2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13354
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
西條 辰義 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 教授 (20205628)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フューチャー・デザイン / 仮想将来世代 / 持続可能性 / 向社会性 |
Outline of Annual Research Achievements |
現世代を優先する民主制と市場制は将来世代のwell-beingを視野にいれることができず,機能不全を起こしているため,これらを補完する社会システムの一つとして「仮想」将来世代を現代に導入することを提案したが,28年度は仮想将来世代の効果を実験室で検証した. 高知工科大学の学生・院生を被験者とし,1世代3人のうち,仮想将来人がいない場合と一人だけ仮想将来人になる場合との比較をすると,仮想将来人を導入すると持続可能な選択をする割合が倍以上に増えたのである.また,仮想将来人がいる場合,残りの仮想将来人でない二人も仮想将来世代人との議論の中で,持続不可能な選択から持続可能な選択へと意見を変えている.つまり,仮想将来人の効果は本人のみにとどまるのではないことを立証している.仮想将来人がいない場合においても持続可能な選択をしたグループが少なからずいたが,この場合,全員が「向社会性」を持っていることも発見した.つまり,3人全員が自己利得と他者利得の公平を重視するタイプの被験者である場合においてのみ持続可能な選択がなされたのである. 以上は実験室の中で仮想将来世代が非常に有効であることを検証しているが,原圭史郎氏(大阪大学工学研究科)が岩手県矢巾町で取り組んでいるフューチャー・デザイン実践の成果ともコンパティブルである.つまり,フューチャー・デザインの有効性を実験・実践という領域で確認することができたといってよい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来の社会科学は社会の制度と人々の考え方・選好を与件とし分析を行ってきた.制度を変数とする領域としてメカニズム・デザインがあるが,フューチャー・デザインは制度も考え方・選好も変数として取り扱う新たな社会科学の領域を目指している.28年度の研究は,この考え方が有効であることを示すことに成功しているという意味で,当初の計画以上に進展しているといってよい.さらには,本研究は学術誌 Sustainability Science に掲載されている.さらには,この研究に関連する研究論文も出版されはじめている.新たな領域の提案には時間がかかるのが常識であるが,フューチャー・デザイン研究の出発時点における研究速度はかなりのものであると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は,28年度に実施した枠組みがアジアの国々で有効であるかどうかを検証する予定である.バングラデシュ,ネパールなどを想定している.国内では,フューチャー・デザインの実践研究を実施するために,長野県松本市などとの連携を模索する予定である.また,異分野の領域の研究者を組織し,新領域の確立に向けての活動も予定している.
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Causes of Carryover |
高知工科大学にセミナー講師として、共同実験研究を行った矢巾町役場より、職員を招致する計画であったが、双方の都合により中止となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
共同実験研究費として使用。
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Research Products
(12 results)