2016 Fiscal Year Research-status Report
住民の出生世代別健康リスクに対応した生活習慣病予防の教材開発
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16K12345
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Research Institution | Ehime Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
入野 了士 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師 (70634418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 志穂 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 助教 (60634409)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 出生世代 / 世代間差 / 健康リスク / 健診データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脂質系検査値の世代間差が各出生世代の健康リスクの違いとして現れることに着目し、出生世代別健康リスクに対応した生活習慣病予防に資するための教材開発研究である。健診結果を用いた継続的な住民の健康リスク予測をベースとし、住民の出生世代別健康リスク指標を基にしたより効果的な保健活動実践に寄与できる研究であるところに、本研究の公衆衛生看護学上の意義がある。平成28年度の研究目的は、①先行研究結果からのエビデンスを基にして、住民の出生世代別健康リスクの将来予測を行うこと、②実際に出生世代別健康リスクの予測を行う際に必要な手順と要因について評価することの2点である。 まず、先行研究からの手法を用いた住民健康リスクの検証するために、医療・健診データを用いて、1)脂質異常症罹患者数の各出生世代推移曲線の算出、2)各出生世代における先行研究以外の循環系心疾患罹患者数の算出、3)脂質系検査値の世代間差と先行研究以外の循環系疾患罹患者数の経年推移比較、4)先行研究結果を活用した各出生世代の各種循環系疾患罹患者数の将来予測の手順で研究を進めた。今回の手法で求められた結果は、国内外の大規模コホート研究結果と比較し、その妥当性が概ね確保できた。 この出生世代別健康リスクの将来予測の作業と並行して、A県のB町とC町における2003年の基本健康診査データ、2013~2014年の国保及び協会けんぽの健康診査データを自治体単位でマージした後、出生世代が1934-1943年、1944-1953年、1954-1963年、1964-1973年、1974-1983年の5世代について分析を行った。この一連の分析については、地域の保健従事者と一緒に検討しながら進め、健康リスクを明らかにするプロセスの特徴が明確になってきたところである。 なお、これらの研究成果については、29年度全国学会で発表することが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度は、先行研究で得られている出生世代別健康リスクの予測に必要な知見の充実を行うために、本研究への参加を募り、A県内のB町とC町の協力が得られた。両町における2003年の基本健康診査データと2013~2014年の国保及び協会けんぽ健康診査データを自治体単位で集約し、2016年12月~2017年3月にかけて出生世代別に分析を行った。分析にあたり、分析対象の国保及び協会けんぽの健診データは、データを所管する保険者とデータ分析に係る手続きを文書で取り交わした後、個人情報との連結ができないように、匿名化された状態で二町から手渡しで提供を受け、ネット接続しないスタンドアロンのコンピューター上で分析を行った。本研究は、研究者が所属する大学の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。 分析に際し、大学研究者とB町、C町及び両町を所管する保健所の保健専門職で構成された検討会を6回開催し、町が日頃の保健活動で感じている地区や住民の特徴等をディスカッションしながら分析を進めた。検討会では、詳細な会議メモをとった上で会議録を毎回作成し、町の健康リスクを明確化していくプロセスを時系列で整理するとともに、出生世代別健康リスクの予測に必要な手順と要因について評価した。この評価を通して、健康リスクを明らかにするプロセスの特徴がいくつか明確になった。また、出生世代別健康リスクの予測に必要な健診データ分析結果を意味付けするために必要とされる要素についても示唆が得られた。 現時点で明らかになった内容については、平成29年度に学会発表を行い、フロアから意見を募る予定としており、おおむね研究を順調に進めることができていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度に二自治体の健診データを分析し、その分析プロセスを整理することで明確になった出生世代別健康リスクの予測に必要な手順と要因について、その妥当性を確認する必要がある。そのため、初年度に関わった二自治体よりも人口規模が大きいD町において、初年度と同様に2003年の基本健康診査データと2013~2014年の国保及び協会けんぽデータを自治体単位で集約し、分析とそのプロセスの評価を行うこととしている。健診データ分析にあたっては、分析対象の国保及び協会けんぽの健診データは、個人情報との連結ができないように、匿名化された状態で二町から手渡しで提供を受け、ネット接続しないスタンドアロンのコンピューター上で分析を行うこととする。分析に際しては、初年度で明確になった当該手順と要因を念頭におきながら、二自治体で実施したように研究者や町保健師で構成された検討会を開催して、そこでの意見を反映させながら分析を行うように予定している。検討会では、詳細な会議メモをとった上で会議録を毎回作成し、後日分析を行う。 D町における健診データ分析と初年度の二自治体における健診データ分析のプロセスを比較しながら、その共通性と相違性について整理を行う。 出生世代別健康リスクの予測に必要な手順と要因について、前年度の研究結果の充実が図られた時点で、教材化に向けての検討を行っていく。本研究による健康リスク予測を活かした生活習慣病教育教材の対象は保健師学生を想定している。教材には、住民や意思決定者に向けて、(1)価値を見せる、(2)資源を見せる、(3)エビデンスを見せるための活動ができる技術を導入し、教育教材を用いた学習手法・プログラムについて研究チームで検討した上、教材開発を行う。教材開発においては、実際に生活習慣病予防活動にも従事する保健師の意見も取り入れながら進めていく。
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Causes of Carryover |
28年度の研究成果を研究チーム及び研究協力者で共有するため、研究成果報告会を29年3月に開催する予定であったが、研究協力してくれた二自治体及び保健所の担当者が一堂に会する日程を確保できなかった。そのため、当該報告会は29年6月に開催を順延することにしたため、会の開催に必要な旅費及び会議費用を次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の研究成果報告会を29年6月に開催することを決定しており、繰り越した使用額については、当該報告会開催に必要な旅費及び会議費用に充てることとしている。
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Research Products
(2 results)