2016 Fiscal Year Research-status Report
短期母乳栄養を選択したHTLV-1陽性妊産婦への訪問助産師による継続支援の開発
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16K12186
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
下敷領 須美子 神戸女子大学, 看護学部, 教授 (10315418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根路銘 安仁 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (00457657)
谷口 光代 京都学園大学, 健康医療学部, 助教 (30613806)
岡本 恵 (芝崎恵) 神戸女子大学, 看護学部, 助教 (00515546)
田村 康子 神戸女子大学, 看護学部, 准教授 (80326305)
牛越 幸子 神戸女子大学, 看護学部, 講師 (80437631)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | HTLV-1 / 母子感染 / 短期母乳栄養法 / 家庭訪問 / 断乳支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
HTLV-Iとは、ヒトT細胞白血病ウイルスI 型(human T cell leukemia virus type 1)の英語表記の略称である。全国のキャリア数は2006 ~ 07年の調査では約108万人である。HTLV-1を原因とする疾患として、成人T 細胞白血病(ATL)やHTLV-1 関連脊髄症(HAM)がある。ATLの生涯発症率は約5%、HAMの生涯発症率は0.3%程度と推定されている。 鹿児島を含む九州など南西日本にはHTLV-1キャリアが多く存在し、鹿児島県の平成26年4月~平成27年3月までの妊婦の抗体検査結果は、受診者数11,447人中、陽性者126人であり、陽性率は1.10%であった。(鹿児島県産婦人科医会に加盟する58医療機関対象に鹿児島県保健福祉部健康増進課が調査)HTLV-I 感染経路の60~70%は母乳を介した母子感染である。とくに、鹿児島県では母乳栄養の利点を活かすことができ、母乳を与えたいという母親の希望から短期母乳栄養を選択するケースが7割程度と多い。短期母乳栄養の確実な断乳までの支援については、分娩した医療機関の退院後に支援が途切れることが多く短期の断乳確認も不十分であることが確認できた。当事者の同意を得て、分娩した医療機関が県保健所・市町村保健センターに情報提供するシステムが十分機能せず、平成27年度は126件中27件と2割の情報提供に留まっていた。 今後の研究展開としては、HTLV-1陽性が確認された妊婦に助産師が研究協力依頼面接を行い承諾を得たケースに対し、家庭訪問による継続支援を実施する。その分析から、HTLV-1陽性妊産婦が栄養法を選択した過程と決定要因、退院後の母乳栄養状況、断乳準備状況、育児上の悩み、児の状態、母親の不安・困難感等を明らかにする。さらに、短期母乳栄養法の断乳成功に必要な支援内容と支援を届ける仕組みを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行政への説明、協力依頼を県、市町村レベルで数回実施し、研究協力が得られた。鹿児島県HTLV-1対策協議会においても本研究の概要が説明され、協力を得られることとなった。 医療機関への説明は、訪問助産師の決定、訪問方法、調査内容の詳細な決定後に行うこととし、必要な説明書類を作成中である。助産師会の協力により、訪問助産師の候補者を受け、研究概要の説明・研修の準備を進めている。次年度からの開始予定のHTLV-1陽性妊産婦の情報確認と研究協力依頼面談、訪問開始のフローチャートを作成し、関係機関との調整を実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
訪問助産師への研修を実施し、市町村新生児訪問との連携・情報交換を行政を含め、確認していく。訪問によって得た情報の個人情報管理が徹底されるように具体的な検討と徹底を図る。医療機関との連携については、訪問助産師、内容、方法を確定した上で、候補となる医療機関を訪問する予定。 H28年度厚生労働行政推進調査事業費補助金・成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業によるHTLV-1母子感染予防対策マニュアルがH29年4月に改訂され、母子感染予防のための乳汁選択として「原則として完全人工栄養を勧める。」と従来の人工栄養、短期母乳栄養、冷凍母乳の中から選択する方法から方針が変更された。短期母乳栄養法による母子感染予防効果のエビデンスはケース数が少なく確率されていないという見解からの変更である。母親への十分な説明をしても、母乳の利点を活かしたいと強く母乳栄養を希望する場合は母子感染率を下げるために確実に90日で断乳する必要がある。改訂版のマニュアルにも短期母乳栄養の方法が記載されているが、分娩医療機関退院後は支援を受ける機会が少なく、本研究は短期母乳栄養を確実に90日で断乳できるように家庭訪問によって助産師が支援する方法を開発するものである。短期間であっても母乳を与えることを望む母親への支援としてその意義は大きい。
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Causes of Carryover |
HTLV-1母子感染予防に関する情報の社会一般の方々への提供、本研究の紹介、進捗状況、成果を公表するためのHPの立ち上げを次年度にしたこと、訪問助産師の決定・研修が遅れたことから、訪問に必要な物品購入、研修会準備経費が次年度になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
HPの開設を行う。訪問助産師の決定・研修・打合せを進め、訪問に必要な新生児体重計等の物品の購入を行う。訪問助産師への研修、打合せ会議の開催、HTLV-1陽性が確認された妊婦への研究説明と研究協力のお願い(同意書を得る)をスタートさせ、研究対象者が出産後は訪問助産師が4回の家庭訪問を実施し、短期母乳栄養の断乳までの支援を実施する。訪問助産師の謝金・交通費、情報分析、研究成果の公表のために使用する。
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