2016 Fiscal Year Research-status Report
産業遺産保護に関する公法理論の構築―英・独・西との比較に基づく理論的・実証的研究
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16K13319
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
林 晃大 近畿大学, 法学部, 准教授 (80548800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上代 庸平 武蔵野大学, 法学部, 准教授 (90510793)
野口 健格 中央学院大学, 法学部, 講師 (00716780)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 公法学 / 産業遺産 / 行政法 / 憲法 / 地方自治法 / ヨーロッパ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である平成28年度は、「欧州産業遺産の道(European Route of Industrial Heritage)」プロジェクトの中心的役割を担うイギリス・ドイツという産業遺産保護先進国および日本と同様に産業遺産の保存・活用に向けた取組みの重要性の認識が遅れ、それを模索しているスペインにおける産業遺産の保存・活用の現状を、各研究分担者が担当する国ごとに、資料・文献をもとに分析し、比較法制度研究の基礎を築いた。 また、わが国における産業遺産の保存・活用に向けた取り組みの現状を知るため、複数の地方自治体に対してヒアリング調査も行った。具体的には、平成27年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」に関して、その構成資産の1つである万田坑(熊本県荒尾市)の保存・活用状況について荒尾市世界遺産推進室にヒアリングを行うとともに、万田坑の現状を視察した。また、旧集成館など数多くの構成資産を抱える鹿児島市の産業遺産保護施策について鹿児島市世界遺産推進室に、さらに複数の地方自治体にその構成資産が分散する「明治日本の産業革命遺産」保護の中心的役割を担い、自治体間での連絡調整等も行う世界遺産協議会(旧「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会)事務局が置かれている鹿児島県世界文化遺産課にもヒアリングを行った。 さらに、研究分担者のうち1名が、「欧州産業遺産の道」プロジェクトのアンカーポイントの1つであるリューダースドルフ石灰鉱の保存及び利活用状況の視察を実施した。 研究グループ全体として諸外国における産業遺産の保存・活用の現状を広く概観するとともに、現在の日本における地方自治体の取り組みを分析することができたことは、平成29年度以降に行う予定である比較法制度研究の基礎となるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、各研究分担者それぞれが担当する国ごとに比較法制度研究の基礎を築くと同時に、世界遺産である「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の保護を中心的に担う複数の地方自治体において現地調査を行い、現状の把握に努めることができた。おおむね申請時点で予定していた研究計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には比較法研究の基礎を構築するため、収集した資料・文献の分析、把握した現状を理論モデルに当てはめるための整理を行った。今後は、収集した資料に依拠した理論分析を進めて公表する一方、可能な限り早期に調査報告を共有ないし公表し、比較研究の基盤の整備にさらに注力する予定である。 また、平成29年度は産業遺産保護先進国であるイギリス・ドイツ、制度形成の発展途上にあるスペインにおいて各研究分担者がヒアリングや視察を含めた現地調査を行う予定である。これらの現地調査を行うため、諸国における産業遺産の活用例に注目し、世界遺産を起点として周囲の産業遺産の保存・活用を振興する施策を自ら策定・推進している都市や地方を選定し、その対象とする予定である。 また、国内においても、世界遺産である「明治日本の産業革命遺産」の構成資産ではないものの、産業遺産を抱えており、それらの保存・活用制度が未整備である地方自治体へのヒアリング調査を行うことも予定している。
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Causes of Carryover |
旅費について、当初予定していた使用額よりも少額で国内調査に赴くことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に行う海外調査において、当初予定していたよりも多くの都市・地方に赴きヒアリングや視察を行う予定である。
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Research Products
(6 results)