2017 Fiscal Year Research-status Report
災害ボランティア活動におけるリスク認知と事故予防に関する研究
Project/Area Number |
16K12836
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
太刀掛 俊之 大阪大学, キャンパスライフ健康支援センター, 教授 (90379222)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 事故予防 / 災害ボランティア / 利他性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の計画は,災害ボランティア場面における事故予防を検討するため,インタビュー分析によって既に得られている知見,すなわち,活動時の事故やヒヤリハットについての実態と背景要因,安全確保の方策等の知見に基づきながら,事故リスク認知と予防,及び利他性との関係性に関する文献調査を行い,場面想定法による質問紙調査法を用いて,災害ボランティア活動時のリスク認知・態度について明らかにすることであった。 自主性を重視するボランティア場面では,リスクに関する知識,事故に繋がる不安全行動の遂行意図のほか,動機づけ,安全を配慮すべき責任主体等が行動を規定すると推測される。しかしながら,共感によって誘発される利他性の不利益(積極的なボランティア行動によって自らの安全や健康を害してしまう現象)が生じる機序については,研究が極めて少ないと指摘されている(Batson, 2011)。そのため,当該年度は計画していた文献の調査に重点を置き,質問紙調査の設定についての吟味を行った。 具体的には,ボランティア行動を規定する要因は,Clary et al. (1998) によって6つ抽出されているが,それらの要因と事故発生との関係を調査した事例は限られていた。例えば,Newnam et al.(2009)の研究では,自動車事故を取り上げ,自己中心的な動機づけが,事故発生と関係していることが明らかとなった。これは,本研究のインタビュー調査で得られた,ボランティア参加者の過度なモチベーション,ボランティア参加者から受け入れ側に対する配慮といった,ボランティア参加者側と受け入れ側との関係性に関連する要因と考えられる。そのため,質問紙調査に用いるシナリオを構成する際に,ボランティア行動の動機づけとして文献で指摘された要因を取り込み,ボランティア活動時の事故との繋がりを検証する必要があることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度は,事故リスク認知と予防,及び利他性との関係性に関する文献調査を行い,場面想定法に基づく質問紙調査によって,災害ボランティア活動時のリスク認知・態度について明らかにすることとしていた。利他性の不利益に関する文献は極めて少ないことから,当初予定していた計画に基づき,質問紙調査の段階まで至る予定であった。しかしながら,文献が少ないが故に,ボランティア行動を規定する要因と事故発生との関係を調査した事例の有無について精査の時間を要する結果となった。そのため,(3)やや遅れている,と判断した。今回得られた知見は速やかに調査内容に反映し,2018年度の計画遂行に繋げることとする。なお,これまでに得られた知見を補強するためのインタビュー及び文献調査は2018年度の研究期間中にも適宜実施することとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は,研究実績の概要において示されるとおり,文献調査から明らかになった要因を考慮し,利他性の不利益についての機序等について,場面想定法を用いた質問紙調査に基づいて明らかにする。質問紙調査の手法については,対象範囲の観点からWEB経由での実施の可能性も含めて検討する。また,事故予防シナリオブック(ひな型)の作成,および将来の活動に伴う事故リスクのヒアリング調査については,質問紙調査の結果を待たずに並行して作業を進めることで,実施にかかる工程の短縮を図る。併せて,引き続き,文献のレビューについては,本テーマに限らず,海外の関連文献を含めてより幅広く実施することで,研究の位置付けを明確にする作業を継続する。
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Causes of Carryover |
(理由)申請時の金額よりも実際に採択された金額が少なく,より効率的な使用を行うため,自らが作業を担うなどして人件費の使用を控えた。また,旅費については学会発表による海外渡航等を想定していたが,研究の進捗を鑑みて実施を見送ったために次年度への使用額が生じた。 (使用計画)実際に採択された金額についての不足分の解消を図るため、これまでの未使用額と2018年度の配分額とを合計することで、データ分析に係る人件費および学会参加費等に充当する計画である。
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