2017 Fiscal Year Research-status Report
MK-7低産生菌、短時間発酵と紫外線加工によるビタミンK低減化納豆開発と性能試験
Project/Area Number |
16K12736
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平松 祐司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (30302417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 雄一 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00251059)
北村 豊 筑波大学, 生命環境系, 教授 (20246672)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 納豆 / ビタミンK / 紫外線 / 発酵 / ワーファリン |
Outline of Annual Research Achievements |
食品工学と臨床医学とが共同し、「ビタミンKを含まない納豆風味大豆食品」の開発と臨床試験を実施するための研究課題である。通常の発酵納豆から曳糸性の粘性物質を浄水に溶出し、既に本研究室で試作されている紫外線照射装置を用いて、この水溶液に紫外線照射を加えて含有されるビタミンKの分解および納豆菌の殺滅を図った。これを噴霧乾燥法等により粉末化したものを別途蒸煮した大豆に還元し、納豆風味の大豆食品を完成させた。これと並行してビタミンK低産生納豆菌の同定をはかり、特定の納豆菌にたどり着いた。この低ビタミンK産生納豆菌を用いて短時間発酵させることにより、ビタミンK含有量の有意に少ない納豆作成が実現した。紫外線加工による納豆風味食品の開発に向けての基礎資料を得るために、1)納豆粘性物質中のビタミンKの紫外線分解特性の解明、2)納豆粘性物質中の納豆菌の紫外線死滅特性の解明、3)紫外線照射後の納豆粘性物質の乾燥特性の解明のための定性的・定量的評価を実施し、紫外線照射の適用性の向上、粘性物質の保存性や加工性の向上、および高い次元での納豆風味の再現を目指した。一定レベルの納豆風味食品加工の方法論を確立したため、倫理承認を経てボランティアおよびワーファリン内服患者による食品機能の評価に入った。検証前1ヶ月間抗凝固薬を含めた内服をせず、納豆禁食とした健康成人ボランティア10名に当該食品を7日間連続で摂食してもらい、摂食終了翌日に血中MK-7濃度を測定した。血中濃度変化がないことを確認したので、次年度はワーファリン内服患者による試験に移行する。ワーファリン効力の指標・PT-INR値が2.0前後に安定している患者10名に当該食品を1週間連続摂食してもらい、摂食終了翌日に血中MK-7濃度とPT-INR値を測定する。PT-INRに有意な変動があれば中止する。納豆代用品としての官能試験も実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常の発酵納豆から曳糸性の粘性物質を溶出し、この水溶液に紫外線照射を加えて含有されるビタミンKの分解および納豆菌の殺滅を図った上で、噴霧乾燥法により粉末化したものを蒸煮した大豆に還元し納豆風味の大豆食品を完成させた。これと並行してビタミンK低産生納豆菌の同定をはかり、特定の納豆菌にたどり着いた。この低ビタミンK産生納豆菌を用いて短時間発酵させることにより、ビタミンK含有量の有意に少ない納豆作成が実現した。目的とした食品とともに他の方法によるビタミンK低減化食品も作成できたので、進捗状況としては満足のいくものである。ボランティアによる性能試験も終了しており、ほぼ予定通りのタイミングでワーファリン内服患者による介入臨床試験に臨むことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
人工弁置換術後などのワーファリンを内服している患者全てが納豆にこだわるわけではないだろうし、製品の市場規模のみを勘案すれば本研究の価値は不透明である。しかしながら本研究の成功は、医療現場に定着している「ワーファリンには納豆禁食」という固定観念を覆し、患者の食生活により高い自由度をもたらす点で意義深い。日本の食文化を象徴する伝統食品のひとつである納豆を患者やその家族の元に返すことは、将来に渡って文化的あるいは経済的波及効果をもたらすものと推察される。日本人の食生活・食文化を科学の力で守り、医療と食文化の共存において妥協をしないという姿勢を示すことは、今後こうした多面的栄養科学研究が発展する上でも重要なメッセージとなるであろう。今後はビタミンK低産生納豆菌の機能をさらに探究の上食品加工に応用し、より実際の納豆に近い形のビタミンK低減化食品を作って行きたい。
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Causes of Carryover |
臨床治験開始を見込んで試験食品保存運搬費用、治験参加者への謝礼などを使用予定に含んでいたが、IRB審査に時間を要し臨床治験開始がやや遅れた。次年度へ持ち越す使用額は、次年度請求助成金と合わせて臨床治験完結のために有効利用される。
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