2016 Fiscal Year Research-status Report
未検討資料を通してアヴェロンの野生児の実像を明らかにする試み
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16K13469
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 光太郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40179205)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アヴェロンの野生児 / 野生児 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
アヴェロンの野生児とは、1800年1月に南フランスのアヴェロン県で発見・保護された推定年齢12歳の少年のことである。アヴェロン県の県庁所在地ロデスの中央学校で7カ月間保護下におかれたあと、8月にパリに移送され、その後1806年までパリの聾あ学校にて医師イタールによって教育が行なわれ、報告が残されている。その報告によると、少年には重度の発達障害があり、5年におよぶ言語訓練もほとんど成果をあげず、社会性も身につかなかった。このイタールの報告はアヴェロンの野生児に関する唯一重要な記録として位置づけられている。しかし、少年の発見・保護・移送された当時の記録や資料も残っている。本研究は、これら顧みられることのなかった資料にもとづいてアヴェロンの野生児の実像に迫ろうとするものである。 パリへの移送までの間この少年の保護を担当したのは、ロデスの中央学校の教授ボナテールである。ボナテールは観察記録を残しているが、それによると、この少年は、ことばを発さず解さないものの、言語以外の手段でまわりの者に意思を伝え、模倣もでき、火も使え、食べ物の調理もできたことが記されている。地元の行政府委員サンテステーヴやギローがこの少年について記した手紙にも、少年が周囲の者と関わることができたことが述べられている。また、パリに移送中に逗留したリヨンの中央学校の教授ムートン=フォントニユも、この少年がことばはできないもののふつうの少年だったと記している。 アヴェロンの野生児がきわめて重度の発達遅滞だという診断が下されるのは、パリ移送後3カ月経ってからのことである。なぜパリ移送前と移送後で少年の状態がこのように変化してしまったのか。今後はパリ移送直後の少年のおかれた状況について資料調査を行なう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度に予定していたアヴェロン県文書館での資料の調査については、日程調整がうまくいかず、実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
アヴェロンの野生児のパリ移送直後の状況について、アヴェロン県文書館やフランス国立図書館、国立中央文書館等で資料調査を行なう予定である。
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Causes of Carryover |
アヴェロン県文書館での資料の調査については、日程調整がうまくいかず、実施することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に実施できなかったアヴェロン県文書館での資料調査を、フランス国立図書館、国立中央文書館での資料調査とともに実施する予定である。
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