2016 Fiscal Year Research-status Report
アロマハンドマッサージを用いた癒しケアの有する血栓症予防効果の実験科学的検証
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16K11921
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Research Institution | Mie Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
林 辰弥 三重県立看護大学, 看護学部, 教授 (00242959)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ハンドマッサージ / 組織因子経路インヒビター / 組織プラスミノゲンアクチベータ / プラスミノゲンアクチベータインヒビター / D-ダイマー |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、あらかじめローズマリーを手に擦り込んだ後の37℃(体温)の湯温を用いた足浴において、ローズマリーの血管内皮細胞に対する直接効果により、一過性ではあるが、血漿プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1濃度の低下による線溶系の促進に基づく血栓症予防効果を示唆してきた。 本研究では、これまでの研究をさらに発展させ、もっとも単純な癒しケアであるハンドマッサージ及びアロマオイルを組み合わせたハンドマッサージの血栓症予防効果、さらにはその予防効果とハンドマッサージが有するストレス軽減効果との関連性を明らかにする目的で、本年度はハンドマッサージの血栓症予防効果を明らかにした。5分、10分及び20分のキャリアオイルを用いたハンドマッサージ前後に指先穿刺による微量採血を実施し、得られた血漿中の凝固阻止因子である組織因子経路インヒビター、線溶調節因子である組織プラスミノゲンアクチベータ及びプラスミノゲンアクチベータインヒビター-1、及び血栓症のマーカーであるD-ダイマー濃度を測定した。その結果、いずれのハンドマッサージ時間についても、その前後で血漿組織因子経路インヒビター濃度及びプラスミノゲンアクチベータインヒビター-1濃度に有意な差は認められず、血漿組織プラスミノゲンアクチベータ濃度及び血漿D-ダイマー濃度は、5分間のハンドマッサージでハンドマッサージ終了20分後にハンドマッサージ前に比較して有意に低下することが明らかになった。以上の結果から、5分間という短時間のハンドマッサージにより線溶系が抑制されることが示されたが、同条件下におけるD-ダイマー生成抑制が血栓形成の抑制を示すものなのか、線溶系の抑制に起因するものなのかについては、さらに検討が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定通りキャリアオイルを用いたハンドマッサージの血栓症予防効果について、ハンドマッサージ前後に指先穿刺による微量採血を実施し、得られた血漿中の凝固調節因子、線溶調節因子及び血栓症マーカーの濃度を測定することにより検討した。その結果、キャリオイルを用いた5分から20分のハンドマッサージでは血栓症予防効果は期待できないことが示された。ストレスマーカーとして、唾液中のクロモグラニンA及びアミラーゼ活性をハンドマッサージ前後で測定することにより、個々人におけるハンドマッサージによるストレスマーカーの変動と血漿中の凝固調節因子、線溶調節因子及び血栓症マーカーの濃度の変動との関連性については現在検討中であることから、研究は概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
キャリアオイルを用いたハンドマッサージでは顕著な血栓症予防効果は認められなかったので、次年度は予定通り、ローズマリーを用いたハンドマッサージの血栓症予防効果について、ハンドマッサージ前後に採取した血漿中の凝固調節因子、線溶調節因子及び血栓症マーカー等の濃度を測定し、比較することにより検討する。
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