2016 Fiscal Year Research-status Report
ライフコースの視点からみた日本語教師の成長とキャリア支援プログラムの開発
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16K13243
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
義永 美央子 大阪大学, 国際教育交流センター, 教授 (80324838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 倫子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (30379870)
本田 弘之 北陸先端科学技術大学院大学, グローバルコミュニケーションセンター, 教授 (70286433)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 教師の成長 / キャリア支援 / 日本語学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究の初年度として、日本語教師・学校教員・看護士・介護士等の分野におけるキャリア支援に関する情報を収集した。本研究の対象は日本語教師であるが、女性の割合が比較的高く、かつ何らかの専門性が求められる職業という意味で共通点のある業種にも視野を広げることにより、より日本語教師の立場を相対化して捉えることが可能になったと考えられる。 また、最も多くの教師(ボランティアを除く)の所属先である日本語学校を対象としたインタビュー調査を実施し、日本語学校における教員の採用・研修・ワークライフバランス支援の現状把握を行った。結果は言語文化教育研究学会第3回年次大会で発表しているが、その概要は以下のようになる。 日本語学校の多くで留学生数が急増し、「超売り手市場」となっているが、学期や年度によって学習者数に増減があり、またその増減の予測が困難なことから、安定的な教員採用が難しく、多くの教師は非常勤講師として採用されている。そして「日本語教師は食えない」「日本人なら誰でもできる仕事」という一般的なイメージと待遇の悪さを、複数の学校関係者が関連させて語っている。また、全ての調査協力校で専任教員は産休・育休及び介護休暇を取得できるが、非常勤にはこのような制度的支援はなく、教師本人と職場の裁量の範囲で働き方を調整している。職に就いてからの研修については、常勤・非常勤の別なく参加できる研修を実施している学校が多いが、そのほとんどは日本語の教え方に関する研修であり、教師の成長や働き方、キャリア構築などに関する研修を実施している学校は少ない。優秀な教師を確保し教育の質を保証するためには、ワークライフバランスに配慮しながら教師としての成長を促すことができる環境を整備するとともに、日本語教師の専門性に関する社会的な認知を高めていくことが喫緊の課題といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、今年度は他分野を含めたキャリア支援に関する情報収集、および、日本語教師・教師志望者対象の調査を実施する予定であった。しかし、情報収集を進めた結果、日本語教師への調査を実施する前に、割合として最も多くの教師(ボランティアを除く)の所属先である日本語学校の実態把握を行った方がよいとの結論に至り、来年度実施予定であった日本語教育機関対象の調査を一部前倒しして実施した。その結果、日本語教師を対象とする調査で明らかにすべき課題がより明確になり、来年度以降の調査計画をより具体化することができたことから、一部計画に変更はあったものの、おおむね予定どおり進行していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上にも述べた通り、今年度は、当初来年度に実施予定であった日本語教育機関対象の調査を前倒しして実施した。来年度は当初今年度に実施予定であった日本語教師対象の調査を実施する予定であるが、単に調査時期が一部変更(入れ替え)になっただけであり、調査の内容や方法には大きな変更はない。むしろ、日本語教育機関対象の調査の結果に基づき、より課題を明確化した形で教師対象の調査に臨むことが可能になったと考えられる。具体的には、まず日本語教師および教師志望者にアンケート調査を実施し、教師としての成長の過程や成長を促す転機となった出来事、キャリア構築上の課題や支援ニーズ等について尋ねる。さらに、インタビュー調査を行い、教師としての成長の過程や個人的な生活と仕事の両立の工夫、個人的な生活経験が教師としての仕事にどのような影響を与えているか、などの詳細を尋ねる。このように質的分析と量的分析を有機的に連携させ、より説得力のある研究結果が得られるように努める。 また、研究プロジェクト全体の研究成果の公表のあり方として、ウェブサイトの開設や書籍の出版、あるいは教師用ポートフォリオの作成など、研究者のみならず、現場の教師にも利用しやすい形での成果還元のあり方について引き続き検討する。
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Causes of Carryover |
調査・情報収集のための出張を計画していたが、スケジュール調整の関係で今年度内の出張ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の調査計画に基づき、改めて出張を企画し、実施する。
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