2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13402
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
八重倉 孝 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90308560)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 研究方法 / 科学的実在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は経験的研究の再検討をおこなった.とくに,規範論研究の演繹の枠組みの中で(ほんらい帰納の枠組みから得られたはずの)経験論による知見を援用する場合にその知見が満たしているべき条件について検討した.具体的には,どのようにして経験論からの知見が十分な信頼に値するか否かを判定する方法を検討した. 検討の過程で,経験的研究が依拠するデータの信頼性について重大な問題があることが明らかになった.La Porta et al. (1998, The Journal of Finance,法制度の国際比較)やHofstede(1980, 2001 Book,カルチャーの国際比較)のようなきわめて影響力があり,かつ頻繁に二次利用されているデータに妥当性が欠如していることが明らかとなった.前者の問題点については辻山編著(2018)の一章として公刊している. また,経験的研究が統計的分析を行う際に依拠するモデルにおいて,モデルそのものの妥当性が疑わしいもの(たとえばJonesモデル)が,なぜ会計研究の(ひとつの)中心であり続けているのかについて検討を行った.最も簡単な説明は会計研究自体が(科学的反実在論者が指摘するような)科学的事実を目指しているのではなく,経験的に十全な「理論」構築を目指しているのみ,という説明である.本プロジェクトにおいては科学的実在論の立場から会計学研究の再構築を目指しているので,現状のモデルの濫用についていかに是正すべきかを検討する必要があることが明らかであり,これを最終年度の課題とする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一,第二年度において規範的研究の分析と経験的研究の分析において所期の成果が得られた.最終年度に両研究を綜合するための基盤を構築することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
最終報告書の作成に向けて執筆を継続する. また,最終報告書の核となる会計学の研究方法について,海外の研究者にそれを提示し,フィードバックを得るためのインタビューを2回計画している. 本研究の成果物の一部は日本会計研究学会の年次大会で報告する予定である. 以上により,予定通りに研究目的を達成できる見込みである.
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Causes of Carryover |
当初第一年度に計画していた海外でのヒアリングを実行することができなかった分の旅費相当額が繰り越されている.第三年度に海外において情報収集とインタビューを2回計画しており,次年度使用額はそれらに充当する予定である.なお,すでに両件の海外渡航について所属研究機関に計画を提出済みである.
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