2016 Fiscal Year Research-status Report
現代アジア女性の社会参画にみるコンフリクトと感情に関する比較民族誌的研究
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16K13129
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
伊藤 まり子 京都外国語大学, 国際言語平和研究所, 客員研究員 (70640887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻田 涼子 育英短期大学, 現代コミュニケーション学科, 准教授 (30586714)
稲澤 努 尚絅学院大学, 表現文化学科, 准教授 (30632228)
宮脇 千絵 南山大学, 人類学研究所, 研究員 (30637666)
菅野 美佐子 東京福祉大学, 国際交流センター, 特任講師 (80774322)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 女性 / 社会参画 / コンフリクト / 感情 / 主体 / 比較民族誌 / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研は、現代アジア女性の社会参画をめぐる問題について、コンフリクトと「感情」という観点から、東アジア、東南アジア、南アジアの各地域社会に暮らす女性主体の組織や集団を事例として、比較民族誌の方法論にもとづき実証的に明らかにすることを目的としている。 この課題を検討するにあたり、初年度である28年度は、次の二点を活動課題とした。①各研究分担者がそれぞれの対象地域における女性主体の集団、組織に関連する「伝統的な」構成原理と、近現代の急速な社会変動にともなうその性質の変化に関する先行研究を整理すること。②研究分担者のテーマについて、短期フィールド調査を実施し、先行研究との比較分析すること。 このために本年度は、平成28年6月18日(於東京福祉大学)と平成29年2月11日(於東京都のレンタル会議室)の2回の科研研究会を開催した。第1回研究会では、代表者(伊藤)が本科研の概要について報告したうえで、各分担者と今後の研究の方向性を確認し、その後、各分担者による各個研究の概要と計画について報告をおこなった。ここでは、本科研において各分担者がどのような研究活動を実施することが可能か、相互に意見交換することができた。第2回研究会では、人類学における感情に関する議論を分担者間で共有するために、Catherine Lutzによる「Anthropology of Emotion」の読解を伊藤と菅野が行い、それに基づき他の分担者とともに討論し、次年度以降の活動のための核論とすることで合意形成した。 本年度の活動においては、次年度以降、各分担者が研究活動をより充実させていくために理論的枠組みと方向性の確認をおこなうことができ、本科研の基礎をつくる上で成果を上げることができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研がおおむね順調に進展している理由として、以下の点があげられる。 第一に、6月に第一回研究会を実施し、本科研課題の前提となる学問的/社会的背景、および民族誌的比較研究という枠組みにおける本科研の意義を確認することを通じて、各分担者と研究の方向性についてより明確に合意形成が図れたことである。ここでは、①男女平等の思想の普遍化と女性のライフコースの多様化の提唱が唱えられる現代的現象と、②女性の社会参画と活躍が追求される現代日本において問われるリーダーシップの質という、現代日本の女性が直面している問題を確認した。そしてこの問題を相対化するためのひとつの方策として、各地域における事例の比較研究を主とする本科研の学問的/社会的重要性を共有することができた。 第二に、2017年2月に第二回目の研究会を実施し、文化人類学における感情をテーマとした論文「Anthropology of Emotion」(Catherine Lutz)を取り上げ、代表者(伊藤)と分担者の菅野が解読し、それについての討論を全分担者と共に行った。これにより、人類学的視点から「感情」をキーワードとして注目する際に、どのような視点が重要となってくるのかについて相互で学問的枠組みの共有を行うことができた。これにより、各分担者が現地調査に取り組む際に注目する点について、より具体化することができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研二年目である29年度は、各分担者が現地調査をおこない、民族誌資料の収集を行うことが、第一の推進方策といえる。本研究の主要な方法論である比較民族誌は、各地域における実証的な調査に基づき収集した資料を第一次資料として、それを比較分析することで成立する。したがって、29年度においては各分担者が現地調査を行い、そこで得られた資料に基づき、年度内に開催予定の第3回研究会にて報告し合い、討論することが肝要といえる。
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Causes of Carryover |
本年度は、各分担者による対象地域での調査活動の実施日程を、当初の予定よりも短縮および中止としたことから、使用額の減額が生じた。より具体的には、各分担者の中で、育児や勤務校の職務により、海外における短期調査の実施が困難となったものがいたため、年度内の予算使用を見送り、次年度以降に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度における使用計画として、8月以降に各分担者が対象地における民族誌資料の収集に取り組むことを計画しており、そのための経費で予算の使用が遂行できると考えられる。 本科研では、各分担者がこれまで調査活動を実施してきた中国、ベトナム、マレーシア、インド、日本の各地域社会を対象としている。そのため調査地及び調査対象組織や調査対象者との関係性はすでに構築されており、調査地を訪問後は比較的すぐに参与観察か可能な状況にある。次年度は各自が研究対象において短期参与観察を実施することで、研究成果のための資料収集が可能となると考えている。
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