2016 Fiscal Year Research-status Report
日本近代を中心とする仏像の流通・保管に関する調査研究
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16K13171
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Research Institution | Kanagawa prefectural Kanazawa bunko museum |
Principal Investigator |
瀬谷 貴之 神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 主任学芸員 (50443411)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 仏像 / 仏教美術 / 売立目録 / 興福寺 / 金胎仏画帖 / 聖徳太子二歳像 / 古美術収集 / 廃仏毀釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である本年度は、研究課題について広範に調査研究と研究発表などを行った。その内容は以下の通りである。 【近代における仏教美術収集関係資料の調査】 まず近代を中心とする仏像の流通を把握するために、武藤山治、小泉三申、伊藤庄兵衛など明治・大正・戦前期における著名な古美術収集家、特に仏教美術を収集した人物などについて、基礎的な資料収集を行った。またその収集内容を伺い知ることが出来る、売立目録について集中的に調査をして、その概要を把握した。来年度は収集した情報について、分野別等データベース化を試みたいと思う。 【流通する仏像を中心とする仏教美術作品に関する調査】 戦前期に流通し、現在も収集家や古美術商が所蔵する仏像を中心とする仏教美術作品について、調査や写真撮影を行った。特に井上馨旧蔵で興福寺に伝来した弥勒菩薩立像、松田福一郎旧蔵の金銅製聖観音立像などの名品について、詳細に調査を行うことが出来た。また熊本願成寺旧蔵で平安仏画の名品として知られる金胎仏画帖について、新出の二葉を含めて四葉の調査を行った。この他仏像を中心に多数の関連作品の調査を行ったが、その調査成果の一端を、神奈川県立金沢文庫における企画展「国宝でよみとく神仏のすがた」(平成28年8月5日~10月2日)で早速発表することも出来た。またセジウィック家所蔵の聖徳太子二歳像(ハーバード大学美術館保管)の調査を通して、聖徳太子二歳像全般が中世から近代までの仏像の流通・保管を考えるうえで、重要な研究対象であることが明らかになり、その成果の一端をハーバード大学におけるワークショップにおいて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は売立目録の情報など基礎的文献の収集だけではなく、本務である展覧会業務と結びつけることによって、多数の関連作品の調査が行えた。またその一端を展覧会を通して、公表できたことも成果として大きいものと言えのよう。なお、聖徳太子二歳像の研究は、当初計画したものではなかったが、中世から近代における仏像流通を考える重要課題として取り上げることができ、早速その研究の一端を学会発表(ワークショップ)を通して発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において、売立目録や関連論文など文献を中心とした資料、さらに関連作品調査による基礎的情報の収集が順調だったので、次年度以降はその分類・分析を中心とした作業にも取りかかりたい。さらに論文作成や学会発表などを通して、成果を公表して行きたい。加えて引き続き、資料収集や作品調査も継続して行いたいと思う。
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