2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12646
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平木 岳人 東北大学, 工学研究科, 助教 (60550069)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 排煙脱硫 / 製鋼スラグ / アルミニウムドロス / リサイクル / エトリンガイト |
Outline of Annual Research Achievements |
転炉および電気炉から年間約1400万トン発生する製鋼スラグは、未反応CaOに起因する膨張やアルカリ水溶出などから、高炉スラグと比較してその有効利用が困難である。本研究では、製鋼スラグをアルミニウム産業から年間数十万トン規模で排出されるアルミニウムドロス残灰と同時に排煙脱硫システムにて原料として利用し、合成物質としてエトリンガイト(Ca6Al2(SO4)3(OH)12・26H2O)を製造するプロセスを提案する。エトリンガイトを65℃以上で加熱して脱水したメタエトリンガイトは、優れた水質浄化性能を有することが明らかになっており、消石灰に代わる高度水処理材料として注目される機能性物質である。本研究では、製鋼スラグとアルミニウムドロス残灰を排煙脱硫プロセスに投入するシステムを想定し、両廃棄物の主成分であるCaOとAlNを硫酸水溶液中で反応させエトリンガイトを合成する基礎反応について実験的かつ化学平衡論的に検討した。
CaOおよびAlN粉末を80℃硫酸水溶液にて9時間反応させたときの固体回収物のXRDパターンは全てエトリンガイトのピークと一致した。また固体回収時の溶液のpHは11.5であった。化学平衡論的な解析ではCaCO3およびCa(OH)2がエトリンガイトよりも安定であると予想されたが、CaO、AlN、硫酸水溶液を原料としてpHをアルカリ性にシフトさせつつエトリンガイトを単相で合成できることを明らかにした。またAlN由来のアンモニア共存下においてもエトリンガイトを合成可能であることがわかった。
またアルミニウムドロス残灰を排煙脱硫システムで単独利用し、残灰中のメタルおよび窒化物と排煙中の硫黄を固定する基礎反応についても実験的かつ平衡論的に検討し、硫酸アルミニウム塩として固定化可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定したシステムにおける基礎反応がおおむね順調に起こることが基礎実験により明らかになった。また目的物質であるエトリンガイトは単相で回収可能であることがわかり、実廃棄物を用いた場合も高純度に回収できる可能性がある。研究代表者のネットワークにより鉄鋼メーカーおよびドロス処理メーカーから最新の各廃棄物に関する情報が得られており、また各業界からの関心度が非常に高いことを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
実スラグおよび実ドロスを用いたエトリンガイト合成試験を行う。既に実廃棄物については入手しており、現在は合成試験のための各廃棄物の分析データを収集している。また、想定通りにエトリンガイトが実廃棄物から合成できた場合、合成したエトリンガイトの水質浄化剤特性として、フッ素の除去性能をを試験する予定である。うまく合成できなかった場合は原料の前処理としてボールミルによる粉砕や溶液pHの強制的な調整などにより改善を行うことで対応できると予想している。
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Causes of Carryover |
協力を依頼した企業から所望するサンプルを順調に調達でき、模擬試料を作成するために考慮したサンプル準備費および分析費分の当該助成金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の提案プロセスを実証するための試験装置について、より詳細なデータを測定するための電極類や分析費用に充てる計画である。また、成果発表の旅費および論文投稿の費用とする。
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