として検討した。ヒト歯肉上皮細胞にP. gingivalisを感染させると、歯肉上皮細胞を透過するFITC標識デキストラン量に変化はみられなかった。しかしながら、同培養系にヒトマスト細胞存在するとデキストラン透過量は増加したことから、P. gingivalis感染によりマスト細胞から産生されるIL-31が歯肉上皮バリア機能を破綻させた可能性が推測された。そこで、P. gingivalis、マスト細胞および歯肉上皮細胞を含む培養系に抗ヒトIL-31中和抗体を添加すると、デキストラン透過量の増加は消失したことから、マスト細胞が産生するIL-31は歯肉上皮バリア機能を破綻させたことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
P. gingivalis感染によるヒトマスト細胞を基軸とした歯肉上皮バリア機能の破綻作用について、マスト細胞由来IL-31あるいは他のマスト細胞由来因子が、ヒト歯肉上皮細胞に発現するタイトジャンクション分子の発現を修飾する可能性について、claudin, zonula occludinならびにoccludin分子発現への影響を検討する。他方、マスト細胞は好中球と同様に重篤な感染に暴露された際、DNAを始めとする細胞内容物から構成される細胞外トラップ(mast cell extracellular traps, MCETs)を産生することが示されている。好中球における細胞外トラップは感染防御を担う一方、過剰な細胞外トラップの産生は炎症を誘導することが示唆されている。そこで、P. gingivalisならびに各種歯周病原細菌の感染によるヒトマスト細胞からのMCETs産生誘導機序、ならびにMCETsの機能について感染防御作用と炎症誘導作用の両面から検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画が効率的に進捗した結果、直接経費を節約できたため歯周病原細菌の感染によりマスト細胞が細胞外トラップ(MCET)を産生する可能性について追加実験を行った。その結果、当初の予測と異なり、歯周病原細菌によりマ スト細胞から産生されたMCETはマクロファージに炎症を誘導するとの新たな知見を得た。同知見を含めた論文作成に関 する実験の精緻な検討が必要となった為、補助事業期間を延長する必要がある。
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