災害ボランティア活動におけるリスク認知と事故予防に関する研究

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K12836
• Research Institution: Okayama University
• Principal Investigator: 太刀掛 俊之 岡山大学, 全学教育・学生支援機構, 准教授 (90379222)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 事故予防 / 災害ボランティア

Outline of Annual Research Achievements

本研究では，災害ボランティア場面における事故予防を検討するため，関係者に対するインタビュー内容について分析を行い，活動時の事故やヒヤリハットについての実態と背景要因，安全確保の具体的な方策の把握，安全を配慮すべき責任の所在についての知見を明らかにした。
結果としては，災害ボランティア活動の復旧および復興フェーズにおいて，事故やヒヤリハット，またはその可能性が多岐に渡ることが示された。また，その背景要因については，産業労働場面と同様に，ボランティア参加者の知識や経験不足，作業の急ぎ，疲労，慣れなどが指摘された。一方で，予防策としては，各種の安全確保の準備や工夫が実施され，各々の活動で全てが網羅されているわけではないが，産業労働場面と類似する取り組みが経験的に行われていることが明らかとなった。
また，災害ボランティア場面特有の背景要因として，ボランティア参加者の過度なモチベーション，ボランティア参加者から受け入れ側に対する配慮，受け入れ側からボランティア参加者への遠慮といった，ボランティア参加者側と受け入れ側との関係性の要因が見出された。これらの要因は，産業労働場面で見られるような雇用主と労働者との契約関係ではなく，あくまでも支援を行う側と受ける側の信頼関係で成立しており，そこから生じる心理的影響が関係していると推察された。
なお，安全を配慮すべき責任の所在については結論を見出すことが難しかったが，ボランティアの自発性を損なうことなく最大限に安全を確保した活動ができるように，関係者が安全確保について可能な限り取り組む必要性が示唆された。今後の課題としては，ボランティアという自発性の枠組みにおいて，災害ボランティア場面の事故を特徴づける背景要因，特に，利他性の不利益についての機序に注目することで事故予防の取り組みに有効な知見が得られるものと考えられる。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2016年度は，災害ボランティア場面における事故予防を検討するため，事前に収集されたインタビューのデータについて，事故発生事例，事故予防体制，及び安全配慮責任の観点から詳細な分析を行うことで，研究実績の概要に示す知見を得ることができた。インタビュー件数及びインタビュー内容の掘り下げについても特段の問題は生じておらず，研究計画に沿った進捗状況であると判断した。なお，今回得られた知見を補強するためのインタビューを次年度以降の研究期間中にも適宜実施することとしたい。

Strategy for Future Research Activity

2017年度は，研究実績の概要において今後の課題として挙げられた利他性の不利益についての機序等について，場面想定法を用いた質問紙調査をもとに明らかにしていく。調査の実施については，学生に対しては講義等の機会を利用することになるが，一般市民については実施の有無を含めて検討を要したい。また，今後の研究の展開に伴って，文献のレビューについては，本テーマに限らず，海外の関連文献を含めてより幅広く実施することで，研究の位置付けをあらためて明確にしておきたい。

Causes of Carryover

申請時の金額よりも実際に採択された金額が少なく，より効率的な使用を行うため，インタビュー実施のために想定していた2016年度の調査旅費及びデータ分析に係る人件費については，これまでに蓄積されたデータをあらためて自らが詳細に分析することで未使用とした。

Expenditure Plan for Carryover Budget

実際に採択された金額について不足分の解消を図るため，2016年度の未使用額と2017年度の金額と合計することで，データ分析に係る人件費及び学会参加費等に充当する計画である。