2016 Fiscal Year Research-status Report
子どもの貧困の連鎖を断ち切る「食でつながるコミュニティ」創出の研究
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16K13446
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
野尻 紀恵 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (70530731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 美穂 埼玉大学, 教育学部, 教授 (00361395)
石田 賀奈子 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 講師 (50551850)
中島 修 文京学院大学, 人間学部, 准教授 (80305284)
田村 真広 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (90271725)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子ども食堂 / 学習支援 / 居場所 / 地域ネットワーク / 社会的子育て / 地域の課題 / 運営支援 / コミュニティの変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「食」に焦点化し、地域の潜在的な資源が活かされ、多くの人たちが集う「食でつながるコミュニティ」という「場」に起こる人と人との交互作用、環境が人におよぼす作用に着目し、食コミュニティ創出のプロセスにおける参加者の変容を明らかにすることを目的としている。 その出発として、平成28年度は、「食でつながるコミュニティ」の先駆的実践事例に関する調査を行った。研究代表者、研究分担者、研究協力者の人的ネットワークを活かし、3カ所の「食でつながるコミュニティ」の調査を行った。Sunny Side Standard(大阪府)なごみの器(大阪府)ひらのっ子食堂(兵庫県)の3カ所である。それぞれの調査では、観察・エピソード記録を実施すると共に、その生成のプロセスや関わる人の思いに関して、インタビュー調査を実施した。 これら3カ所の活動は、学習支援など子どもたちへの支援を日常的に行う中で食事支援の必要性を感じ、実施されるようになったものである。その発見された必要性は、各所でさまざまであった。例えば、栄養を満たすということ、あたたかい手作りの食事を食べるということ、安心して食事をとる時間と場所であるということ、皆で一緒に食べるということ等である。一方、地域の人々にとっても、この場所が、自分自身が活かされる居場所となるということも見られた。 結果として、次の5つの共通点を見出すことができた。(1)地域に長らく関わってきた人々の子どもたしへの思い(2)活動にかかわる若い世代が運営の実務を担っている。(3)様々な団体や学校等とネットワークを構築している。(4)活動の内容を必要に応じて創り出している。(5)「食」を通じて関係性が生まれている。 以上のような結果は、その場に集う人々にとって活動する「意味」となり、活動の継続性や発展性につながっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、福祉教育研究領域において人の変容に着目した研究実践のある教育学の研究者と社会福祉学の研究者と実践者がチームを組むことにより、「食でつながるコミュニティ」創出という住民の主体形成を担う社会教育と、地域の生活における「子どもの貧困の連鎖を断ち切る」という課題の解決を担う地域福祉を結び付け、福祉教育との関連の中で「子どもの貧困」を捉え、「子どもの貧困の連鎖を断ち切る」ことに立ち向かう方法を提案することに挑戦するものである。そのため、本研究の共同研究者が議論を重ねることが必要であった。そこで、Skype会議や実際に出会っての議論を重ねた。 次に、実践現場調査のためのチームを作った。誰がどの現場に行くのか、また、その現場における役割をどのようにするのか、等を丁寧に話し合った。理由は、住民主体の実践現場であり、利用者が子どもであるという点を考慮し、負担をかけず、なるべくいつも通りに活動している現場の調査を行いたいからである。 チームによる実践現場の調査を行い、その後、調査方向を書面で行った。研究代表者は3カ所の現場に何度か継続的に出かけ、調査を補っていった。また、インタビュー調査の内容を各現場の人々にも確認いただいた。 スクールソーシャルワークの実践の実態調査については、その準備を進めるところまでとなった。具体的には、全国の教育委員会に対して、スクールソーシャルワークの活用実態、活用内容を調査するものである。また、教育委員会として、スクールソーシャルワーカーにどのような業務や支援活動を期待しているのかについて調査するものである。 平成28年度としては、5カ所ほどの実践現場の調査を考えていたが、3カ所となってしまったこと、スクールソーシャルワークについての調査は準備を整えるところまでであったこと、以上より、平成28年度の本研究課題の進捗状況については、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、「食でつながるコミュニティ」の先駆的実践事例に関する調査を継続して行う。平成29年度夏に分析合宿を開催する。その後、実践者とのワークショップ研究会を行って、再分析を実施する。 全国の教育委員会に対して、スクールソーシャルワークの活用実態調査を送付し、集まった調査結果を整理する。その結果から、子どもの貧困支援を積極的に取り組んでいるスクールソーシャルワークを抽出し、グループインタビュー調査を行い、学校で現れる子どもの貧困の実相を、質的に明らかにする。さらに、個別にスクールソーシャルワーカーへのインタビュー調査を依頼し、学校を基盤とした子どもの貧困支援の実相を明らかにすることを試みる。 次に、「食でつながるコミュニティ」とスクールソーシャルワーカーの先駆的連携事例に関する調査を実施する。スクールソーシャルワーカーと地域社会資源が密接に連携し、子どもの貧困の連鎖を断ち切るための支援を展開している先駆的事例を選定し、調査依頼する。その調査については、地域や学校と食でつながる支援実践者との連携事例として参加者の変容の視点から分析する。 参加者の変容の視点から分析する場合、どのような理論を用いて分析するのか、論ずるのかが課題としてあがってくると予測できる。よって、文献研究を重ね、論点の軸を明確にし、変容を分析できる理論を抽出することが必要となると考えている。
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Causes of Carryover |
理由は2点あげられる。一つ目は「食をともなうコミュニティ」実践限場調査について、予定より遅れたことである。遠距離地(例えば熊本、新潟を予定していた)に赴けなかったことと、調査できた現場についても、回数を重ねての調査ができなかったということが主な原因である。二つ目は、「SSWの活用実態についての調査」の実施ができなかったということである。準備段階でとどまり、予定していた調査実施までは至らなかった。調査をする以前の資料収集や研究者間の情報共有に時間を費やしたことが主な原因である。 以上の2点の理由から、予定していた旅費、人件費(調査発送や調査資料入力)、および謝礼(専門的知識提供者への)が執行できずに終わったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「食をともなうコミュニティ」の実践現場調査についての計画は、2点である。一つ目は、すでに行っている調査地について回数を重ねて重層的な調査にするこというものである。二つ目は、新たな調査地として、NPOと地域住民および大学生が豊かなコミュニティづくりを行っている新潟での取り組みについて、回数を重ねての調査を実施するというものである。 「SSWの活用実態について」の調査についての計画は、3点である。一つ目は、すでに準備を完了している調査を速やかに発送することである。二つ目は、回収された調査回答結果を入力し、分析を行うことである。そして三つ目は、実際に活動しているスクールソーシャルワーカーに対して、グループインタビュー調査、および個別インタビュー調査を行い、その調査結果を記録、分析するというものである。
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Research Products
(1 results)