2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢がん患者と家族の療養移行期に関する意思決定支援の評価
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16K12080
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
森 一恵 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (10210113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 知子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 教授 (00314922)
千田 睦美 岩手県立大学, 看護学部, 准教授 (90305269)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 終末期看護 / 意思決定支援 / 高齢がん患者 / 療養生活 / 死生観 |
Outline of Annual Research Achievements |
65歳~85歳の認知症のない高齢がん患者とその同居している家族11組を対象に、治療後に「大切な人とのコミニュケーションノート」を用い、その後1~3ヶ月に再度面接を行った。治療後に予測される経過と療養場所など、今後の希望を家族と話し合った内容について半構成的面接と、パンフレットを用いた介入前と家族と話し合った後の2回POMS(短縮版)、PGCモラールスケール(高齢者)・幸福感尺度(家族)、家族との理解についてのVASによる変化についてデータ収集を行った。半構成的面接によるデータを内容分析を用いて意味内容ごとにまとめてコード化、カテゴリー化を行った。 協力の得られた高齢がん患者11名の平均年齢は74.0歳、支援している家族11名で協力の得られた家族は、配偶者が5名(平均年齢71.4歳)、子どもが4名(46.5歳)であった。 その結果、がんの今後の進行については17コード、「悪くならないと思っている」、「早期発見早期治療が有効である」、「今後のことはその都度考える」の3カテゴリーが抽出された。また、家族と話し合った内容として18コード、「家族とは話し合えない」、「今は悪くないので考えていない」、「遺産のことまで考えて準備している」の3カテゴリーが抽出された。 POMSの変化はそれぞれT得点表により、年齢、性別を修正して比較したところ、対象者・家族とも、介入前と介入後でTMD得点の平均値の変化はほとんど見られなかった。一方で、家族の幸福感尺度は下降する傾向(35.8点→32.5点)が見られた。家族の信頼感も、対象者には前後とも8点で変化は見られなかったが、家族は8.3点が7.3点に下がっていた。 今回の調査では、3施設で対象者を募集したが十分なデータ数を集めることができなかった。また、患者と家族との認識において、終末期に対する具体的な認識を得ることの影響が異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回、およそ1年半にわたって3施設で対象者のリクルートを行った。しかし、研究の目的を丁寧に説明すると、「終末期の療養生活」を準備することと、一般的な「終活」を混同させていることが多くみられた。そのため、対象者のリクルートが進まず、また、協力を得られても話の内容が「遺産相続」、「迷惑をかけたくないので家族とは話さない」などの話になることが多かった。これらのことから、対象者数を増やすための試みと、「終活」に対する一般的な高齢者の考えと「終末期の療養生活」についての認識の違いについて情報収集する必要があることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究成果から、1.高齢患者の一般的な「終末期の療養生活」についての準備状況や認識、2.それを支える家族の「終末期の療養生活」についての準備状況や認識について、文献や制度と広く調査することが必要であると考える。 また、これらの追加の調査を実施するためには、この1年間で成果を出せなければ、1年延長して研究を進める必要があると考えた。
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Causes of Carryover |
3施設で対象者のリクルートを行ったが、丁寧に研究参加の説明を行っても「終活」と「終末期の療養生活」についての意思決定の違いの理解が得られず、施設での調査が十分に進まなかった。このため、当初の計画より、調査謝礼、交通費、出張費の支出が少なく残金が生じることになった。次年度は引き続き別の追加施設での調査を行うことに加え、高齢者とその家族の「終末期の療養生活」についての準備状況と認識について調査をする計画である。この調査により、具体的にいつ頃から「終末期の療養生活」について必要な情報提供を進めていけるかを再検討する。 必要な調査を行うためには、次年度での研究の終了は難しいことが推測されるため、1年延長して研究を行う。これに伴い、再度、データベースの見直し、先行研究等について情報収集を行う。
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