2019 Fiscal Year Research-status Report
短期母乳栄養を選択したHTLV-1陽性妊産婦への訪問助産師による継続支援の開発
Project/Area Number |
16K12186
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
下敷領 須美子 神戸女子大学, 看護学部, 教授 (10315418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根路銘 安仁 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (00457657)
谷口 光代 京都先端科学大学, 健康医療学部, 助教 (30613806)
岡本 恵 (芝崎恵) 神戸女子大学, 看護学部, 助教 (00515546) [Withdrawn]
田村 康子 神戸女子大学, 看護学部, 准教授 (80326305)
牛越 幸子 神戸女子大学, 看護学部, 講師 (80437631)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HTLV-1 / 母子感染 / 短期母乳栄養法 / 家庭訪問 / 断乳支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウィルス1型)の感染経路は母乳を介した母子感染が最も多い。高齢化に伴いATL(成人T細胞白血病)の増加が指摘され、母子感染防止対策は急務の課題である。2010年からの全国的な総合対策により、母乳を介した母子感染対策がもっとも効果的とされ、人工栄養、短期母乳栄養、凍結母乳栄養から栄養法を選択する方針がとられた。鹿児島では母乳栄養の利点等から短期母乳栄養(3ヶ月以内に断乳)を選択するキャリアが6割程度と多かった。長期母乳栄養の場合の感染率に比較して、短期母乳栄養の感染率は低いが、調査対象数が少ないことから短期母乳栄養の母子感染予防については十分なエビデンスが確立していない状況である。2017年にはHTLV-1母子感染予防対策マニュアルが変更され、原則として完全人工栄養を勧めることになった。しかし、母乳による感染のリスクを十分に説明しても、なお、母乳を与えることを強く望む母親の存在はあり、母親の立場にたった十分な説明や意思決定の支援、さらに、3ヶ月までの短期間で母乳を断乳する支援が、母子感染防止の鍵となる。短期母乳を完遂するにはさまざまな困難があり、2割程度が完遂できていない可能性が指摘されている。本研究の目的は、助産師による継続した支援を行うことで3ヶ月以内の断乳を成功させる支援体制を開発することにある。原則完全人工栄養という方針になったことで、母乳をあげたいという母親は声をあげにくくなり、支援も得られにくくなっていることが懸念される。母乳を強く望む母親の母子感染リスクを低くするためには、母親との信頼関係に基づく継続した支援が重要である。さらに、短期母乳栄養完遂者を対象に、半構造面接調査を実施し、困難な状況であったにもかかわらずHTLV-1キャリア妊産婦が短期母乳栄養を成功させた要因についても分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「HTLV-1母子感染予防対策マニュアル」の変更により、調査対象者である短期母乳選択者が激減したため、新たに短期母乳栄養の成功要因について、半構造化面接調査をスタートさせ、聞き取り調査を終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
HTLV-1母子感染の予防をより確実なものにするため、短期間でも母乳を与えたいとする母親が声をあげることができず、支援も受けられないことが懸念される。短期母乳栄養を選択する対象者は少なくなっているが、少しでも母乳を与えたいと希望するHTLV-1陽性妊産婦への支援の必要性やどのような方法で支援するかという課題はさらに重要となっている。当初計画より対象数は少ないが、助産師による継続支援に関する詳細な記録をもとに短期母乳栄養を選択したケースへの支援方法の構築に向けて分析・検討を進める。さらに、母乳栄養をスタートさせた後、3ヶ月以内に人工栄養の移行に成功したケースへの聞取り調査により、成功要因の分析を行い、支援のあり方を考察する。
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Causes of Carryover |
HTLV-1母子感染防止マニュアルによる、母乳栄養に関する方針変更のため、調査対象者が当初計画より減少し、助産師による継続家庭訪問にかかる謝金等の費用が予定より少額となった。研究期間の1年延長を認められ、今年度は研究協力者による検討会を開催し、調査データの分析、考察を進める。成果をまとめ、HTLV-1陽性者の皆さまへの情報公開、学会等への発表を行う。
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