2016 Fiscal Year Research-status Report
地理情報システム(GIS)と組み合わせた海洋境界画定の研究
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16K13320
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西本 健太郎 東北大学, 法学研究科, 准教授 (50600227)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海洋法 / 海洋境界画定 / 地理情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国家間の海洋境界画定(主に排他的経済水域及び大陸棚の境界画定)について、法的な分析に地理情報システム(GIS)による分析を組み合わせる手法を通じて、海洋境界画定の実践における実質的な考慮要因を解明し、海洋境界画定に関する国際法の法理について新たな角度から研究を行うものである。 研究の開始にあたり、特に「衡平な解決」(国連海洋法条約第74条・83条)の概念に着目して、海洋境界画定に関する先行研究を整理・分析した。また、国際司法裁判所の「領土・海洋紛争事件」(ニカラグア対コロンビア)判決をはじめとした、国際裁判所の判決または二国間の交渉を通じて海洋境界画定がなされた具体的な事案について、先行研究がどのように評価しているのかを文献調査をもとに整理した。また、本研究開始時に想定されていなかった展開として、南シナ海仲裁事件において基線の問題に関する技術的事項について判断がなされた。基線の問題は海洋境界画定の前提となる重要な問題であり、本研究課題と関係する部分について検討を行った。 本研究課題の中心となる地理情報システム(GIS)を用いた分析との関係では、海洋境界画定事件の判決を対象に、GISソフトウェアを用いて構築した等距離・中間線と、裁判所が作図した暫定的な等距離・中間線及びその修正によって得られた線の比較を中心に検討を進めた。特に、等距離・中間線を構築する前の段階で裁判所が特定の地形を取捨選択することがあることに鑑み、そうした操作の影響の評価を試みるとともに、加重中間線(weighted median line)の採用の効果について検討する作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していなかった形での基線の問題の検討が加わったため、当初平成28年度の研究実施計画としていた事項を完全にはカバーできておらず、また、パイロット・スタディとして想定していたニカラグア対コロンビア事件判決及び延伸大陸棚の海洋境界画定条約の分析結果の研究成果の公刊を年度中に行うことができていない。もっとも、研究計画全体としては概ね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、検討対象を広げつつGISを活用した海洋境界画定事例の分析の検討を進め、既存の国際法の観点からの研究と接合できるよう研究を進める。また、研究を進める過程で、海洋境界画定に隣接する問題として沿岸国による一方的な海域の設定に関する問題(群島水域や延長大陸棚等)についても同様のGISの活用が法的・政策的問題の検討に大きく寄与することが明らかとなってきたことから、可能な限りこうした隣接問題についても検討を広げたいと考えている。
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Causes of Carryover |
比較的少額の残額について、次年度の研究費とあわせて有効活用するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は比較的少額(7,991円)であり、次年度の使用計画に大きな影響はない。当初の計画通り使用する予定である。
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