2017 Fiscal Year Research-status Report
感染症患者の人権を守るための看護師の倫理的行動に関する研究
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16K11916
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
福井 幸子 青森県立保健大学, 健康科学部, 准教授 (00325911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 香代子 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 教授 (00344599)
矢野 久子 名古屋市立大学, 看護学部, 教授 (00230285)
安岡 砂織 東邦大学, 看護学部, 准教授 (80459817)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 看護師 / 倫理的行動 / 感染症患者 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に実施したインタビュー調査に引き続き、3名のB型肝炎で療養経験のある成人にインタビューを実施した。対象者の居住地は、2名が関西地方、1名は北海道で、年齢はいずれも50歳代であった。計10件の逐語録を意味のある一つの情報ごとに区分した結果、コードは877個に及び、全てのコードをマッピングしてカテゴリー化した。 「HBVキャリア患者が医療機関で受けたポジティブな経験」では、23サブカテゴリー、7カテゴリー、3コアカテゴリーが抽出され、半数である5名以上から抽出されたサブカテゴリーは、<丁寧に説明をしてくれる>、<励ましてくれる>、<不必要な区別はない>、<標準予防策で加害者にならなくて済む>で、カテゴリーは『納得できる説明』、『親身なサポート』、『差別されない』、『病院の感染対策で不安がない』、コアカテゴリーは【適切な医療が受けられた】、【医療の場で人として尊重される】、【自分が加害者にならずに済む】であった。 「HBVキャリア患者が医療機関で受けたネガティブな経験」では、42サブカテゴリー、7カテゴリー、2コアカテゴリーが抽出され、5名以上から抽出されたのは、<診療が間違っていた>、<食器を区別されて不快だった>、<理不尽な対応をされた>、<医師の病状説明で不安になった>、<病気の詳しい説明がなかった>、<説明はあったが理解できなかった>、<日常生活の詳しい説明はなかった>、<院内で感染させる不安があった>で、『診療に対して不満があった』、『管理システム上の区別が不快だった』、『医療従事者から配慮のない言動があった』、『説明でショックを受けた』、『病気について理解できなかった』、『感染させる不安があった』、【医療に対して不満があった】、【病気に対して不安があった】であった。 他にも「HBVキャリアによる影響」「医療機関に期待すること」についてカテゴリー分類した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、差別や偏見を受けやすい感染症患者の人権を守るために必要な看護師の倫理的行動を明らかにする質問紙調査を予定している。 今年度、新たに得られたデータを交えた10例について、カテゴリーが対象者の発言の意図を表しているかについて、研究者間で一致するまで何度も作業を繰り返し分析したことで、より客観的に信頼性の高い内容となり、カテゴリーにも広がりがみられた。 また、質問紙調査の質問項目を作成するうえで基礎的データとなる「HBVキャリア患者が医療機関で受けたポジティブ(ネガティブ)な経験」では、今年度のインタビュー調査対象者3名から得られたコードが新規にカテゴリー化されなかったことから、飽和状態に達したと判断し、インタビュー調査を終了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、インタビュー調査結果から得られたサブカテゴリー名や先行文献等を参考に質問項目を考案し、B型肝炎患者が医療従事者に求める倫理的行動を明らかにするための全国調査を実施する。平成31年度は、感染症患者の看護に当たっている看護師を対象に倫理的行動に関する調査を実施する。
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Causes of Carryover |
前年度実施した7名のインタビュー調査結果のデータ分析を5月、8月に延べ4日間にわたり研究者間でデータ分析した後に、全国B型肝炎被害訴訟原告団からの紹介を得て9月に3例にインタビュー調査を実施し、新規カテゴリーがなく飽和状態に達したと研究者間で判断しインタビュー調査を終えることとした。しかし、HBVキャリア患者10名が語った医療従事者の倫理的行動に関連する内容を、逐語録から研究者が抽出してコード化・カテゴリー化した結果が、対象者の発言の意図を十分表しているとは言い切れず、データ抽出が恣意的になっている危険性が考えられた。そのため、より信頼性を高めるため、テーマに関連するものだけを抽出するのではなく、対象者10名が語った内容全てをコード化し、研究者間で一致をみるまでカテゴリー化した。 このように今年度はデータ分析の内容を修正し、また、研究者間で一致するまでデータ分析を実施するなど、分析に時間をかけ精度を上げて実施したため、当初予定に加えていたB型肝炎で療養経験のある成人を対象にした質問紙調査は次年度に見送った。インタビュー調査で得られたサブカテゴリーから質問紙の項目を検討し、翌年度分として請求した助成金と合わせて次年度質問紙調査を実施する。
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Research Products
(1 results)