初期認知症高齢者への人生の統合性を目指した看護介入プログラムの評価

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K12204
• Research Institution: Tsuruga Nursing University
• Principal Investigator: 木谷 尚美 敦賀市立看護大学, 看護学部, 講師 (50350806)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 沼本 教子 京都橘大学, 看護学部, 教授 (00198558)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 初期認知症 / 人生の統合 / 老年期発達課題 / 老年看護

Outline of Annual Research Achievements

自分の思いを十分に語ることのできる初期認知症の人（認知症の前駆状態である軽度認知障害（MCI）ならびに認知症の初期段階）に焦点をあて，初期認知症の人が「いま」の危機的状況を乗り越えて老年期の発達課題である「人生の統合性」を獲得し，認知症が進行した未来までも活用できる看護支援プログラム「過去，現在，未来を語り，オレンジノートに遺すプログラム」の看護介入の効果を検証することを目的としている。
本年度は，プログラムの実践およびデータ収集を行った。現在までに軽度認知障害の人4名，軽度アルツハイマー型認知症の人1名の計5名の介入を終え，1名が介入途中である。得られたデータは対象者ごとに整理し，面接及び観察データについては逐語録を作成した。データの分析を並行して行っている。主観的幸福感，発達課題尺度等の量的なデータについては，データ数が少ないため未だ検証に至っていない。質的なデータの分析では，介入の回数を重ねるにつれ，オレンジノートの作成に能動的に関わる姿勢が見られるようになり，過去と対峙しながら，これまでの人生を肯定し，これからの生き方について主体的に語ることにつながっていくことが確認された。また，オレンジノートを集大成としてとらえていた。最も効果が感じられたのは，完成したオレンジノートを子世代と共有した場面である。本人が子に思いを語ることで，子は親を深く理解することにつながった。親子の人生が重なり，対話も活性化された。対象者数が少ないが，初期認知症の人への支援プログラムとして活用が可能と考えている。
次年度は介入を継続し，データ数を増やしていく予定である。介入前後の量的データの比較および質的なデータを積み重ねていくことで，効果を明らかにしていく。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

研究協力者の選定に時間を要した。理由は，特に軽度認知障害の人が，診断から日が浅い場合が多く，不安を抱えている人が多い。そのため対象者の精神状態を考慮し，開始までに十分な説明と時間が必要であった。さらには，介入の一連のプロセスにかなりの時間を要するため，当初予定していたような複数を同時進行で進めていくことが困難であった。

Strategy for Future Research Activity

協力者の選定方法を見直した。協力機関からの紹介のみではなく，研究者が直接協力機関に出向き，基準にあてはまる対象者に対して，その場で時間をかけて説明することとした。それにより介入開始までの時間の短縮ができている。介入開始後は，計画的に効率的に進め，対象者数を増やしていきたいと考えている。

Causes of Carryover

研究協力者の選定に時間を要したため，予定の介入数に至らなかった。そのため，研究協力者への謝品の支出，介入にかかる事務用品等の必要物品の支出額が少なかった。ただし，データ収集のために他県に出向く機会も多いため，データ収集のための旅費は多く見積もって，次年度に繰り越した。

Expenditure Plan for Carryover Budget

物品費300,000円（内訳：認知症関連の書籍100,000円，研究参加者への謝品90,000円，文具等の消耗品110,000円），旅費500,000円（内訳：研究分担者との打ち合わせ40,000円，データ収集360,000円，学会参加100,000円），人件費・謝金100,000円（研究協力者への謝金），その他380,000円（内訳：文献複写費10,000円，テープ起こし費用320,000円，学会参加費20,000円，印刷費等50,000円）