2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K13454
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
野山 広 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 准教授 (40392542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
添田 祥史 福岡大学, 人文学部, 准教授 (80531087)
藤田 美佳 奈良教育大学, 次世代教員養成センター, 研究部員 (90449364)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 識字 / リテラシー / 基礎教育 / 基礎教育保障学 |
Outline of Annual Research Achievements |
基礎教育とは「人間が人間として尊厳をもって生きていくために必要な教育で、人間の生活に最低限度必要とされる基礎的な教育のこと」(基礎教育学会設立趣旨)である。本研究の目的は、この基礎教育の保障を目指した「基礎教育保障学」の設立を目指して、研究者だけでなく実践者も含めた領域横断的なネットワークの構築と、研究方法の探究を図ることにある。 そのために、以下の3点を柱に調査研究を行なうことで、基礎教育保障学会の創設、展開と、領域横断的ネットワークの拡充を目指している。(1)先行する諸外国(韓国、ドイツ等)の基礎教育学、リテラシー調査の動向把握。(2)日本における基礎教育保障学の創設にむけた研究者、実践者、関係者のネットワーク化。(3)基礎教育保障学の基盤情報となるリテラシー調査の在り方の探究と、その活用と対応方策や政策の構築に向けたロビー活動やアクション・リサーチ。 初年度及び次年度は、「基礎教育保障学」の構築を目指して、最初の大きな目標の一つであった「基礎教育保障学会」の第一回、第二回研究大会を開催するとともに、研究者だけでなく実践者も含めた領域横断的なネットワークの構築に向けた会員募集を始めた(平成29年度末の時点で約200名の会員となった)。 (1)に関しては、先行する諸外国(韓国、ドイツ等)のうち、韓国、ドイツ、ブラジル、米国に訪問して、関係者からヒヤリング調査等を行った。その成果の一部は、野山、藤田、添田の論文等の中に反映されている。(2)に関しては、「基礎教育保障学会」の設立、研究大会(第1回、第2回)の実施等により、研究者、実践者、関係者の ネットワーク化が漸進した。(3)に関しては、「教育機会確保法」の施行、展開に向けて文科省への協力や関係者との協働を展開している。また、ドイツ(ハンブルク)のリテラシー調査関係者からの情報収集、情報交換等を行った、
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研では、欧米諸国や日本の現状(欧米では識字教育、移民の言語習得支援、失業者の就労訓練などを対象とするこの領域を主たる研究領域の一つとして位置付け発展させてきた歴史をもつが、日本では未確立のままということ)を踏まえて、この研究領域の日本における確立に貢献すべく、本研究に関する学会を平成 28 年度に設立した。そして、2回(第1回:国立国語研究所、第2回:大阪教育大学)の大会を開催するとともに、識字(リテラシー)調査、実践報告の在り方も含めた研究方法の追究している。 【研究業績の概要】の中でも記述した通り、「教育機会確保法」の成立を経て次年度には、本研究は、国内外の調査、そして、それらを踏まえた「基礎教育保障学」の基盤となる識字(リテラシー)調査の準備過程の記録分析等の3層構造を保ちながら、基盤A(日本語リテラシー調査の開発に向けた研究)への申請、獲得、発展に向けて進展中である。 海外調査に関しては、日本において基礎教育保障学を構築する際に不可欠な視点や、ネットワークの在り方を探るべく、これまでに韓国、ドイツ、ブラジル、米国を訪問した。ドイツの場合はハンブルクのユネスコ識字研究所やハンブルク大学等で、リテラシー調査を実施、展開している。その実態を探り、関係者とのネットワークを構築するための調査を実施した。ブラジル、米国を訪問した際には、関係者(関連学会、団体)への訪問やインタビュー、意見交換等を行った。 国内調査に関しては、日本で基礎教育に関わる実践と研究の共同探求のネットワークを拡充すべく、基礎教育保障学会の設立、大会の開催等を通して、福祉や労働等の関連領域の関係者とのネットワークの拡充を図った。さらには、識字 学級、夜間中学、日本語教室、生活困窮者支援、外国人の生活・学習支援等の実践現場、関係者とのネットワークの拡充も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
既に【研究実績の概要】や【現在までの進捗状況】の中での記述したように、欧米諸国(特にドイツ)では、識字教育、移民の言語習得支援、失業者の就労訓練などを対象とするこの領域を、主たる研究領域の一つとして位置付け発展させてきた歴史を持つ。一方、日本では未確立のままである。そこで、この研究領域の日本における確立に貢献すべく、本研究に関する学会を平成28年8月に設立し、第1回(平成28年8月)、第2回(平成29年9月)の研究大会を開催した。また、学会全体の研究目標の一つとして、1948年の読み書き調査以来約70年ぶりの全国レベルの識字(リテラシー)調査方法の再構築、パイロット調査実施が掲げられ、その準備(基盤Aへの申請準備)が進んでいる。その他、実践報告の在り方も含めた研究方法の追究等が掲げられ、進展中である。 こうした目標の達成に向けて、本研究で実施する「基礎教育保障学」の構築に向けた学習・教育、福祉、労働に跨る領域横断的な研究と実践の共同探求ネットワークを形成していくためには、その基盤情報となる識字(リテラシー)調査が基盤となる。そこで、 今後も、学会の関係者との協力・協働の過程で、識字(リテラシー)に関する全国調査の準備を行うと共に、その過程(プロセス)自体を、識字(リテラシー)の調査方法開発と応用に向けた研究として位置づけ、記録・分析・発信していく予定である。そしてパイロット調査の実現に向けて、基盤Aの申請、獲得へと繋げていきたい。 また、今後も、アクション・リサーチの一環として本研究の過程を描いて分析することと並行して、国内外で実施した調査のデータやリテラシー調査の先進国の調査結果を踏まえた分析を行いたい。さらには、「教育機会確保法」で提唱した、日本における基礎教育の保障に向けた施策や実践の充実に向け貢献できるような、「基礎教育保障学」の構築を図っていく予定である。
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Research Products
(9 results)